連載(4) 環境側面を特定する

2004/10/15Intertek News(6号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は「環境側面」とは何か、そして著しい環境側面をどのように展開するかについて話しました。今回はその環境側面の特定方法、著しい環境側面の決定方法についてお話します。

 実は、環境側面の特定方法、著しい環境側面の決定方法について、規格は何も規定しておりません。それゆえ、どんな方法でも良いわけですが、これを適切にやらぬとマネジメントシステムは無意味なものになってしまいます。「適切」とは簡単に言うと①環境側面を漏れなく拾い上げ、②定量化し、③データに基づいて重要度を評価する、ということになります。

 まず、環境側面を漏れなく拾い上げるためには、できるだけ広い視点が必要です。すなわち、次のような対象を考慮します。

  • -活動、製品及びサービスの全て。製品とは生産された物だけでなく、サービスの結果や成果物、たとえば建設における建築物や道路も意味します。
  • -事業活動に必要な原材料、助剤、エネルギーや用水等のインプット、活動によって出力される製品、廃棄物、排ガス、排水、騒音などのアウトプット。
  • -現在だけでなく、過去の活動で残った汚染や不良製品。また、計画中の新製品や新設備など。
  • -通常時だけでなく、立上げ、停止、点検修理などの非定常時、さらには停電、設備破損、衝突事故などの緊急時に起こるかもしれないリスク。
  • -原材料に含まれる化学物質、梱包材料、供給者の活動など直接管理できない作業でも影響を及ぼしうる事項。

 これらを網羅するために自社工程の前後の工程を含む広い範囲でフロー図を作成することは意味があります。それまで気づかなかった環境側面が見えてくることがあるからです。ただ、必要以上に細分化された作業解析は時間のムダばかりでなく大局を見失う可能性があるので注意すべきです。また、よく見かけるブレインストーミング方式でも、予め広い視点から対象範囲を決めて見落としがないように配慮すべきでしょう。

 次に、拾い出した環境側面を定量化するわけですが、自社の工程での電力、燃料、廃棄物量はもちろん、原材料の中の有害化学物質の含有量や、製品が顧客に渡ってからの消費エネルギーや環境負荷、寿命、リサイクルの難易度についてもできる範囲で、調べることが望まれます。つまり、製品のライフサイクルに沿った把握が必要です。なぜなら、一般に、製品になってからの環境影響が大きいことが多く、それゆえ、設計における環境側面が重要な意味を持つからです。

 資源の消費については枯渇度を考慮します。その最たるものが、パソコンや携帯電話、自動車排ガス処理用触媒、分析試薬に使われる貴金属です。金や銀は今のペースで使用すると17-8年、どこにでもあるような銅や鉛でも22-28年しかもちません。また、水も地球規模では不足しており、潤沢といわれている日本でも食糧自給率を改善しようとするとたちまち水不足をきたします。また、石炭・石油・ガス等の化石燃料の消費は資源の枯渇というより地球温暖化、酸性雨、光化学スモッグの原因となる大気汚染と捉えるべきでしょう。

 以上、環境側面は間接影響を含めた広い視点から拾い出すこと、製品のライフサイクルを考慮すること、汚染は起こりうるリスクを想起すること、資源の消費は枯渇度を考慮すべきことを強調しました。

 次回は著しい環境側面の決定についてお話します。