連載(16) 持続可能な開発(2)

2007/10/15Intertek News(18号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は「持続可能な開発」とは「将来の世代がそのニーズを満たす可能性を損なうことなく、現在のニーズを充足させる開発」であることを述べました。では、どのようにしてそれは可能か、今回はナチュラル・ステップの方法を紹介します。

 ナチュラル・ステップとはスウェーデンのカール・ロベール博士によって設立された、全世界の企業、自治体、教育機関に環境教育を提供する団体です。その特徴は地球環境を良好に維持し、将来的な経済発展を維持するための「4つのシステム条件」に基づいて到達すべき持続可能な社会を明示し、「効率的なプログラム」を提供することにあります。「4つのシステム条件」とは以下の通りです。

  • ①自然の中で地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けない。
    例えば、石油、重金属など循環可能な範囲内で採掘する。
  • ②自然の中で人間社会が作り出した物質濃度が増え続けない。
    例えば、化学物質などは自然に分解され、循環可能な範囲で生産する。
  • ③自然は物理的な方法で劣化され続けない。
    例えば、土地のアスファルト化、熱帯雨林の破壊が進行しないよう管理する。
  • ④人々が自らの基本的ニーズが世界中で満たされている。
    国内外を問わず人々の基本的なニーズ(富、安全、衛生、人権等)が公平に満たされていること。グローバルには途上国問題、狭くは地域問題を含みます。例えば、製品の輸送エネルギーを削減するために決めた最短ルートが住宅街を通ることになるとする。それが、交通事故リスクを住民に与えることがあれば、住民の安全が脅かされることになり、その計画は採用されない。

 また、ナチュラル・ステップは「効率的なプログラム」として「バックキャスティング方法」による対策を提唱しています。これは現状からスタートする方法(フォーキャスティング方法)ではなく、到達すべき目標を明確にして、その状態から現在を振り返り、今からやるべきことを計画する方法です(下図参照)。これにより持続可能な社会や組織への最短の方策が与えられます。

 さて、昨今、ISO14001は単に環境マネジメントシステムの仕様としてだけでなく、持続可能な開発のマネジメントシステムとしての仕様としても期待されているように思います。その期待に応えるためには、目下の喫緊の課題である地球環境問題や循環型社会形成に資する目的を設定し、確実に成果を出すこと、法規制は当然のこととして、広く社会規範を含めたコンプライアンスを実践すること、更に情報開示によって透明性を確保し、利害関係者とのコミュニケーションを図ることです。それらはISO14001を運用する中で達成が可能です。

 次回はエネルギー問題について考えてみることとします。