連載(12) ライフサイクルアセスメント
2006/10/16Intertek News(14号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
今回からはISO14001に関連する評価技術についてお話します。今回はライフサイクルアセスメント(LCA)です。
LCAとはある製品について原料の調達から製造、使用、廃棄に至る全てのプロセス(ライフサイクル)で発生する環境負荷を総合的に評価する方法です。たとえば、洗濯機を考えた場合、ライフサイクルには主要部材である鉄板、プラスチック、電気・電子部材が資源採掘から始まって原料素材になり、各々の部品が作られるまでの工程、家電メーカーによって組み立てられ、洗濯機が製造される工程、包装され、量販店に配送される工程、家庭で使用される工程、更に役に立たなくなって廃棄される工程があります。それぞれの工程で使用される資源・エネルギーと排出する環境汚染物を逐次評価して行きます(下図参照)。
この方法は環境配慮製品を開発するためには重要で、これにより極力環境負荷の小さい部品を調達し、製品が顧客に渡った後、廃棄される際にも環境負荷の小さい製品を設計します。環境配慮製品であることを示す(エコリーフラベルとして知られている)タイプⅢの環境ラベルではLCAによる環境データは必須の要件です。
- ①目的と調査範囲の設定
- ②ライフサイクルインベントリー分析(LCI)
- ③ライフサイクル影響評価
- ④LCAの解釈
- ⑤報告
- ⑥クリティカルレビュー
さて、ISO14001との関連はと言うと環境側面を特定する際に影響を及ぼすことができる環境側面あるいは製品の環境側面を特定する際に関連してきます。付属書A3.1で示されている、考慮することが望まれる「設計及び開発」「包装及び輸送」「供給者の環境パフォーマンス」「原材料及び天然資源の採取及び運搬」「製品の流通、使用及び使用後の処理」など環境側面の重要度の推定に役立ちます。しかしながら、同じ付属書A3.1には「環境側面の特定において詳細なLCAを要求するものでない」とも書かれています。あまりに煩雑で膨大なデータの蓄積を必要とすることがその理由でしょう。
一方、LCAは現在考えられているほぼ唯一の総合的な環境影響評価法であり、その重要性はますます高まってきていることは事実であり、監査の指針であるISO19011ではEMS監査員が身に付けることが望ましい知識・技能のひとつとして取り上げられています。したがって、EMSを運用している組織もLCAの概念を知り、自組織の前後の工程についての環境負荷を算出するぐらいのことは試してみるべきでしょう。