ASC認証とは?MSC認証との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

2025/11/28サステナビリティ

近年、スーパーマーケットなどで「ASC」という緑色のロゴマークが付いた水産物を見かける機会が増えてきました。このASC認証は、私たちが日々口にする魚やエビなどが、環境や社会に配慮した方法で育てられたことを示す国際的な証です。
この記事では、ASC認証の基本的な意味から、よく似たMSC認証との違い、認証を取得するメリット、そして私たちの消費行動がどのように未来の海に繋がるのかを分かりやすく解説します。
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ASC認証とは?責任ある養殖水産物の国際的な証


ASC認証とは、Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)によって運営されている、養殖水産物を対象とした認証制度です。環境への負荷を最小限に抑え、労働者や地域社会にも配慮した「責任ある養殖」によって生産された水産物であることを証明するものです。


ASC認証が目指すもの

ASCは、WWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援を受け、2010年に設立されました。その目的は、養殖業が環境や社会に与える影響を軽減し、業界全体がより持続可能な形で発展することを促すことです。消費者がASC認証ラベルの付いた商品を選ぶことで、責任ある養殖に取り組む生産者を応援し、水産物市場全体の変革に貢献することを目指しています。
【関連記事】ASC CoC 認証【水産養殖管理協議会認証】


なぜ今、養殖認証が必要なのか

世界の人口増加に伴い、水産物の需要は年々高まっています。しかし、天然の水産資源には限りがあり、国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、すでに多くの魚種が過剰に漁獲されている状態です。
この高まる需要に応えるために急速に拡大しているのが養殖業ですが、適切に管理されない養殖は、水質汚染や生態系への影響、劣悪な労働環境といった新たな問題を引き起こす可能性があります。ASC認証は、こうした問題を未然に防ぎ、養殖業が環境と社会に責任を持つための明確な基準を提供することで、持続可能な食料生産システムを支える重要な役割を担っています。
課題 ASC認証が果たす役割
天然水産資源の枯渇 養殖業への需要シフトに対応し、持続可能な養殖を推進する
養殖による環境汚染 排水や廃棄物の管理に関する厳格な基準を設け、環境負荷を低減する
劣悪な労働環境 労働者の権利を守り、地域社会との良好な関係を築くことを求める

 


ASC認証とASC CoC認証の違い


ASC認証について調べていると、「ASC CoC認証」というよく似た名前の認証を目にすることがあります。この二つは密接に関連していますが、認証の対象と目的が明確に異なります。私たちがASCラベルの付いた商品を手にするまでには、この2種類の認証が重要な役割を果たしています。
項目 ASC認証 ASC CoC認証
認証の対象 養殖場 加工・流通業者(卸売、小売など)
認証の段階 生産段階 加工・流通段階
主な目的 環境や社会に配慮した責任ある養殖を証明する 認証水産物のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保する
役割の例え スタート地点(生産)での「品質保証」 スタートからゴールまでを繋ぐ「バトン」
 
【関連記事】ASC CoC 認証【水産養殖管理協議会認証】


ASC認証は「生産段階」の養殖場を認証

先ほど説明した話と重なりますが、ASC認証は、ASC(水産養殖管理協議会)が定めた基準を満たした「養殖場」に与えられるものです。この認証は、その養殖場で育てられた水産物が、自然環境や生態系、労働者の人権や地域社会に配慮した、責任ある方法で生産されたことを証明します。つまり、ASC認証は水産物が生まれる「生産」の段階を対象としています。


ASC CoC認証は「加工・流通過程」の管理を認証

一方のASC CoC認証は、「CoC(Chain of Custody:管理の連鎖)」という言葉が示す通り、生産された後の「加工・流通過程」を対象とする認証です。具体的には、ASC認証を受けた養殖場で生産された水産物が、加工業者、卸売業者、小売業者などを経て私たちの食卓に届くまでの全てのサプライチェーンの段階で、認証を受けていない他の水産物と混ざらないように適切に管理されていることを証明します。


二つの認証が揃って、初めて消費者に届く

どれだけ養殖場が環境や社会に配慮していても、その後の流通過程で非認証の水産物と混ざってしまっては、意味がありません。ASC CoC認証は、製品のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保し、ASCラベルの信頼性を担保するための不可欠な仕組みなのです。つまり、ASC認証が養殖場の「出口」の証明だとすれば、ASC CoC認証はそこから消費者の「入り口」までを繋ぐ、バトンのような役割を果たしています。この二つの認証が両輪となって機能することで、私たちは安心してASCラベルの付いた商品を選び、サステナブルな水産業を応援することができるのです。
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ASC認証とMSC認証の具体的な違い


ASC認証と共によく知られているのが、「海のエコラベル」として知られるMSC認証です。どちらも持続可能な水産業のための認証制度ですが、その対象と範囲には明確な違いがあります。
【関連】MSC認証(海のエコラベル)とは?仕組みやメリット、商品の探し方を解説!


