CO2排出係数とは?計算方法や調べ方、削減のポイントをわかりやすく解説

2025/11/28サステナビリティ

企業の環境活動や脱炭素経営において、「CO2排出係数」という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。これは、自社の事業活動がどれだけ環境に影響を与えているかを数値で把握し、社会的な責任を果たすための重要な指標です。
本記事では、CO2排出係数の基本的な意味から、具体的な計算方法、調べ方、そして排出量を削減するためのアプローチまで、企業の担当者の方が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
正確なCO2排出量の算定には、信頼性の高い検証が不可欠です。インターテック・サーティフィケーションのGHG排出量検証サービスなら、ISO 14064やGHGプロトコルに準拠した国際基準で、お客様の排出量データを第三者として検証いたします。まずは無料お見積りで、貴社のニーズに合わせた検証プランをご提案させてください。
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CO2排出係数とは?企業の脱炭素経営に必須の指標


CO2排出係数とは、電気の使用や燃料の燃焼など、各種の事業活動を行う際に、どれくらいの二酸化炭素(CO2)が排出されるかを quantitatively に示すための数値です。一般的には、活動量(例:電気使用量 kWh)あたりに排出されるCO2の重量(kg-CO2)で表されます。この係数を理解し活用することは、企業の環境負荷を正確に把握し、効果的な削減策を講じるための第一歩となります。


GHG排出量算定に必要な係数について

企業が自社の温室効果ガス(GHG)排出量を算定する際、CO2排出係数は不可欠な要素です。特に、電力の使用に伴う間接的な排出量(スコープ2)を計算する際には、契約している電力会社が公表する排出係数を用いる必要があります。法律で報告が義務付けられている企業はもちろん、サプライチェーン全体での脱炭素化を推進する上で、自社の排出量を正確に把握することが社会的に求められています。
スコープ  排出源の概要 算定における排出係数の役割
スコープ1 自社での燃料の直接使用
(ボイラー、社用車など)
燃料の種類ごとの排出係数を用いて直接排出量を算定します。
スコープ2 他社から供給された電気
熱、蒸気の使用
契約電力会社などが公表する排出係数を用いて間接排出量を算定します。
スコープ3 スコープ1, 2以外の間接排出
(原材料の調達、従業員の通勤など)
活動内容に応じた様々な排出係数を用いて算定します。
  


なぜ排出係数は毎年変動するのか

電力のCO2排出係数は、電力会社や年度によって数値が異なります。これは、発電に使用するエネルギー源の構成(電源構成)が常に変動しているためです。例えば、石炭や石油などの化石燃料による火力発電の割合が多ければ排出係数は高くなります。電力需要の季節的な変動や、燃料の国際価格なども電源構成に影響を与え、結果として排出係数の変動につながるのです。
【関連記事】GHGとは?Scope1,2,3や種類と算定方法までわかりやすく解説

 


CO2排出係数の主な種類とそれぞれの違い


電力のCO2排出係数には、主に「基礎排出係数」と「調整後排出係数」の2つがあり、目的に応じて使い分ける必要があります。これらの違いを正しく理解することが、適切な排出量算定の鍵となります。


全国平均を示す「基礎排出係数」

基礎排出係数とは、電力会社が販売した電力量に対し、発電所で排出した調整前のCO2排出量の割合を示す係数です。これは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)による調整や、再生可能エネルギー価値証書などの環境価値を反映する前の、純粋な電源構成に基づく排出係数と考えることができます。主に、国内の平均的な排出状況を把握する際などに用いられます。
【参考】4-3 排出量の算出方法・排出係数について | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター


再エネ調達分を反映した「調整後排出係数」

調整後排出係数は、基礎排出係数から、再生可能エネルギーの環境価値などを調整して算出される係数です。「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づく排出量の報告義務がある企業は、原則としてこちらの調整後排出係数を使用して計算します。非化石証書の使用や、排出クレジットによるオフセットなどが反映されるため、企業の環境への取り組みをより実態に即して数値化できる係数です。
係数の種類  概要 主な用途
基礎排出係数 FIT制度などによる調整前の係数 国内の平均的な状況把握
調整後排出係数 FIT制度や非化石証書などの環境価値を反映した係数 温対法に基づく排出量報告
        
