GRS認証を取得している企業はどんなところ?取得メリットや取得方法を解説!

2025/11/28サステナビリティ

企業のサステナビリティへの関心が高まる中、製品が正しくリサイクルされたことを証明する「GRS認証」が注目を集めています。環境への配慮をアピールし、消費者からの信頼を得るために、この認証を取得する企業が増加しています。
この記事では、GRS認証の基本的な知識から、取得のメリット、具体的なプロセス、そして実際に認証を取得した企業の事例まで、詳しく解説します。

 

GRS認証とは?RCS認証との違いを解説


GRS認証は、製品のリサイクル含有物を証明するだけでなく、企業の社会的・環境的側面も評価する国際的な認証制度です。類似の認証であるRCS認証との違いを理解し、重要性を把握しておきましょう。


GRS認証の目的と基準

GRS(Global Recycled Standard)認証は、アメリカに本部を構える非営利団体Textile Exchangeが運営する、リサイクル製品に関する国際的な認証プログラムです。 主な目的は、製品におけるリサイクル材の含有率を正確に検証し、サプライチェーン全体でトレーサビリティを確保することにあります。GRS認証は、リサイクル率が20%以上であることが必要で、最終製品ロゴを使用するためには、最終製品に含まれるリサイクル率が50%以上であることが求められ、環境面では排水管理や化学物質の使用制限、社会面では従業員の労働環境や人権への配慮など、多岐にわたる基準を満たす必要があります。
認証基準 主な要求事項
リサイクル要件 ロゴ・ラベルを使用するには、製品のリサイクル含有率が50%以上であること。
ロゴ・ラベルを使用しない場合は、製品のリサイクル含有率が20%以上であること。
環境要件 エネルギー消費量の削減計画、排水・排気ガスの管理、ZDHCに準拠した化学物質管理など。
社会要件 労働者の人権保護、公正な労働条件、差別の禁止、団結の自由など。
トレーサビリティ 原料の受け入れから最終製品の出荷まで、すべての工程で認証材が管理されていること。


RCS認証との主な相違点

RCS(Recycled Claim Standard)認証もGRS認証と同じくTextile Exchangeが運営する認証制度ですが、いくつか重要な違いがあります。最も大きな違いは、審査の対象範囲です。RCS認証は、リサイクル材の含有率(5%以上)とトレーサビリティのみを検証の対象としています。 一方、GRS認証はそれに加えて、前述の通り環境的・社会的な側面や化学物質管理に関する厳しい要件も審査対象となります。つまり、GRS認証はRCS認証の基準をすべて含んだ上で、さらに広範なサステナビリティ要件を求める、より包括的な認証と言えます。


GRS認証が注目される社会的背景

近年、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資への関心が高まり、企業には事業活動における環境・社会への配慮が強く求められるようになりました。消費者の間でも、製品の背景にあるストーリーや企業の倫理的な姿勢を重視する「エシカル消費」の意識が広がっています。GRS認証は企業のサステナビリティへの取り組みを客観的に証明する有効な手段となるのです。認証取得を通じて、環境負荷の低減や人権への配慮といった企業の姿勢を具体的にアピールできるため、多くの企業が取得を目指しています。
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GRS認証を取得する3つのメリット


GRS認証の取得は、単に環境へ配慮していることを示すだけでなく、企業経営において具体的な利点をもたらします。ブランドイメージの向上からグローバル市場での競争力強化まで、そのメリットは多岐にわたります。
 


メリット1:環境配慮のアピールによる企業価値向上

GRS認証の取得で、企業は自社の製品が環境に配慮したものであることを国際的な基準に則って客観的に証明でき、ステークホルダーからの信頼を高めます。結果として、企業のブランドイメージが向上し、企業価値全体の向上に繋がります。


メリット2:取引機会の拡大・維持

海外の有名アパレルブランドや小売業者は、サプライヤーに対してGRS認証の取得を取引条件として要求するケースが増えています。GRS認証の取得はグローバル企業のサプライチェーンに参入するための重要な取引要件となり得ます。新たなビジネスチャンスを獲得し、海外市場へ事業を拡大する上で大きなアドバンテージとなるでしょう。


メリット3:消費者からの信頼性獲得と競争力強化

サステナビリティへの意識が高い消費者は、製品を選ぶ際に環境や社会への影響を考慮します。GRS認証マークが表示された製品は、信頼できる第三者機関によってその価値が保証されているため、消費者は安心して購入することができます。 この信頼が購買意欲を促進し、市場における製品の競争力を高める要因となります。

 

GRS認証の取得プロセスと費用


GRS認証を取得するためには、計画的な準備と手順を踏むことが重要です。ここでは、認証取得までの一般的な流れと、認証機関の選び方、そして必要となる費用の目安について解説します。


