LCA算定とは?目的や手順、費用の目安を分かりやすく解説

2025/11/28サステナビリティ

近年、企業の環境への取り組みがますます重要視される中で、「LCA算定」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。サプライヤーや消費者から環境配慮を求められることも多くなり、自社製品の環境負荷を正しく把握する必要性を感じている担当者の方も多いはずです。
この記事では、国際規格に基づいた具体的なLCAの算定手順、費用の目安、さらには国内外の企業事例まで、LCA算定に関する情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、LCA算定の全体像を理解し、自社での取り組みに向けた第一歩を踏み出せるようになります。
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LCA算定のステップ4つ


LCA算定は、国際規格であるISO14040およびISO14044に基づき、大きく4つのステップで進められます。ここでは、各ステップで具体的に何を行うのかを順に解説します。


ステップ1:目的と調査範囲の設定

最初のステップは、LCA算定を「何のために」行い、「どこまで」を評価対象とするのかを明確に定義することです。
目的の例としては、「自社製品の環境負荷を把握し、削減策を検討する」「競合製品と比較して環境性能をPRする」「環境ラベルを取得する」などが挙げられます。目的によって、必要なデータの精度や評価の進め方が変わるため、非常に重要なステップです。
調査範囲では、評価する製品のライフサイクルの範囲(Cradle-to-Grave:採掘から廃棄まで、B-to-B:企業間取引まで、など)や、評価する環境影響の項目(地球温暖化、資源枯渇など)、データの収集期間などを具体的に設定します。


ステップ2:インベントリ分析(LCI)

次に、設定した調査範囲に基づいて、製品のライフサイクル各段階で投入される資源やエネルギー(インプット)と、排出されるCO2や廃棄物(アウトプット)のデータを収集し、一覧表(インベントリ)にまとめます。このプロセスをLCI(ライフサイクルインベントリ分析)と呼びます。
例えば、製品の製造段階であれば、使用した電力、燃料、水の量や、発生したCO2、排水、廃棄物の量などを、実際の測定値や文献、データベースを用いて収集します。このデータの正確さが、LCA全体の信頼性を左右するため、非常に重要な作業となります。


ステップ3:影響評価(LCIA)

インベントリ分析で収集したデータが、地球環境にどのような影響を与えるのかを評価するのが、LCIA(ライフサイクル影響評価)です。
収集したCO2やメタンなどの排出量を、「地球温暖化」という環境影響項目にどれだけ寄与するかを評価するために、CO2換算排出量(カーボンフットプリント)に変換します。同様に、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出量を「酸性化」への影響に、フロンガスの排出量を「オゾン層破壊」への影響に、といった形で、各排出物データを環境影響の大きさに変換していきます。これにより、複数の環境問題を横断的に評価できます。


ステップ4:解釈

最後のステップは、インベントリ分析(LCI)と影響評価(LCIA)の結果を、最初のステップで設定した「目的」に照らし合わせて解釈し、結論を導き出すことです。
この段階では、結果の妥当性を検証し、どのライフサイクル段階やどの物質が環境負荷に大きく寄与しているかを特定します。そして、その結果に基づいて、環境負荷を削減するための具体的な改善策を提案したり、対外的に情報を開示したりします。例えば、「輸送段階のCO2排出量が大きい」という結果が出れば、「輸送ルートの見直しやモーダルシフトを検討する」といった結論に繋げます。
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LCA算定にかかる費用と期間


LCA算定を検討する上で、担当者の方が最も気になるのが費用と期間ではないでしょうか。これらは算定の対象や範囲によって大きく変動しますが、ここでは一般的な目安と考え方について解説します。
費用の種類   内容 費用の目安
コンサルティング費用 算定の計画策定、データ収集支援、報告書作成などの支援 数十万円~
LCAツール利用料 算定を効率化するソフトウェアのライセンス料 年間数万円~
審査・検証費用 第三者機関による算定結果のレビューや検証 数十万円~
 


H3: 費用の内訳と相場観

LCA算定にかかる費用は、主に「コンサルティング費用」「LCAツール利用料」「審査・検証費用」の3つに分けられます。
自社のみで算定を行う場合はツール利用料が主ですが、初めて取り組む企業や、第三者検証を申請する場合は、専門のコンサルティング会社に依頼するのが一般的です。コンサルティング費用は、製品の複雑さや調査範囲によって大きく異なりますが、簡単な製品の算定で数十万円から、複雑な製品やサプライチェーン全体を対象とする場合は数百万円以上になることもあります。
LCAツールは、年間ライセンス料として数万円以上が相場です。算定結果の信頼性を担保するために第三者機関による審査や検証を受ける場合は、別途数十万円以上の費用が必要になります。


