JGAP認証とは?メリットや取得の流れ、費用まで網羅的に解説

2025/11/28OTHER

JGAP認証という言葉を聞いたことはありますか?JGAP認証は、食の安全や環境保全、労働安全といった基準を満たす農場であることを証明するものであり、取得することで多くのメリットが期待できます。
この記事では、JGAP認証の基本的な概要から、メリット・デメリット、他の認証との違い、取得までの具体的な流れ、費用、そして実際の取得事例までを網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたの農場がJGAP認証を取得すべきかどうかの判断材料が得られるはずです。
JGAP認証について詳しく理解された後は、実際の認証取得に向けた次のステップを検討されるのはいかがでしょうか。インターテック・サーティフィケーションでは日本発祥のGAP認証であるJGAP・ASIAGAPの審査・認証サービスを提供しており、食の安全から環境保全、労働安全まで総合的な農場管理の向上をサポートいたします。
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JGAP認証とは?日本の農業における信頼の証


JGAP認証は、日本の農業が直面するさまざまな課題に対応し、持続可能な農業を実現するための重要な取り組みです。ここでは、JGAPの基本的な考え方と、なぜ今注目されているのかについて解説します。


JGAPの基本的な考え方

JGAP(Japan Good Agricultural Practice)とは、直訳すると「日本の良い農業の実践」となり、一般財団法人日本GAP協会が運営する認証制度です。この制度は、農産物の生産工程において、食品安全、環境保全、労働安全、人権福祉、農場経営管理といった多岐にわたる項目を適切に管理し、持続可能な農業経営を実践している農場を認証するものです。
具体的には、農薬や肥料の適正な使用、水質や土壌の環境汚染防止、労働者の安全確保や適切な労働環境の提供など、120を超えるチェック項目が基準として定められています。これらの基準を満たし、第三者機関による審査に合格することで、JGAP認証農場として認められ、安全で信頼性の高い農産物を生産していることの証明となります。


なぜ今JGAP認証が注目されるのか

近年、JGAP認証が注目を集めている背景には、消費者や食品事業者、さらには社会全体の意識の変化があります。食の安全に対する関心の高まりはもちろんのこと、環境問題や持ちられるようになっています。
大手スーパーや食品メーカーなども、サプライチェーン全体で持続可能性を確保する観点から、取引先の農家にJGAP認証の取得を求めるケースが増えています。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村で提供される食材の調達要件にGAP認証が含まれたことも、その認知度を大きく向上させるきっかけとなりました。
このように、JGAP認証は単なる農産物の安全証明にとどまらず、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの貢献といった観点からも、その重要性を増しているのです。

 


JGAP認証と他のGAP認証との違い


JGAPの他にも、ASIAGAPやGLOBALG.A.P.といったGAP認証が存在します。これらの認証は、それぞれ目的や基準、ターゲットとする市場が異なります。自社の経営戦略に合わせて最適な認証を選択するために、それぞれの違いを理解しておきましょう。


ASIAGAPとの違いは国際基準への対応

ASIAGAPは、JGAPと同じく日本GAP協会が運営する認証制度ですが、大きな違いはGFSI(世界食品安全イニシアチブ)の承認を得ている点にあります。GFSIは、世界中の食品関連企業が集まって設立した組織であり、その承認を得ているASIAGAPは、国際的に通用するレベルの食品安全基準を満たしていることの証明となっていました。
しかし、2025年4月22日付でASIAGAPの2028年終了およびJGAP(+SA)への一本化が正式に発表されました。輸出に際しての取引先がGFSI承認のついたGAP認証に限定して求めている場合は、有効期限が来る前に他のGFSI承認の認証に移行するか、GFSI承認を求めない取引先へ取引の変更などを検討する必要性があります。


GLOBALG.A.P.との違いは海外への販路

GLOBALG.A.P.は、ドイツに本部を置く AGRAYA GmbH が運営する、世界で最も広く普及しているGAP認証です。ヨーロッパを中心に、130カ国以上で実践されており、世界中の主要な小売業者から信頼を得ているため、ヨーロッパやアメリカなど、世界各国へ農産物を輸出することを目指す場合には、GLOBALG.A.P.の取得が強力な武器となります。JGAPと比較すると、取得のハードルはやや高いといえます。主な理由として、審査費用が高額なこと、また、原則としてすべての認証品目で残留農薬検査が必要なこと、さらに汚泥肥料の使用が一切認められていないことなどが挙げられます。これらがコスト増につながります。さらに、管理点についても、現行の「FV-SMART v6(GLOBALG.A.P.の管理点と適合基準)」は190項目と多く、要求事項もより細かいため、取り組みは相応に大変です。その一方で、認証を取得することにより、国際市場での高い評価や輸出競争力の向上が期待できるため、輸出を視野に入れる生産者にとっては大きなメリットとなります。

