連載(10) 内部監査(1)

2006/04/17Intertek News(12号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 環境マネジメントシステム(EMS)における内部監査はPDCAサイクルの中でC(チェック)に位置づけられます。そのため、内部監査の結果は特定の不適合を是正または予防し、マネジメントレビューの実施に当たってインプット情報を提供し、継続的改善に向けた処置(アクション)につなげる重要な役割を担っています。ところがEMSを構築した多くの組織が内部監査の役割を果たしてないことで悩んでいます。これはおそらく、次のようなことが原因であると思われます。

  • (1)内部監査の役割が理解されていない。内部監査で何をすべきかわからない。
  • (2)規格の理解を含め、内部監査員としての力量が不足している。
そこで、今回は(1)内部監査の役割について述べ、次回に(2)監査員の力量についてお話します。
 規格が内部監査に求めているのは次の事項について適合・不適合を判定することです。
  • (1)マネジメントシステムが、a)規格の要求事項及び b)計画された取り決めに適合しているか
  • (2)適切に実施され、維持されているか

 (1)についての監査を「適合性監査」と言い、監査の基本をなす部分です。適合させるべきシステムとは、まずはマニュアルであり手順書ですが、実際に運用される工程、作業も含みます。システム構築の段階では認証取得のためにISO14001規格に適合させるだけで精一杯でしょう。しかしながら、冒頭に述べた内部監査の位置づけを思い起こすなら、b)の計画された取り決めに対する適合も重要です。「計画された取り決め」とは手順書、ルール、方針、目的・目標・実施計画、その他EMS運用のために計画した全てを意味します。すなわち、方針どおりか、目的・目標に合致しているか、実施計画どおり進んでいるか、特定した法規制要求事項は順守されているか等で、実行の詳細を当初の計画や取り決めを基準としてチェックすることになります。

 さて(2)の「適切に実施」とはどういうことでしょうか。上記のb)より進んで実行した結果の中味を問うていると言えます。すなわち、実行した成果は方針の意図に応えるものか、目標は達成されたか、実施計画は目標に対して有効であったか、法規制は法の精神に合致して遵守されたか、その他活動の成果は地球環境、地域環境、自らの事業に対して評価しうるものであったか、などです。これは「パフォーマンス監査」と言われ、活動の成果、時には数値データを直接コメントすることになります。審査機関が行う認証審査ではパフォーマンスを直接審査しませんので、内部監査でパフォーマンスの監査が確実に行われていることを確認することによって、組織がパフォーマンスの改善に向かっていることを知ることができるわけです。

 ところで、MICの審査では「改善の機会を見出すこと」を内部監査の目的のひとつとして取り入れることを奨めております。「改善の機会を見出す」とは、「不適合探し」だけでなく、監査員自ら改善提案をすることです。それは製品/サービス/活動について熟知している内部監査員だからこそ可能です。これにより、内部監査を実践的に高めることになります。

 以上、内部監査では計画された取り決めに対する適合性を確認すること、パフォーマンスの確認をすること、改善の機会を見出すことを述べました。一言で言うと審査機関による認証審査のミニ版ではないということです。次回は内部監査の続きとして監査員の力量についてお話します。