連載(11) 内部監査(2)

2006/07/17Intertek News(13号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は内部監査の役割について述べましたが、今回はその役割を担うために必要な監査員の力量について述べます。まず明らかにしておきたいことは内部監査として要求されることは、「資格」ではなく「力量」であること。したがって、外部研修であれ、内部研修であれ研修の受講実績ではなく、実際に「力量」を備えることが必要です。

 ではどのような力量が必要でしょうか、ISO19011「品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針」には力量の概念として次のような記載があります。

(要点のみ)
  • ①倫理的、心が広い、外交的、観察力、知覚、適応性、粘り強さ、決断力、自立性などの個人的特質を備えている
  • ②基準文書(規格等)、適用される法規制等、監査の原則・手順・技法、組織の運営状況を理解し、必要な技能を備えている
  • ③ライフサイクル評価、環境パフォーマンス評価等のマネジメントの方法、環境科学、環境技術、運用技術を備えている
これらについてISO19011に詳しく記載されていますので一度よく読んでいただきたい。
 さて、内部監査員に必要な力量について別の切り口から解説してみましょう。
まずは規格を理解するだけでなく使いこなせるようになること。不適合を指摘する場合、表面的な指摘に終わらず、根本原因に踏み込んだ問題の把握が必要です。たとえば、監査で法規制値をオーバーしたデータを発見した場合、これをクロージングするためには、


  • -法規制等要求事項の特定の手順が確立していないのか(4.3.2)
  • -法規制等を特定する力量が不足しているのか(4.4.2)
  • -法規制等要求事項の実施の手順が確立されていないのか(4.4.6)
  • -法規制等の順守の確認がなされていないのか(4.5.2)
  • -法規制の違反があっても不適合を提起する仕組みがないのか(4.5.3)
  • -順守結果がマネジメントレビューの入力情報になっていないのか(4.6)
等を明確にする必要があるわけです。

 第2に自社の技術・設備は勿論、自社の経営戦略について知る必要があります。環境マネジメントシステムは経営管理システムの一部であるからです。また、本業の中で取り組むテーマでパフォーマンス評価をするためには関連する経営指標(製品計画、売り上げ予測、開発計画、予想利益率等々)を知っておく必要があるわけです。

 第3に自社が環境保全上何を求められているかを知ることです。それは、新たな法規制の動き(改定)として現われたり、国や自治体の施策の動向であったり、地球環境にかかわる情報であったりします。それらを常に把握し、それらに照らすことによって、初めてシステムのパフォーマンスなり、妥当性なりを監査できるのではないでしょうか。

 監査員は、マネジメントシステムを監査することがシステムの運用に重要な役割を果たすことを認識するとともに、日頃から力量アップに努めなければなりません。

 ISO14001の要素の解説はひとまず今回で終了し、次回からは関連する評価技術について逐次お話します。