連載(22) 資源問題(3)

2009/04/15Intertek News(24号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 今回は「資源問題その(3)」として水資源について述べます。

 私たちの地球は「水の惑星」と言われるように14億km3のもの水をたたえ、多様な生物を育んできました。しかしながら、その水は付表に示すように塩水が97.5%で、真水は2.5%に過ぎません。しかも、その多くが氷山や凍土の中に閉じ込められ、使用可能な水としては地下水、湖沼、河川を合わせても0.76%に過ぎません。

 水資源が他の資源と異なる特徴は、①枯渇資源ではなく、絶えず蒸発と降雨を繰り返す循環型持続資源であること、②必要な質が確保されなければ意味がないということです。循環型であることは無尽蔵に存在するということではなく、ある時間内に利用できる水の量には上限があるということであり、必要な「質」とは生命を育むに足る水質であることは言うまでもないことです。

 現在、水資源は量、質の両面で危機的状況にあり、とりわけ、量的側面は以下のように表現されています。(「世界水フォーラム」資料)
  • ・世界の人口は過去100年間で3倍になったが水の使用量は6倍になった。
  • ・安定的に水にアクセスできぬ人が12億人いる。
  • ・現在31カ国が深刻な水不足状態にあり、このままいくと2025年には48カ国、2050年には66カ国に増える。

 水の使用割合は取水ベースで農業用水70%、工業用水20%、生活用水10%です。生活用水、工業用水は節水やリサイクルが進んで頭打ちの傾向があるのに対して、農業用水の需要は人口増に伴う食料生産量の飛躍的な向上のために、今後も増加し続けることが予想されています。農業用水は世界的には地下水源が利用されており、地下水の過剰汲み上げによる地下水位の低下が米国、メキシコ、パキスタン、中国で深刻化しています。

 日本は恵まれた水の国ですが、水不足と無縁ではありません。食料自給率が40%に満たない日本は穀物や肉類の輸入により、その生産国の水を間接的に消費しているからです。これは「仮想水」と呼ばれ、440億km3にも及びます。これは、日本人の生活用水の3.7億人分、途上国ですと12億人分の生活用水に相当します。農水省は食料自給率を数年以内に45%まで高めることを決定していますが、農業生産増加に見合う水の確保、ないしは農業用水の効果的な利用技術を高めていく必要があります。

 次に、水の質について言及すると、今なお20億人の人が衛生的な水を確保できていないこと、衛生的なトイレがないこととあわせ、非衛生的な水による下痢で毎年180万人もの人が死亡(その90%以上が5歳未満の子供)していることを認識する必要があります。これに対して国連やNPOは様々な取り組みを行っています。日本の持てる技術や人材を提供して水資源多量使用者としての責任を果たすことが望まれます。

 次回ではエネルギーと資源についてのまとめを行います。