RSPO認証とは?仕組みやメリット、取得方法をわかりやすく解説

2025/11/28サステナビリティ

近年、企業のサステナビリティ活動において「RSPO認証」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、私たちの生活に欠かせない「パーム油」の持続可能性に関する国際的な基準です。しかし、「RSPO認証とは具体的に何なのか」「なぜ今、企業に求められているのか」を正確に理解している方はまだ多くないかもしれません。
この記事では、RSPO認証の基本的な知識から、その仕組み、企業が取得するメリット、具体的な取得プロセスまでを、専門的な観点からわかりやすく解説します。
持続可能なパームオイル利用への取り組みは、今や企業の社会的責任として欠かせません。インターテック・サーティフィケーションでは、RSPO SC認証(サプライチェーン認証)の取得支援を行っております。経験豊富な審査員が、お客様の認証取得をスムーズにサポートいたします。まずは無料お見積りから始めてみませんか。
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RSPO認証とは?持続可能なパーム油のための国際基準


RSPO認証は、単なる環境ラベルではありません。地球環境と生産に携わる人々の両方に配慮した、パーム油産業の未来を形作るための重要な仕組みです。まずは、その基本的な概要と設立の背景を解説します。


RSPOの概要と設立の目的

RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)とは、持続可能なパーム油の生産と利用を促進することを目的として、2004年に設立された非営利組織です。 世界自然保護基金(WWF)などの環境NGOと、パーム油産業に関わる生産者、製造業者、小売業者、銀行・投資家などが協力し、対等な立場で議論を行う「円卓会議」として運営されています。
RSPOの主な目的は、環境を保護し、地域社会や労働者の権利を守りながら、経済的にも持続可能なパーム油の生産方法を確立し、その普及を世界的に推進することです。そのための具体的な基準を定め、基準を満たした組織を認証する制度が「RSPO認証」です。
【参考】RSPO 認証 - 持続可能なパーム油に関する円卓会議 (RSPO)
 

パーム油生産が抱える環境・社会問題とは

パーム油は、アブラヤシの果実から採れる植物油で、スナック菓子やマーガリンといった食品から、洗剤、化粧品まで、非常に幅広い製品に使用されています。単位面積あたりの収穫量が他の植物油に比べて格段に高いため、世界で最も生産されている植物油となっています。
しかし、その需要の急増に伴い、生産国であるインドネシアやマレーシアを中心に、以下のような深刻な問題が発生しました。
問題の種類 具体的な内容
環境問題  •    熱帯雨林や泥炭地を伐採して農園を開発することによる、生物多様性の損失(オランウータンなどの絶滅危惧種の減少)
•    森林火災による煙害(ヘイズ)
•    温室効果ガスの排出
社会・労働問題 •    農園開発にあたり、先住民や地域住民の土地の権利を侵害する紛争
•    農園で働く労働者の劣悪な労働環境や低賃金、児童労働といった人権問題

これらの問題は、パーム油そのものではなく、その「非持続可能な生産方法」に起因します。RSPO認証は、こうした問題を解決し、環境と社会に配慮した「持続可能なパーム油」を市場のスタンダードにすることを目指しています。

 


RSPO認証の仕組みを支える2種類の認証


RSPO認証は、生産から消費者に届くまでの全工程をカバーするため、大きく分けて2種類の認証制度で構成されています。 RSPO認証の全体像を把握するため、それぞれの役割の理解が必要となります。
 

農園・搾油工場が対象の「P&C認証」

P&C認証(Principles & Criteria Certification)は、アブラヤシ農園とパーム油の搾油工場が対象となる、生産段階での認証です。 RSPOが定めた「原則と基準(Principles & Criteria)」に基づいて審査が行われます。
 

製造・加工・流通過程が対象の「SCCS認証」

SCCS認証(Supply Chain Certification System)は、P&C認証を受けたパーム油が、消費者の手元に届くまでの製造・加工・流通過程を対象とする認証です。
認証されたパーム油が、非認証のパーム油と混ざることなく、適切に管理されていることを証明するもので、「管理の連鎖(Chain of Custody)」を保証する仕組みです。商社やメーカー、小売業者など、認証パーム油製品の所有権を持つすべての組織がこの認証の対象となります。

 


サプライチェーン認証(SCCS)の4つのモデルを解説


SCCS認証では、パーム油の複雑なサプライチェーンに対応するため、管理方法の違いによって4つのモデルが用意されています。企業は自社の状況に合わせて適切なモデルを選択する必要があります。
サプライチェーンモデル 略称 管理方法 トレーサビリティ
アイデンティティ・プリザーブド IP 単一認証農園から物理的に完全分離 最も高い
セグリゲーション SG 複数認証農園から物理的に分離 高い
マスバランス MB 認証油と非認証油の混合(数量管理)  中程度
ブックアンドクレーム B&C 物理的な取引なし(クレジット取引) 間接的な貢献
 