算定に必要な期間の目安

LCA算定に必要な期間も、対象製品やデータの収集状況によって大きく変わります。一般的には、準備段階から報告書の作成まで、3ヶ月から1年程度を見込むことが多いです。
特に時間を要するのが、手順2のインベントリ分析におけるデータ収集です。自社内だけでなく、サプライヤーからもデータを集める必要があるため、関係各所との調整に時間がかかることがあります。初めてLCA算定を行う場合は、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。

 


LCA算定を効率化するツールとコンサル


LCA算定は専門的な知識と多くの工数を要するため、専用のツールや外部のコンサルティング会社を活用するのが効率的です。ここでは、ツールとコンサルの選び方について解説します。


主なLCA算定ツールの比較

LCA算定ツールは、膨大なデータの計算や管理を自動化し、算定作業を大幅に効率化してくれます。国内外で様々なツールが提供されており、それぞれ特徴が異なります。
代表的なツールとしては、日本の株式会社LCAエキスパートセンターの「MiLCA」や、世界的に広く使われている「SimaPro」「GaBi」などがあります。無料のツールもありますが、機能や搭載されているデータベースに限りがあるため、本格的に取り組む場合は有料ツールの導入が推奨されます。選定の際は、自社の業界のデータが充実しているか、操作性は良いか、サポート体制は整っているか、といった点を比較検討すると良いでしょう。
【参考】
LCAソフトウェア MiLCA
SimaPro – LCAで持続可能な未来を共に|TCO2株式会社
Life Cycle Assessment Software and Data | Sphera (GaBi)


コンサルティング会社の選び方

特に初めてLCA算定に取り組む場合や、複雑な製品を扱う場合は、専門知識を持つコンサルティング会社のサポートが不可欠です。
コンサルティング会社を選ぶ際には、まず自社の業界や製品分野での実績が豊富かどうかを確認しましょう。また、LCAの国際規格(ISO)に関する深い知識はもちろん、データ収集から報告書の作成、第三者検証の対応まで、一貫してサポートしてくれるかどうかも重要なポイントです。複数の会社から提案を受け、費用だけでなく、担当者の専門性やコミュニケーションの取りやすさなども含めて総合的に判断することが成功の鍵となります。

 


LCA算定の企業事例


LCA算定は、既に多くの企業で導入され、環境経営に活かされています。ここでは、具体的な企業の取り組み事例を2つ紹介します。


TOPPANホールディングス株式会の取り組み

凸版印刷株式会社では、自社が提供するパッケージ製品の環境負荷を評価するためにLCA算定を活用しています。 同社は、原材料の調達から製造、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクルで排出されるCO2量を算定し、顧客が環境負荷の小さいパッケージを選べるように情報を提供しています。
これにより、顧客企業は自社のサプライチェーンにおける環境負荷削減に貢献できるようになります。LCAを通じて自社の製品の環境価値を高め、顧客とのエンゲージメントを深めている好事例と言えます。
【参考】パッケージのCO2排出量削減|生活・産業事業分野_パッケージ


キヤノン株式会社の取り組み

大手電機メーカーのキヤノン株式会社では、製品開発の初期段階からLCAの手法を導入しています。 同社は独自の「LCA開発マネジメントシステム」を構築し、製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量を設計段階で予測・評価することで、効果的な削減活動に繋げています。
このシステムにより、環境性能の高い製品を効率的に開発する体制を整えています。LCAを事業活動の根幹に組み込み、継続的な環境負荷低減を実現している先進的な事例です。
【参考】取り組み 関連する取り組み | キヤノングローバル

 


まとめ


本記事では、LCA算定の具体的な手順、費用、そして企業の活用事例までを網羅的に解説しました。LCA算定は、自社製品の環境負荷を科学的根拠に基づいて可視化し、効果的な削減策へと繋げるための強力なツールです。
環境への取り組みが企業の競争力を左右する現代において、LCA算定への理解と実践は、持続可能な社会の実現に貢献するだけでなく、企業自身の成長にとっても不可欠と言えるでしょう。この記事が、皆様の会社でLCA算定を推進する上での一助となれば幸いです。
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