 


JGAP認証を取得する5つのメリット


JGAP認証の取得には、コストや手間がかかる一方で、それを上回る多くのメリットが期待できます。ここでは、JGAP認証がもたらす5つの主要なメリットについて詳しく解説します。

メリット1:生産性と労働安全性のリスクを低減できる

JGAPの基準に沿って農場の管理体制を見直すことで、生産工程における様々なリスクを低減できます。例えば、農薬や肥料の適切な管理は、農産物の安全性を確保するだけでなく、過剰な使用によるコスト増や環境への負荷を減らすことにも繋がります。また、作業手順の標準化や危険箇所の点検といった労働安全に関する取り組みは、労働災害の発生を防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整備します。


メリット2:農場管理の作業を効率化できる

JGAP認証の取得プロセスでは、農場の作業手順や管理方法を客観的に見直し、「見える化」することが求められます。これまで勘や経験に頼っていた作業をマニュアル化し、記録を残すことで、無駄な作業や非効率な部分が明らかになります。作業の標準化が進み、誰が作業しても一定の品質を保てるようになるため、生産性の向上や業務の効率化が期待できます。


メリット3:従業員の意識と意欲を高められる

JGAP認証への取り組みは、経営者だけでなく、農場で働く従業員一人ひとりの意識改革にも繋がります。食品安全や環境保全、労働安全といった明確な目標に向かって組織全体で取り組むことで、従業員は自らの仕事に対する責任と誇りを持つようになります。また、働きやすい職場環境が整備されることで、従業員の定着率向上や新たな人材の確保にも良い影響を与えます。


メリット4:消費者やバイヤーからの信頼を得やすくなる

JGAP認証は、第三者機関による客観的な評価に基づいているため、消費者やバイヤーに対して「安全で信頼できる農場」であることをアピールする強力なツールとなります。認証ロゴマークの付いた農産物は、他の商品との差別化を図ることができ、販路の拡大や取引の有利化に繋がります。特に、品質や安全性にこだわる大手小売業者や外食産業では、JGAP認証を取引条件の一つとするケースも増えています。


メリット5:SDGs(持続可能な開発目標)へ貢献できる

JGAPは、食品安全だけでなく、環境保全、労働安全、人権福祉といった項目を含んでおり、その取り組みは国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献するものです。例えば、環境保全の取り組みは「目標14:海の豊かさを守ろう」や「目標15:陸の豊かさも守ろう」に、労働安全や人権福祉への配慮は「目標8:働きがいも経済成長も」に関連します。JGAP認証を取得することは、自社の農業経営が社会課題の解決に貢献していることを示し、企業価値を高めることに繋がります。JGAPと同時に審査が可能な「+SA(Plus Sustainable Agriculture)」は、国際評価基準であるFSA(Farm Sustainability Assessment)のシルバーレベルに相当しており、農場のサステナビリティに関する取り組みをさらにアピールすることも可能です。
JGAP認証について詳しく理解された後は、実際の認証取得に向けた次のステップを検討されるのはいかがでしょうか。インターテック・サーティフィケーションでは日本発祥のGAP認証であるJGAP・ASIAGAPの審査・認証サービスを提供しており、食の安全から環境保全、労働安全まで総合的な農場管理の向上をサポートいたします。
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JGAP認証を取得する際のデメリット


多くのメリットがある一方で、JGAP認証の取得にはいくつかのデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらの課題を事前に把握し、対策を考えておくことが重要です。
デメリット 具体的な内容 対策
コスト
審査費用
登録料
コンサルティング費用など
補助金の活用
団体認証による費用分担
手間
手順書の作成
作業記録の管理
内部監査の実施など
 ITツールの導入
業務分担の見直し


デメリット1:認証取得と維持にコストがかかる

JGAP認証を取得し、維持するためには、審査費用や認証機関への登録料など、継続的なコストが発生します。費用は農場の規模や品目数、個別認証か団体認証かによって異なりますが、決して安価ではありません。また、審査に向けたコンサルティングを依頼する場合には、さらに追加の費用が必要となります。これらの費用対効果を慎重に見極める必要があります。


デメリット2:書類作成や管理に手間がかかる

JGAP認証では、作業手順書の作成や日々の作業記録の管理など、多くの書類作成が求められます。これまで記録を付けていなかった農場にとっては、大きな負担となる可能性があります。特に、日々の農作業に追われる中で、書類作成の時間を確保することは容易ではありません。ITツールを導入するなど、管理業務を効率化する工夫が求められます。