対象となる水産物の違い「養殖か?天然か?」

最も大きな違いは、認証の対象となる水産物の供給源です。
ASC認証 
人間の管理下で育てられた養殖水産物が対象。
サケやエビ、ブリ、カキなどが含まれる。
MSC認証 海や川などで獲られた天然水産物が対象。
漁業が水産資源や海洋環境に配慮して行われているかを審査する。
      
消費者が商品を選ぶ際には、その水産物が養殖されたものか、天然のものかによって、どちらのラベルが付いているかを確認することができます。


認証の範囲とプロセスの違い

認証がカバーする範囲も異なります。ASC認証は養殖場そのものの運営を評価するのに対し、MSC認証は漁業活動を評価します。ただし、どちらの認証も、認証された水産物が消費者の手元に届くまでの加工・流通過程では、CoC(Chain of Custody)認証という共通の管理システムが適用されます。これにより、認証製品が非認証製品と混ざることなく、適切に管理されていることが保証されます。
認証制度 対象 主な評価基準
ASC認証 養殖水産物 養殖場の環境・社会への配慮(水質、飼料、労働環境など)
MSC認証 天然水産物 資源の持続可能性、漁業が生態系に与える影響、漁業の管理システム
      


ASC認証が掲げる7つの原則について


ASC認証は、養殖場が環境と社会に対して責任を果たしているかを評価するために、7つの主要な原則に基づいた厳格な基準を設けています。これらの原則は、魚種ごとに異なる課題に対応できるよう、さらに詳細な要件が定められています。
 
【出典】ASC certification - ASC Japan


生物多様性と生態系の保全

ASC認証の基準では、養殖場が周囲の自然環境や生態系に与える影響を最小限に抑えることを求めています。具体的には、養殖場の建設や運営にあたって自然生息地を破壊しないこと、養殖魚の逃亡を防ぎ、地域の生物多様性を守るための措置を講じることなどが含まれます。これにより、養殖業と自然環境の共存を目指します。


飼料や資源の責任ある利用

養殖で使う飼料や水資源の管理も重要な評価項目です。特に飼料については、その原料となる天然魚資源の持続可能性が問われます。ASC認証では、飼料に含まれる天然魚の割合に上限を設け、トレーサビリティが確保された原料を使用することを義務付けています。 また、水資源を効率的に利用し、水質を保全するための取り組みも求められます。


労働者と地域社会への配慮

ASC認証は、環境面だけでなく、社会的な側面も重視しています。養殖場で働く人々の労働環境が安全であること、児童労働や強制労働がないこと、そして従業員の権利が守られていることが厳しく審査されます。さらに、養殖場の運営が地域社会に悪影響を与えず、地域住民との良好な関係を築いていることも、認証を取得するための重要な条件となります。

 


ASC認証を取得する3つのメリット


ASC認証は、消費者、生産者、そして環境や社会全体にとって、多くのメリットをもたらします。


メリット1:消費者が安心してサステナブルな商品を選べる

消費者にとって最大のメリットは、ASC認証ラベルを目印にすることで、環境や社会に配慮して生産された水産物を簡単に見分け、安心して購入できる点です。自分の買い物が、持続可能な養殖業を支援し、未来の海を守ることに繋がるという実感を得ることができます。


メリット2:生産者の企業価値の向上と市場拡大

養殖業者や加工・小売業者にとっては、ASC認証を取得することが企業の社会的責任(CSR)への取り組みを具体的に示すことになり、企業価値やブランドイメージの向上に繋がります。 近年、サステナビリティを重視する国内外の市場が増えているため、ASC認証は新たな販路を開拓し、ビジネスチャンスを拡大するための強力なツールとなります。