IP(アイデンティティ・プリザーブド):単一農園からの完全分離

特定の単一の認証農園で生産されたパーム油を、最終製品に至るまで他のパーム油と一切混合せず、物理的に完全に分離して管理するモデルです。生産農園まで遡ることができるため、最もトレーサビリティ(追跡可能性)が高い方式です。
 

SG(セグリゲーション):複数農園からの分離

複数の認証農園で生産されたパーム油をまとめて管理し、最終製品に至るまで非認証のパーム油と物理的に分離するモデルです。生産農園を一つに特定することはできませんが、製品に使われているのが100%認証パーム油であることが保証されます。
 

MB(マスバランス):認証油と非認証油の混合管理

認証パーム油と非認証パーム油が、製造や流通過程で混合されることを許容するモデルです。ただし、認証パーム油の購入量と、認証製品の製造・販売量の収支(バランス)を厳密に管理することが求められます。物理的には非認証油が含まれる可能性がありますが、認証パーム油の生産をサプライチェーン全体で支援する現実的な方法として広く採用されています。
 

B&C(ブックアンドクレーム):クレジット購入による支援

物理的な認証パーム油の取引は行わず、「クレジット」と呼ばれる証書をオンライン上で取引するモデルです。RSPO認証農家が生産したパーム油の量に応じて発行されるクレジットを、最終製品のメーカーなどが購入します。これにより、認証パーム油のサプライチェーンが整っていない地域でも、メーカーは認証農家を金銭的に直接支援することができます。

 


企業がRSPO認証を取得する4つのメリット


RSPO認証の取得は、単なるコストではなく、企業価値を高めるための重要な投資と捉えられています。認証を取得することで、企業は以下のようなメリットを期待できます。

メリット1:サステナビリティへの貢献を具体的に示す

RSPO認証を取得し、認証パーム油を利用することは、企業が環境問題や人権問題の解決に具体的に取り組んでいることを客観的に示す強力な証拠となります。これにより、企業のCSR活動やサステナビリティ報告の信頼性が高まります。
 

メリット2:企業のブランドイメージと社会的信頼の向上

環境や社会問題への意識が高い消費者や取引先、投資家からの評価が高まり、企業のブランドイメージ向上に直結します。 特に欧米市場では、RSPO認証への対応が取引の基本条件となるケースも増えており、企業の社会的信頼を獲得する上で不可欠な要素となっています。
 

メリット3:ESG投資におけるポジティブな評価

近年、企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価して投資先を選ぶ「ESG投資」が世界の主流となっています。RSPO認証への取り組みは、特に環境(E)と社会(S)の側面で高く評価され、投資家からの資金調達において有利に働く可能性があります。
 

メリット4:グローバルなサプライチェーンへの対応力強化

国際的な大手メーカーや小売業を中心に、サプライヤーに対してRSPO認証の取得を求める動きが加速しています。認証を取得することで、こうしたグローバル企業のサプライチェーンに参入し、ビジネスチャンスを拡大するための重要な条件をクリアすることができます。
持続可能なパームオイル利用への取り組みは、今や企業の社会的責任として欠かせません。インターテック・サーティフィケーションでは、RSPO SC認証(サプライチェーン認証)の取得支援を行っております。経験豊富な審査員が、お客様の認証取得をスムーズにサポートいたします。まずは無料お見積りから始めてみませんか。
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RSPO認証を取得するための3ステップ


RSPO認証を取得するためには、定められた手順に従って準備を進める必要があります。ここでは、サプライチェーン認証(SCCS認証)を取得する際の一般的な流れを3つのステップで解説します。

ステップ1:RSPOへの加盟

認証審査を受ける前に、まず自社がRSPOの会員になる必要があります。 RSPOの公式ウェブサイトから、企業の業種や規模に応じた会員カテゴリを選択し、申請手続きを行います。会員になることで、RSPOのビジョンと使命に賛同し、その一員として活動する意思を示すことになります。
 

ステップ2:認証機関の選定と審査契約

RSPOから直接審査を受けるわけではなく、ASI(Assurance Services International)という認定機関から認定を受けた、インターテックなどの独立した第三者認証機関に審査を依頼します。 複数の認証機関から見積もりを取り、実績やサービス内容を比較検討して契約を結びます。その後、選択したサプライチェーンモデルに基づいた管理体制を構築し、文書化するなどの準備を進めます。
 

ステップ3:認証取得と継続的な監査

認証機関による実地審査またはリモート審査を受け、RSPOの要求事項を満たしていることが確認されると、認証が許可され、証明書が発行されます。認証の有効期間は5年間ですが、その間も毎年、管理体制が適切に維持されているかを確認するための年次監査を受ける必要があります。
【関連記事】RSPO 認証【持続可能なパーム油のための円卓会議】

 


まとめ


RSPO認証は、パーム油の生産に伴う環境・社会問題を解決し、持続可能な産業を実現するための世界的な取り組みです。企業にとってRSPO認証の取得は、サステナビリティへの貢献を証明し、社会的信頼やブランド価値を高める重要な手段となります。この記事が、RSPO認証への理解を深め、貴社の取り組みを推進する一助となれば幸いです。
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