連載(25) ISO14001の効果的な運用(2)

2010/01/15Intertek News(27号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は「ISO14001で何をするか」について述べました。つまるところ①環境汚染の予防②環境法規制の順守③継続的改善であり、その内容は内部規範である環境方針の中で具体的に宣言されます。今回はISO14001の効果的な運用の続きとしてPDCAを回すことについて述べます。

2. PDCAを回すとはどういうことか?

 ISO14001はPlan-Do-Check-Actで知られる方法を基礎にしており、規格の4.3計画、4.4実施及び運用、4.5点検、4.6マネジメントレビューの要素群がそれぞれP、D、C、Aに振り分けられていることは周知のとおりです。PDCAを回すということは組織の様々なプロセスに規格の要素およびそれらの相互作用を適用してP→D→C→Aの順で工程を進めることです。以下に詳しく述べます。

2-1 計画する
  • ①組織の環境上の重要事項、すなわち著しい環境側面を決定します。これは単に目標設定のための一過程ではありません。組織のあらゆるプロセスの実行の際に配慮されるべき事項として確定し、組織の構成員全員で認識する必要があります。
  • ②環境改善のための目標を決めます。これは環境方針の中で宣言した汚染の予防(環境保全活動)を具体化したものであり、上記の「著しい環境側面」とも整合されねばなりません。また、目標達成のための実施計画を策定します。計画は当然監視・測定され、成果が問われますので策定する際にはあらゆる手段とその可能性及び追跡のための指標が検討されねばなりません。
  • ③組織が順守すべき環境法規制を特定します。順守すべき事項は手順に基いて実行され、順守評価され、マネジメントレビューで確認される事項として特定されます。従って、実行管理されない責務規定や理念法規は特定する必要はありません。逆に、地域や自治体との協定や顧客の要求事項のほうが組織にとって重要になることがあります。

 これら①、②、③は実行され、監視・点検され、処置される基礎、すなわち「計画」として決定される必要があります。

2-2 実施する

 規格は「4.4実施及び運用」として計画(著しい環境側面の管理及び目標達成、法規制順守)をスムーズに達成するための支援システムとして組織、教育訓練、文書システム、コミュニケーション、緊急事態への対応及び計画実行の手順策定を規定しています。

2-3 点検する

 計画(著しい環境側面及び目標達成度、法規制の順守)は監視・測定され、記録されます。内部監査では計画されたことが実行されているか、計画通りの成果が得られているかチェックされ、マネジメントレビューの入力情報となります。内部監査はPDCAサイクルのC(チェック)の機能を有していることを思い起こす必要があります。

2-4 処置する

 内部監査報告などさまざまな点検結果がトップマネジメントによってレビューされ、次なる展開がアクションとして出力されます。

 以上のように、規格の条項をバラバラに実行するのではなく常にPDCAを回すこと、プロセスのつながりを重視することを意識して実行管理することにより、ISO14001の効果的な運用が可能です。これはISO9001でいう「プロセスアプローチ」に繋がるものです。


 次回は環境トピックとして東京都が始める温室効果ガスの総量規制と排出権取引について解説します。