メリット3:持続可能な水産業の推進

ASC認証が普及することは、業界全体の基準を引き上げ、持続可能な養殖業を世界的に推進することに貢献します。環境負荷の低減、労働環境の改善、生物多様性の保全といったポジティブな変化を促し、将来にわたって豊かな水産資源を確保するための基盤を築くことに繋がります。

 


ASC認証のデメリットと今後の課題


多くのメリットがある一方で、ASC認証にはいくつかの課題も存在します。


認証の取得と維持にかかるコスト

ASC認証を取得し、維持するためには、審査費用やコンサルティング費用、そして基準を満たすための設備投資など、多岐にわたるコストが発生します。特に、小規模な養殖事業者にとっては、この費用負担が大きな障壁となる場合があります。 このため、認証取得に向けた公的な支援や、サプライチェーン全体でのコスト分担といった仕組みづくりが求められています。


日本国内における認知度

欧米に比べて、日本ではASC認証の認知度がまだ高いとは言えません。消費者の認知度が低ければ、認証商品を選ぶ動きが広がらず、生産者がコストをかけてまで認証を取得するインセンティブが働きにくくなります。小売業者やメディアが積極的に情報発信を行い、消費者キャンペーンなどを通じて、ASC認証の価値と重要性に対する理解を深めていくことが今後の重要な課題です。

 


日本におけるASC認証の現状と企業の取り組み


日本は世界有数の水産物消費国であり、ASC認証の普及において重要な市場と位置づけられています。


国内の認証取得養殖場の動向

日本国内でもASC認証を取得する養殖場が増加傾向にあります。特に、宮城県南三陸町のカキ養殖や、鹿児島県のカンパチ養殖などが先進的な事例として知られています。 東日本大震災からの復興を機に、より持続可能な漁業を目指してASC認証を取得した事例もあり、地域再生のモデルケースとしても注目されています。


企業の取り組み事例紹介

小売業界では、イオンが2014年に日本で初めてASC認証商品を販売して以来、プライベートブランド「トップバリュ」を中心に品揃えを拡充しています。 また、マルハニチロは、グループ内の養殖場(奄美養魚)でカンパチ養殖において世界初となるASC認証を取得するなど、生産から販売まで一貫した取り組みを進めています。 このように、大手企業が率先してASC認証の普及に取り組むことで、サプライチェーン全体へとその動きが広がっています。
【参考】
豊かな海の恵みを子どもの未来に。持続可能な水産業の証―MSC, ASC。 - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ)
もっとわかるサステナビリティ 持続可能な漁業・養殖認証(MSC・ASC)の取り扱い推進 | もっとわかるマルハニチロ | 知る・楽しむ | マルハニチロ株式会社

 


私たちの消費行動が海の未来を変える

ASC認証の最も重要な点は、それが単なるラベルではなく、消費者、生産者、そして地球環境を繋ぐコミュニケーションツールであるということです。


ASC認証商品を選ぶことの社会的な意義

私たちがASC認証商品を一つ選ぶという行動は、小さな一歩に見えるかもしれません。しかし、その選択は「環境や人に配監視した養殖を支持します」という明確な意思表示となります。多くの消費者がこの意思を示すことで、市場に大きなメッセージを送り、より多くの企業が持続可能な生産へとシフトするきっかけを作ることができます。


持続可能な水産業への貢献

ASC認証は、海の環境を守り、水産業で働く人々を支え、そして未来の世代も豊かな水産物を楽しめるようにするための仕組みです。私たちが日々の買い物でASC認証ラベルを意識することは、この大きな目標を達成するための、誰にでもできる具体的なアクションです。


まとめ

ASC認証は、環境と社会に配慮した責任ある養殖水産物の証です。MSC認証との違いを理解し、そのメリットを知ることで、私たちはより賢明な消費選択が可能になります。ASC認証ラベルの付いた商品を選ぶことは、海の未来を守り、持続可能な社会を築くための重要な一歩となるのです。
持続可能な水産物の証明として注目されるASC CoC認証は、消費者からの信頼向上や海外市場での販売拡大につながります。世界的な認証機関であるインターテック・サーティフィケーションなら、豊富な実績と専門知識で貴社の認証取得をサポートします。まずは無料お見積りで、認証取得までの流れや費用を詳しくご確認ください。
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