連載(13) 環境パフォーマンス評価

2007/01/15Intertek News(15号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 今回は前回のライフサイクルアセスメント(LCA)に引き続いて環境評価のツールとしての環境パフォーマンス評価(EPE)についてお話します。

 パフォーマンスとは芸人や芸術家が観客の前で示す演技を連想しますが、一般には「人や物から表現されて見えてくるもの」を言います。ISO14001では環境パフォーマンスを「環境側面についてのマネジメントの測定可能な結果」と定義しています。つまり、「管理や活動の結果」と考えてよいでしょう。

 環境パフォーマンスを評価する方法として、環境パフォーマンス評価法(EPE)の指針がISO14031に示されています。これはISO14001の適合、不適合を問わず、環境パフォーマンスを継続的に改善していくために自主的にその評価プロセスを設計し、実施する内部管理の手法であり、指標を選定し、データを収集し、解析し、その結果を報告するプロセスです。

 EPEのための指標は環境パフォーマンス評価指標(EIまたはEPE指標)と呼ばれ、環境状態指標(ECI)と環境パフォーマンス指標(EPI)からなります。ECIは地域の大気、水質、土壌、特定の動植物種の特性であり、組織の活動と環境状態との関係を示すバックグラウンドデータになります。これは法規制の要求事項として特定されることもあります。一方、EPIは操業パフォーマンス指標(OPI)とマネジメントパフォーマンス指標(MPI)からなり、OPIは投入する原料の量、エネルギー量、製品・廃棄物の量、騒音・振動の大きさや発生件数、設備・ロジスティックに関わる稼働率、輸送エネルギー量など、組織のメインプロセスの操業によってもたらされる量的指標です。対するMPIはグリーン購入や環境適合設計、EMSに関する達成率や教育訓練への参加率、地域へ提供した環境プログラムの件数、情報開示の項目数などマネジメントの実行と有効性に関わる定量的な指標です。

 EPEではこれら3つの指標を設定し、データを収集して評価して、内部及び外部の利害関係者に報告し、このプロセスを定期的にレビューして、結果としてパフォーマンスを改善することが要求されます。これらのプロセスは、ISO14001において環境側面を特定・評価し、目標を設定するプロセスと重なる部分があります。ただ、ISO14001では、「システム規格」として、目標を設定し、管理するシステムを規定しているだけで、パフォーマンスの評価方法やパフォーマンスの内容には踏み込まないのに対して、EPEでは上記の指標設定から報告に至るプロセスごとに細かな規定があり、かつ、確実にパフォーマンスを出力することが求められます。

 さて、ここでISO14001における環境パフォーマンスを考えてみます。ISO14001において継続的なシステム改善が目指すものは環境パフォーマンスであることは明白であり、2004年版ではマネジメントレビューでのインプットに環境パフォーマンスがしっかりと組み込まれています。また、ISO14001の段階的構築の指標として開発が始まったISO14005においてはEPEの手法が取り込まれようとしています。環境マネジメントシステムにおいてEPEが益々その重要性を増してくるように思われます。