連載(18) エネルギー問題(2)
2008/04/15Intertek News(20号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
前回は各種エネルギー源のうち、化石燃料について述べましたが、今回は今話題のバイオ燃料について紹介します。
生物(主として生物体)を転換して得られるエネルギーをバイオマスエネルギーと言います。これらは燃焼して二酸化炭素を排出しますが、植物体自身が成長する過程で二酸化炭素を吸収するので差し引きゼロとみなされます。(これをカーボンニュートラルと言います。) また、何度も栽培できることから再生可能なエネルギーの一つでもあります。では、バイオマスエネルギー源としてどのようなものがあるでしょうか。
(1)薪や炭として利用する森林資源
森林資源を燃やしてエネルギーを得ることは人類が地上に現れて以来の原始的な方法ですが今なお大きな潜在力を持っています。現在の荒地や未利用地の活用によってエネルギー不足に貢献できる可能性がまだまだ残っています。
(2)ディーゼル燃料油として取り出す栽培植物
樹液成分が石油に良く似ていて、成長速度が速いユーカリやアオサンゴ、菜種、アブラヤシなどはディーゼル燃料を得る植物として利用されます。欧州で盛んに行われ、2020年までに輸送用燃料に占めるバイオディーゼルの割合を10%にする計画があります。日本では滋賀県のNPOによる「菜の花プロジェクト」が知られています。
(3)バイオアルコール燃料の原料としての栽培植物
近年、でんぷん・糖質作物から酵素反応によってバイオアルコールの製造が、石油の高騰を背景に急増しています。焼酎作りと同じ原理です。ブラジル、米国で盛んで、ガソリンに数%~数10%添加して使用します。日本では環境省の後押しで3%添加品が売り出されましたが、添加量を多くするとエンジン周りの部品を腐食すると言うことで、石油連盟はアルコールそのものではなく、これを化学物質と更に反応させたETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)を7%添加したものを売り出しました。どちらが本命かわかりませんが、足並みの悪さを示しています。
バイオアルコールの最大の問題点は食料用穀物との競合であり、これまで食料用として栽培されていた穀物が燃料用に振り向けられ、様々な基礎食品の暴騰をもたらしました。更に、栽培用地の開拓のために森林が破壊される事態も起きています。これらの問題点に対して、非食品バイオマスからアルコールを作る技術が開発中であり、欧米で進んでいるバイオ燃料の品質規格の調整の中で、農園開発に伴う森林破壊を規制しようとしています。
(4)直接燃焼用又はガス化燃焼用ガスの原料としての廃棄物
廃棄物の直接燃料化として生ゴミを含む一般廃棄物をチップ化した発電燃料(RDF)、プラスチックゴミや紙ゴミをチップ化した燃料(RPF)の製造、高温で蒸し焼き状態にしてガスを発生させるガス化炉、家畜の糞を嫌気性発酵してメタンを発生させること等が実用化されています。
バイオ燃料は潜在的なボリュームが大きい上に、生態系を損なわないということから、重要なエネルギー源として積極的に開発拡大すべき資源です。そのためには強力な政策的な支援が必要と思われます。
次回はエネルギー問題第3弾として今後どのようなエネルギー供給システムが可能か検討してみることとします。