【参考】notice_r02_rev.pdf
 

特定の電力メニューに対応する「メニュー別排出係数」

特定の電力メニューに対応する「メニュー別排出係数」 一部の電力会社では、再生可能エネルギー100%の電力プランなど、特定の電源構成を持つ電力メニューを提供しています。メニュー別排出係数は、こうした特定の料金メニューを契約している需要家が、そのメニューの排出係数を用いてCO2排出量を算定するためのものです。これにより、企業は環境価値の高い電力メニューを選択した効果を、自社の排出量として正確に報告できます。
【参考】温対法に基づく事業者別排出係数の算出及び公表について -電気事業者別排出係数-|資源エネルギー庁

 


CO2排出量の基本的な計算方法を3ステップで解説


CO2排出量の計算は、正しい手順を踏めば決して難しいものではありません。ここでは、特に排出量の大部分を占めることが多い電力使用量からのCO2排出量計算を例に、具体的なステップを解説します。 


ステップ1:計算に必要な項目を準備する

まず、計算に必要な情報を手元に準備します。具体的には、以下の2つです。
活動量 一定期間(通常は1年間)の総電力量(kWh)を指す。
電力会社からの請求書などで確認できる。
CO2排出係数 契約している電力会社の調整後排出係数(kg-CO2/kWh)。
後述する方法で最新の数値を確認できる。
 


ステップ2:計算式に当てはめて排出量を算出する

準備した数値を、以下の計算式に当てはめます。このシンプルな式で、電力使用に伴うCO2排出量を算出できます。
CO2排出量 (kg-CO2) = 電力使用量 (kWh) × CO2排出係数 (kg-CO2/kWh)

例えば、年間の電力使用量が500,000kWhで、契約電力会社の調整後排出係数が0.000400 t-CO2/kWh(= 0.400 kg-CO2/kWh)の場合、CO2排出量は200,000 kg-CO2(= 200 t-CO2)となります。


ステップ3:具体的な計算例で理解を深める

具体的な数値を当てはめて、計算の流れを確認してみましょう。
項目 数値 単位 備考
年間電力使用量 1,000,000 kWh 電力会社からの請求書で確認
調整後排出係数 0.000450 t-CO2/kWh 環境省公表データで確認
CO2排出量 450 t-CO2 1,000,000 × 0.000450
               
必要な数値を準備して計算式に当てはめることで、自社のCO2排出量を算出できます。
【参考】環境省_算定方法・排出係数一覧 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ウェブサイト

 


最新のCO2排出係数の調べ方


CO2排出係数は毎年更新されるため、常に最新の情報を参照することが求められます。主に国の機関が公表している情報を確認することで、信頼性の高いデータを得ることができます。 


環境省の公表データで確認する

最も信頼性が高く、公式な情報源となるのが環境省のウェブサイトです。温対法に基づき、各電気事業者から報告された排出係数が取りまとめられ、毎年公表されています。温対法での報告義務がある企業は、必ずこの公表値を使用する必要があります。
ウェブサイト上で「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」といったキーワードで検索すると、該当ページが見つかります。
【参考】環境省_ホーム |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ウェブサイト


経済産業省の情報を参考にする

経済産業省(資源エネルギー庁)も、日本のエネルギー政策や電力供給に関する情報を公開しており、その中で排出係数に関連するデータが提供されることがあります。特に、エネルギー政策の動向や、将来の電源構成の見通しなどを把握する上で参考になります。
情報源 公表機関 特徴
温室効果ガス排出量
算定・報告・公表制度
環境省 温対法に基づく公式な排出係数が公表される。
報告義務のある企業は必須確認。
エネルギー白書など 経済産業省 エネルギー政策全体の動向の中で、排出係数に関する情報が得られる。
      
       
【参考】エネルギー白書|資源エネルギー庁


契約中の電力会社の情報を確認する

多くの電力会社では、自社のウェブサイトのサステナビリティや環境に関するページで、自社のCO2排出係数を公表しています。環境省の公表を待たずに速報値などを確認したい場合に便利ですが、温対法に基づく正式な報告には、必ず環境省が公表した確定値を使用するようにしてください。

 


なぜ今CO2排出係数が重要視されるのか?


