連載(21) 資源問題(2)

2009/01/15Intertek News(23号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 今回は「資源問題(2)」として鉱物資源(金属資源)について述べます。

 昨今、自動車や電気・電子製品はますます高機能化してきていますが、それは白金や金、銅、パラジウムなどの希少金属の使用に負うところが大きいように思われます。例えば、自動車排ガスの浄化や燃料電池に白金、パラジウムが使われ、携帯電話には金や銀、ゲルマニウム、テレビ・パソコンの液晶パネルにはインジウム、スズ、医療機器や自動車には欠かせない小型モーターにはネオジム、ジスプロジウム、サマリウム、電池材料にはリチウム、ニッケルが使用されています。また、どこのオフィスにもあるコピー機に使われる材料は鉄、銅、アルミニウム、鉛、スズ、リチウム、クロム、コバルト、ニッケル、モリブデン、アンチモン、バリウム等です。

 これらの使用量は膨大であり、枯渇の心配が当然出てきます。枯渇は埋蔵量と消費量のバランスで決まりますので、まずは現有埋蔵量を年間消費量で除すことによって当面の可採年数を算出することができます。これによると2000年のデータで、以下の通りになります。

金-18年、銀-17年、銅-28年、亜鉛-25年、鉛-21年、スズ-37年、アンチモン-15年、インジウム-11年、鉄-121年、アルミニウム-185年

 このデータで示されるように相当厳しい状況にあり、一部の金属資源は価格も高騰し、資源国の輸出制限もあって入手しにくい状況になっており、既に枯渇のフェーズに入っていると言えます。

 価格が高騰すると、これまで経済的に成り立たなかった鉱床からも採掘されるようになるのでこれらの潜在埋蔵量(「埋蔵量ベース」と称し、概ね現有埋蔵量の1.2~3倍程度)を考慮する必要があります。また、需要も毎年変化しますので改めて2050年までの需給を推定すると以下のようになります。

  • ①2050年に現有埋蔵量をほぼ使いきるもの
    鉄、モリブデン、タングステン、コバルト、白金、パラジウム

  • ②2050年までに現有埋蔵量の2倍以上の使 用量となるもの
    ニッケル、マンガン、リチウム、インジウム、ガリウム

  • ③2050年までに潜在埋蔵量(埋蔵量ベース)を超えるもの
    銅、鉛、亜鉛、金、銀、スズ

 このまま需要に応じて地下資源を開発することは2050年までに主要金属資源を枯渇させてしまうことになります。更に、金属鉱床の開発には多量の廃棄物、時には有毒物の排出を伴います。例えば銅の場合、1トンの銅を得る為の廃鉱・スラブは360トンであり、金の場合は実に110万トンに達するとのことです。金属資源の採掘は環境破壊の面からも制限を受けることになります。

 それでは、これらに対してどのように対処すべきでしょうか。次の4つの英単語の頭文字から示される4Rが提唱されています。

  • ①Reduction(減量化)
    資源効率を上げる

  • ②Replace(代替)
    他の物質に代替する

  • ③Recycle(循環使用)
    使用済み機器等から回収し、リサイクルする

  • ④Restriction(制限)
    環境負荷の大きい物質の使用を制限する

 環境面から注目されている燃料電池や排ガスの浄化技術も希少金属消費の面から一層の効率化を図る必要があります。また、省エネルギー同様、省資源にも心がけていかねばなりません。

  次回は「資源問題(3)」として水資源についてお話しします。