JGAP認証を取得するまでの流れ


JGAP認証の取得は、計画的に進めることが重要です。ここでは、認証取得までの一般的な流れを5つのステップに分けて解説します。


手順1:「管理点と適合基準」を入手する

まず、日本GAP協会のウェブサイトから「管理点と適合基準」の文書をダウンロードします。これは、JGAP認証の審査基準となるチェックリストです。農産物の種類(青果物、穀物、茶)や、個別認証か団体認証かによって文書が異なるため、自社の状況に合ったものを選択してください。この文書を読み込み、どのような項目が求められているのかを正確に理解することが最初のステップです。


手順2:基準をもとに現状を把握し改善する

次に、「管理点と適合基準」の各項目について、自社の農場が現在どの程度達成できているか(できていること・できていないこと)を自己点検します。できていない項目については、なぜできていないのか原因を分析し、具体的な改善計画を立てて実行します。作業手順書(マニュアル)の作成、帳票類の整備、リスク評価などを行い、基準を満たすための農場管理体制を構築していきます。


手順3:必要に応じて研修や指導を受ける

自社だけで取り組みを進めるのが難しい場合は、日本GAP協会が提供する研修を受講したり、専門の指導員から指導を受けたりすることも有効です。研修では、JGAPの基準に関する知識を体系的に学ぶことができます。指導員からは、自社の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けることができ、認証取得までのプロセスをスムーズに進めることができます。


手順4:認証機関に審査を申し込む

農場の管理体制が整い、基準を満たせる見込みが立ったら、認証機関に審査を申し込みます。認証機関は複数あり、それぞれ審査費用や対応地域が異なります。日本GAP協会のウェブサイトに認証機関の一覧が掲載されているので、参考にしてください。


手順5:審査を受け、認証を取得する

審査当日、認証機関の審査員が農場を訪れ、「管理点と適合基準」に基づいて農場の管理状況や記録書類などをチェックします。審査の結果、基準を満たしていない「不適合」と判断された項目があった場合は、期限内に是正措置を行い、報告書を提出する必要があります。全ての是正措置が完了し、審査基準を満たしていると判断されると、晴れてJGAP認証が与えられ、認証書が発行されます。


JGAP認証にかかる費用


JGAP認証の取得を検討する上で、費用は重要な要素です。ここでは、審査費用とコンサルティング費用の目安について解説します。
費用項目 目安 備考
初回審査費用 15万円~20万円
個別認証の場合
農場規模や品目数による
維持・更新審査費用 15万円~20万円 毎年
コンサルティング費用 5万円~10万円/日 依頼する指導員や内容によって変動


審査費用の目安

審査費用は、認証機関や農場の規模、品目数、審査日数などによって大きく変動します。あくまで一般的な目安ですが、個人農家などが対象の「個別認証」の場合、初回の審査で15万円~20万円程度がかかることが多いようです。
複数の農家が共同で取得する「団体認証」の場合は、参加する農家数によって費用が分担されるため、一戸あたりの負担は個別認証よりも少なくなる傾向にあります。審査費用とは別に日本GAP協会への農場登録料が必要となります。


コンサルティング費用の目安

JGAP指導員などの専門家にコンサルティングを依頼する場合、別途費用が発生します。料金体系は指導員によって様々で、時間単位で料金が発生する場合や、認証取得までをパッケージで支援するプランなどがあります。
一般的には、1日あたり5万円~10万円程度が相場とされていますが、これも依頼する内容や期間によって大きく異なります。費用はかかりますが、専門家のサポートを受けることで、認証取得までの時間と労力を大幅に削減できる可能性があります。


まとめ

本記事では、JGAP認証の概要からメリット・デメリット、取得の流れ、費用、そして成功事例までを網羅的に解説しました。JGAP認証の取得は、食の安全と信頼性を確保するだけでなく、生産性の向上、労働環境の改善、そして販路拡大など、農業経営における様々な課題を解決する可能性を秘めています。この記事を参考に、自社の経営戦略におけるJGAP認証の位置づけを、ぜひ一度検討してみてください。
JGAP認証について詳しく理解された後は、実際の認証取得に向けた次のステップを検討されるのはいかがでしょうか。インターテック・サーティフィケーションでは日本発祥のGAP認証であるJGAP・ASIAGAPの審査・認証サービスを提供しており、食の安全から環境保全、労働安全まで総合的な農場管理の向上をサポートいたします。
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