連載(1) 地球環境とISO14001

2004/01/15Intertek News(3号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

企業の社会的責任が厳しく問われる時代になり、環境への配慮は企業にとって益々重要な課題となってきています。今号より、益々関心が高まっている環境ISOに関する連載をお届けいたします。

  産業革命以来、人類は大きな発展をとげ、繁栄を築いてきました。先進国の人々は地球上の多くの資源を消費し、その恩恵を受けて豊かさを享受しております。しかし、今日に至る過程は必ずしも良いことばかりではありません。その一つが、水俣病、イタイイタイ病、四日市の大気汚染訴訟に代表される公害問題です。これらの問題は40年以上を経て、さまざまな法規制により解決に進んでおりますが、今なお、シックハウスや土壌汚染など新たな問題が発生しております。

 それらは、被害が局地的なものにとどまらず、河川、湖沼、そして海洋汚染となり食物連鎖を通して北極の自然にも及んでいること、地球規模の汚染となって、生態系を破壊しており、いわば地球規模の破壊が起きていることが認識されるようになりました。さらに、オゾン層の破壊や地球温暖化、酸性雨、砂漠化に象徴される現象は、人類の存続の可否を問う世界の焦眉の問題、「地球環境問題」として捉えられるようになりました。

 地球環境問題は一地方、一国の問題ではなく、国境を越えて地球規模に広がっている問題であるとともに、私たち自身の営みに原因があるという厄介な問題です。それゆえ、先進国に住む人も、発展途上国に住む人も、かけがえのない地球を次世代に継承することに、政府も、事業者も、市民もそれぞれの立場で責務を負っているのです。1992年リオデジャネイロで各国の首脳が集まり、地球規模の破壊を食い止め、持続可能な開発を進めるために、「アジェンダ21」と称される宣言が採択されました。

 ISO14001はこの「持続可能な開発」を含む環境問題に対する人々の関心の高まりを背景として、主として事業者向けに作成された規格です。「アジェンダ21」については環境マネジメントシステムの原則及びその構築支援のガイドラインとして作成されたISO14004の付属書に詳しく解説されております。

 ISO14001の序文には「組織の環境上及び経済上の目標達成を支援するために云々」と記載されております。いわば事業経営の収益と環境保全活動は同方向のベクトルを目指すものであることを意味しております。

 ムーディー・インターナショナル・サーティフィケーションは認証審査、継続審査を経てお互いに高めあう触媒となることを社の理念としております。それゆえ、上記のISOシリーズの理念を大切にし、いわば「経営に役立つISO9001,ISO14001」を視野に置いた審査を心がけております。

 次回は「環境経営とISO14001」についてお話しいたします。