連載(24) ISO14001の効果的な運用(1)

2009/10/15Intertek News(26号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 しばらくISO14001から遠ざかっていたので、今回はISO14001の効果的な運用について述べたい。ISO14001の運用を数年経ている組織がその活動を振り返ってみる契機となれば幸いです。

1. ISO14001で何をするの?

 この答えは規格4.2項「環境方針」で規定されている3つのコミットメントから知ることができます。3つのコミットメントとは以下のことを言います。

  • ① 環境汚染を予防する。
  • ② 環境法規制を順守する。
  • ③ これらを実施する仕組みを継続的に改善する。
1-1 汚染の予防

 「汚染の予防」とは狭義では油の流出など環境汚染トラブルを予防することですが、規格3.18の定義では「有害な影響を低減するために、あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物の発生、排出、放出を回避し、低減し、管理するためのプロセス、操作、技法、材料、製品、サービス又はエネルギーを使用すること」としており、広く地域環境や地球環境への汚染の予防をも意味しています。一般に言う「環境保全活動」と考えて良いと思います。
 それでは、環境保全活動の中で何を選択すべきでしょうか。2つの観点から選択できます。まずは組織にとっての重要課題が優先的に採り上げられます。例えば、原材料に有害化学物質を含んでいるなら、代替原材料の開発が優先課題となります。コスト削減が重要課題であれば不良品削減による歩留まり向上や生産性向上、受発注手順の標準化による作業効率の向上なども格好のテーマになります。
 もう1つの観点は、環境影響の大きさです。環境側面を評価するとエコ製品や配送の最適化など間接的影響を持つ環境側面が意外に大きな環境影響を与えることがわかります。自社の活動の中に生ずる環境影響に限らず、間接的に影響を与える活動についても積極的に取り組むことが望まれます。

1-2 法規制の順守

 「環境法規制」とは正確には「法的及びその他の要求事項」であり、「その他の要求事項」とは市町村や特定地域との合意事項、工業団地組合からの規制事項、規制以外のガイドライン、所属業界の公約や取り決め事項、更には特定顧客の要求事項や自主的に取り組む適用外法規制事項など多岐に及んでおり、その例は附属書A3.2に解説されています。
 顧客要求事項まで含めたらキリがないと思うかも知れません。実際には、どこまで広げるかは組織の裁量に委ねられています。これに限らず、規格要求事項をどのように満たすかは組織が自ら決定することが求められているのです。
(4.1一般要求事項)その真意は、自主的に順守すべき事項を法規制以外にも広く定めて、確実に守るべき事を意図していると言えるでしょう。

1-3 継続的改善

 「継続的改善」については規格3.2に「環境パフォーマンスを達成するために環境マネジメントシステムを向上させる繰り返しのプロセス」と定義されています。「繰り返しのプロセス」とはPDCAをドライブすることですがこれについては次回説明します。