連載(15) 持続可能な開発(1)
2007/07/16Intertek News(17号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
「持続可能な開発」の言葉は国連の要請で設立された「環境と開発に関する世界委員会」が「われら共通の未来」と題する報告書(1987年)の中で使ったのが最初です。それは委員長を務めたノルウェーの首相ブルントラントにちなんでブルントラントの定義として知られており次のようでした。
「将来の世代がそのニーズを満たす可能性を損なうことなく、現在のニーズを充足させる開発」
その後、この定義には様々な具体的な表現が加えられるようになり、1990年の英国の環境白書には「持続可能な開発とは、地球が蓄えたものを食いつぶすのではなく、得ているものに依存し生活することである」と記載されています。
そもそもこの委員会の目的は、産業の発展が優先されてきた社会構造を独立した立場で検証し、評価して貧困の爆発的増加と戦いながら環境保護を推進する方法を提案することであり、エコロジーの基盤を保持しながら開発を進めることにより、豊かな未来を築くことが可能であると言う考えの上に立っていました。このため、この報告では無計画な森林伐採を糾弾し、先進国に対してはアフリカ諸国の負債の緩和を、発展途上国に対しては教育の向上や産児制限を訴えることとなり、この報告は1987年の国連総会で承認されました。
その後、この持続可能な開発の概念と方法論は「環境と開発」をテーマとして全世界の先進国、途上国が集まった「国連環境開発会議(地球サミット)」(1992年)で採り上げられ、その原則を記した「リオ宣言」、行動計画である「アジェンダ21」として採択されたのでした。これらは法的拘束力を持たなかったものの、格調の高い国際的合意事項として各国の環境政策の中に反映されることとなりました。その中で、アジェンダ21の第30章では「環境マネジメントシステム」が産業界が採るべき持続可能な開発の優先課題として記載されています。また、貧困撲滅、汚染者負担の原則、国民の参画など、リオ宣言の27の原則はマネジメントシステム構築の参考としてISO14004:1996の付属書に組み込まれています。
今日、「持続可能性」の対象は拡張され、それらのさまざまな事柄の持続可能に展開されていますが、それらの共通の要件は「社会的な責任を果たす」ことではないでしょうか。言い換えると、「経済」「環境」「社会」に対する責任を果たすことが、持続可能性を実行する共通の要件であり、全ての企業と組織に求められていることと言えるでしょう。
次回は「持続可能な開発」をどのようにして達成できるのか、ナチュラルステップの方法を紹介しながら、考えてみることとします。