連載(2) 環境経営とISO14001

2004/04/15Intertek News(4号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は、地球規模で環境破壊や環境汚染が進行していること、地球上のあらゆる人々はそれそれぞれの立場で環境問題に取り組む必要があること、ISO14001は、主として事業者向けに作成された環境活動に関するマネージメント規格であることを述べました。マネージメントとは、単に「管理」というより「経営管理」という意味に近く、「環境マネジメントシステムを構築する」とは、環境問題を経営管理にリンクさせることにほかならないのです。すなわち、「環境経営」に向かって一歩踏み込むことを意味します。では、「環境経営」で何をすべきでしょうか。

 まず第一に、「環境リスク管理」です。青森県と岩手県の県境で大量の廃棄物不法投棄が発見されたことはまだ記憶に新しいことと思います。この事件では投棄した業者が廃業しており、結局、廃棄物を排出したメーカーが責任を負わされました。また、筆者が聞いた例では、灯油を流出させて汚染が湾内の養殖場に流れ込んだ例、作業員が作業場にこぼれた染料を無造作に洗い流したばかりに、公共の側溝が着色し、数100m先の川まで汚してしまい、刑事事件にまで発展した例などがあります。ひとたびこのような汚染事件を起こしますと、復旧に莫大な費用がかかるのみならず、社会的信用も失墜することになり、容易に立ち直れない痛手を被ります。ISO14001は、このようなリスクを抽出し、予防措置を取り、万が一起きた場合でもこれを最小にとどめる有効な仕組みを提供します。

 環境問題を経営の中心に据える第二の意義は、CSR(企業の社会的責任)です。CSRの考え方は古くからありますが、最近良く話題に上るようになりました。急速に劣化しつつある地球環境は、大量生産・大量消費・大量廃棄を良しとする価値観を無意味なものとしつつあります。企業存続のために、新しい理念・価値観を求めざるをえないわけです。その一つが、いわゆる経済・環境・社会のトリプルボトムアップの考え方であり、ここで言う社会とは、障害者の雇用とか幼少労働の禁止などの社会的公正や地域、途上国への貢献活動などを意味します。

 ISO14001は社会的側面には限界があり、他の規格に委ねざるを得ませんが、環境への取り組みを通して社会的責任を果たすツールとなります。そして、持続可能な環境活動と持続可能な経済活動を同じ軸で高めることを目指します。このことはISO14001の序文に「組織の環境上、及び経済上の目標の達成を支援するために・・・」と明確に記載されております。それではどのようにすれば可能でしょうか。まずは本業に正面から取り組むことです。事務所の紙・ゴミ・電気にとどまらずに現場に出ることです。そこにはたくさんの省エネ・省資源テーマが転がっているはずです。原材料の購入、検査、包装、配送にムダはないでしょうか。また、環境にやさしい製品を設計することも使用段階での環境負荷を下げるという意味で重要です。

 ムーディー・インターナショナル・サーティフィケーションは現場に置けるリスク把握を重視します。そして、収益の上がる環境活動を大切にします。認証審査、継続審査を通して、お客様の「環境経営」に役立つべく、日夜励んでおります。

次回は「EMSの要素(1)環境側面」についてお話しいたします。