認証取得までの5つのステップ

GRS認証の取得は、一般的に以下の5つのステップで進められます。
1.    情報収集と準備:まず、Textile Exchangeの公式サイトなどからGRSの基準書を入手し、要求事項を正確に理解します。自社の管理体制が基準を満たしているかを確認し、不足している部分について準備します。
2.    認証機関の選定・申請:GRSの審査は、Textile Exchangeから認定された第三者認証機関(CB)が行います。インターテック・サーティフィケーションなど、日本国内で審査可能な機関の中から自社に適した機関を選び、申請書類を提出します。
3.    書類審査:申請後、認証機関による書類審査が行われます。ここでは、排水分析結果やケミカル関連の書類など、事前に確認が必要な事項を中心に、書類審査が実施されます。
4.    実地監査:企業の管理マニュアルや記録などが基準に適合しているかが確認されます。認証機関の監査員が工場や事業所を訪問し、実地監査を行います。現場での管理状況や従業員へのインタビューなどを通じて、基準が実際に遵守されているかを審査します。
5.    認証書の受領:実地監査で指摘事項がなければ、認証が承認され、スコープ証明書(SC証明書)が発行されます。指摘事項があった場合は、是正措置を行い、その報告が承認された後に認証書が発行されます。
【関連記事】認証プロセスについて


認証機関の選定と比較ポイント

日本国内で活動しているGRS認証の審査機関は複数存在します。自社に最適な機関を選ぶためには、以下のポイントを比較検討すると良いでしょう。
•    実績と専門性:自社の業界(繊維、プラスチックなど)における認証実績が豊富か。
•    サポート体制:日本語での円滑なコミュニケーションや、申請プロセスにおけるサポートが手厚いか。
•    監査員の質:経験豊富な監査員が在籍しているか。
•    費用:見積金額が明確で、費用対効果が見合っているか。


認証にかかる費用の目安

GRS認証の取得にかかる費用は、企業の規模、事業所の数、工程の複雑さなどによって大きく変動します。一般的には、申請料、書類審査料、実地監査料(監査員の旅費交通費含む)、認証書発行料などが含まれ、数十万円から数百万円程度が目安となります。また、認証取得後も、認証を維持するために毎年、年次監査を受ける必要があり、その都度費用が発生します。
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【業界別】GRS認証を取得した企業事例


GRS認証は、繊維業界を中心にさまざまな企業で取得が進んでいます。ここでは、日本の主要な企業による具体的な取り組み事例を紹介します。


【化学繊維・テキスタイル業界】東レ株式会社

大手化学メーカーである東レは、使用済みペットボトルなどを原料とするリサイクル繊維ブランド「&+(アンドプラス)」でGRS認証を取得しています。 同社は、優れた洗浄技術やフィルタリング技術を持つ協栄産業と協業し、リサイクル原料を開発しました。この取り組みにより、これまで難しかった特殊なリサイクル糸の生産が可能となり、サステナブルな素材の供給をリードしています。
参考:https://www.andplus.toray/pdf/factbook.pdf 


【プラスチック・樹脂製造業界】武田精機株式会社

プラスチック製造業の武田精機は、再生プラスチックホックの製造においてGRS認証を取得しています。従来は外部業者に引き取られていたものを、同社の特殊設備で粉砕し、再度原材料(ペレット)として再生しています。プラスチック材を最大限有効利用し、環境にも人にも優しいものづくりに取り組んでいます。
参考:https://takeda-seiki.jp/environment/ 

 

GRS認証取得に向けて知っておくべき注意点


GRS認証の取得と維持は、企業の持続的な努力を必要とします。認証プロセスを進めるにあたり、特に留意すべき点が2つあります。ポイントを事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。
 


サプライチェーン全体の協力体制が必要

GRS認証は、自社だけでなく、原料の供給元から製品の加工委託先まで、サプライチェーンに関わるあらゆる企業が認証を取得している必要があります。一つの企業でも認証が途切れると、最終製品でGRS認証を謳うことはできません。認証取得を計画する段階で、取引先と密に連携し、認証取得への理解と協力を得ることが不可欠です。サプライヤーとの強固なパートナーシップを築き、共に基準を遵守する体制を構築する必要があります。


継続的な管理と年次監査が必要

GRS認証は一度取得すれば終わりではありません。認証を維持するためには、1年ごとに認証機関による年次監査を受け、基準への適合性を継続的に証明する必要があります。日常業務においてGRSの要求事項(トレーサビリティの記録、化学物質の管理、労働環境の維持など)を常に遵守し、その証拠となる文書を整備・保管し続けなければならないことを意味します。継続的な管理体制の構築と、全従業員への教育を欠かさないようにしましょう。

 

まとめ


本記事では、GRS認証の概要から取得のメリット、具体的なプロセス、企業の成功事例、そして注意点までを網羅的に解説しました。GRS認証は、企業の環境および社会に対する責任を客観的に証明し、グローバル市場での競争力を高めるための強力なツールです。認証の取得と維持には継続的な努力が必要ですが、それによって得られる信頼と企業価値は、今後のビジネスにおいて大きな財産となるでしょう。
リサイクル素材を使用した製品の信頼性を証明したい企業様に、GRS認証取得をおすすめします。インターテック・サーティフィケーションでは、公正な審査を通じて、貴社製品の環境配慮を第三者認証として証明可能です。認証取得の流れや要件について専門スタッフが丁寧にご説明いたしますので、まずはお問い合わせください。
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