近年、CO2排出係数への注目が急速に高まっています。その背景には、法的な要請だけでなく、市場や社会からの期待の変化があります。企業が持続的に成長していく上で、排出係数を理解し、排出量を管理することは不可欠な経営課題となっています。


温対法による報告義務への対応

「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」では、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者(特定排出者)に対し、自らの排出量を算定し、国に報告することを義務付けています。この報告において、調整後排出係数を用いた正確な計算が求められるため、対象となる企業にとって排出係数の把握は法令遵守の観点から必須です。


ESG投資やサプライチェーンからの要請

近年、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への取り組みを評価して投資先を選ぶ「ESG投資」が世界の潮流となっています。投資家は、企業のCO2排出量や削減努力を重要な判断材料としており、排出量の算定基礎となる排出係数への関心も高まっています。また、大手企業を中心に、取引先であるサプライヤーに対してもCO2排出量の情報開示や削減を求める動きが広がっており、サプライチェーンの一員として対応が不可欠になっています。
要請の主体 企業に求められること
国(法律) 温対法に基づき、定められた方法でCO2排出量を算定・報告する。
投資家 ESG評価の観点から、CO2排出量の情報開示と削減目標の提示。
取引先 サプライチェーン全体での脱炭素化のため、排出量の情報提供や削減協力。


企業価値と競争力の向上

CO2排出量の削減に積極的に取り組むことは、企業のブランドイメージや社会的評価の向上に直結します。排出係数の低い電力に切り替えるなどの対策は、環境負荷を低減するだけでなく、「環境に配慮した企業」としての姿勢を内外に示すことにつながります。これは、優秀な人材の獲得や、環境意識の高い消費者からの支持を得る上でも有利に働き、長期的な企業価値と競争力の向上に貢献します。
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CO2排出量を削減するための具体的な方法


自社のCO2排出量を算定したら、次に取り組むべきは具体的な削減策の実行です。ここでは、多くの企業で実践可能かつ効果的な3つのアプローチを紹介します。


省エネルギー対策を徹底して推進する

最も基本的かつ重要な取り組みが、省エネルギーの推進です。使用するエネルギー量そのものを減らせば、結果としてCO2排出量も削減されます。生産プロセスの効率化、高効率な設備への更新、LED照明の導入、断熱性能の向上など、事業所の特性に応じて様々な施策が考えられます。まずは、エネルギーがどこで、どれだけ使われているかを詳細に把握することから始めるのが効果的です。


再生可能エネルギー由来の電力を導入する

次に、使用する電力の質を変えるアプローチです。太陽光発電設備を自社の屋根や敷地に設置する「自家消費型太陽光発電」や、電力会社が提供する再生可能エネルギー由来の電力メニューへの切り替えなどが挙げられます。これらの電力はCO2排出係数がゼロ、あるいは極めて低いため、導入することでスコープ2排出量を大幅に削減することが可能です。
削減アプローチ メリット デメリット
省エネルギーの推進 電気料金の削減に直結する。
幅広い業種で実施可能。
設備投資が必要な場合がある。
効果が漸進的。
再生可能エネルギーの導入 排出量を大幅に削減できる。
企業イメージが向上する。
初期投資が大きい場合がある。
天候に左右される。
電力会社の切り替え  比較的容易に実施できる。
すぐに効果が現れる。
電気料金が上昇する可能性がある。


排出係数の低い電力会社へ切り替える

電力自由化により、企業は様々な電力会社から電力供給元を選択できます。各電力会社は電源構成が異なるため、CO2排出係数にも差があります。現在の契約電力会社よりも排出係数の低い電力会社へ切り替えることは、比較的容易にCO2排出量を削減できる有効な手段の一つです。複数の電力会社の排出係数と料金プランを比較検討し、自社に最適な選択をすることが重要です。
【関連記事】カーボンフットプリント(CFP)とは?企業の取組事例や算定方法を解説!

 


まとめ


CO2排出係数は、企業の環境負荷を可視化し、脱炭素経営を推進するための重要な指標です。本記事で解説した係数の種類や計算方法、調べ方を正しく理解し、自社の排出量を正確に把握することから始めてください。そして、省エネや再エネ導入といった具体的な削減策を実行することで、社会的な責任を果たし、持続的な企業価値の向上を目指しましょう。
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