連載(45) COP19と気候変動対策の動向
2015/01/15Intertek News(47号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
前回は第5次IPCC(国連気候変動政府間パネル)報告として温暖化の現状と見通しについて概説しましたが、その原稿の提出直後から記録的な大雨が頻発し、多くの命が土石流に飲まれて消えました。温暖化の影響をまざまざと見せつけられた思いです。今回はその続編として温暖化対応の国際協調の現状を紹介します。
1. 京都議定書以降の動き
京都議定書については第1約束期間に引き続き2013年から2020年までの8年間が第2約束期間として設定されました。日本は米中の不参加は不公平だとして2011年離脱しています。京都議定書は元々先進国だけが削減義務を負う協定ですが、米国、カナダ、ロシア、ニュージーランドが既に離脱しているので、ほぼ欧州勢だけで引き継がれています。一方、2020年からは途上国も参加する新たな枠組みがスタートする予定で、2015年に合意を目指しています。
2. COP19の主要議題と成果
国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)は2013年11月にワルシャワで開催され、以下のような成果が得られました。
新たな枠組み計画は、各国が自主的に決めた温室効果ガスの削減目標値を基に事前に協議して作り上げるボトムアップ方式を採用し、以下のような作業工程が確認されました。
・2014年12月 COP20で「2015年合意」に含める要素の決定
・2015年3月 その準備のある国の国別目標案提出
・2015年5月 「交渉下書き」準備
・2015年5月~12月 目標値に関する国別協議
・2015年12月 COP21で合意、条約締結
温暖化の影響が深刻な小島嶼国連合の提案によるもので、再生可能エネルギーや省エネルギーの分野で具体的な対策の促進策が話し合われる予定です。
途上国が温室効果ガスの削減に取り組む資金として1000億ドルを先進国が拠出する計画を確認しました。また、温暖化に「適応」出来る範囲を超えて発生した損失と被害に対して、国際的に対応する仕組みの検討委員会が設置されました。被害国救済に道を拓く第一歩を踏み出したことになります。
3. 日本の対応
日本は鳩山政権時代に、2020年の温室効果ガス排出量を1990年比25%削減することを約束していましたが、今回これを撤回して、新たな目標として2005年比3.8%削減を提示しました。これは1990年比で3.1%増に相当します。あまりに後退した目標に70を超える国から抗議の声明が出ました。
以上、薄氷を踏みながらも着実に前進しているように思います。COP20や第5次IPCC統合報告が控えていますので次回も続けてこのテーマを取り上げます。