連載(46) COP20/気候変動国際協力
2015/04/15Intertek News(48号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
1. 第5次IPCC統合報告
昨年はIPCC(国連気候変動政府間パネル)第5次報告として3つの作業部会(科学的根拠部会、影響・適応・脆弱性部会、緩和策部会)から相次いで報告書が発表され、このコラムでも取上げました。11月にはその総仕上げの統合報告書が公表されました。この内容は先に発表された第1~第3部会の報告を踏襲し、温室効果ガス(GHG)の排出をこのまま続けると世界的な影響が深刻化するが、それを避けるために気温上昇2℃未満に抑えることが重要であること、そのためには世界全体のGHG排出量を2050年に半分、今世紀末にゼロにする道筋を示したうえで、その技術としてバイオ燃料や二酸化炭素の地中封じ込め、風力・太陽光利用が有効であることを強調しています。
2. 環境省研究チームの気候変動予測
昨年末に日本の大学や研究機関によるコンピューターモデルによる日本付近の気候変動予測が発表されました。これによると現在のペースでGHGの濃度が上がり続けると、今世紀半ばには熱中症で死亡する人は2倍以上になり、デング熱の感染地域は日本全土に広がり、洪水被害は20世紀末の3倍以上に達し、砂浜の85%が消失するとしてGHGの抑制が必要であるという強いメッセージを発信しました。
3. COP20(第20回気候変動枠組条約締約国会議)
COP20が2014年12月にぺルーのリマで開催されました。相変わらず先進国と途上国の対立が原因で成果の乏しい会議でしたが、米国・中国が参加してまがりなりにも国別目標を決定する要件が決定されました。これにより、2020年からの気候変動対策国際協定の実行に向けて第1歩を踏み出したことになります。
(1) 国別目標案について
- ・国別目標案の最終申告期限は2015年10月1日とし、11月1日までに約束草案を総計した効果が報告されます。また、早期申告できる国は3月までに提出することが求められました。
- ・目標値に関する付属情報として、基準年、実施期間、対象ガス、算定法等の提供が求められます。
- ・COP19で決めた5~10月に行う国別事前協議は見送りとなりました。
(2) 新枠組みスタートまでの取組みの底上げ
現在の削減目標の総和は気温上昇2℃未満目標に必要な削減量の半分を満たす程度と推定され、従って各国の2020年目標を大幅に引き上げることが重要課題であると認識されていますが、政治的に難しいのが実情です。COP19では専門家会合が並行して行われ、削減余地のある分野における様々な施策が議論されました。COP20ではそれらの施策の実施を後押しする仕組みを作ることが期待されていましたが、進展はないまま今後も引続き議論を続けていくことが確認されました。
現在の削減目標の総和は気温上昇2℃未満目標に必要な削減量の半分を満たす程度と推定され、従って各国の2020年目標を大幅に引き上げることが重要課題であると認識されていますが、政治的に難しいのが実情です。COP19では専門家会合が並行して行われ、削減余地のある分野における様々な施策が議論されました。COP20ではそれらの施策の実施を後押しする仕組みを作ることが期待されていましたが、進展はないまま今後も引続き議論を続けていくことが確認されました。
(3) 国際枠組み全体の要素
2015年12月のCOP21(パリ)で締結する新しい国際条約に含まれる要素について議論されましたが合意に至りませんでした。しかしながら、これは「交渉テキスト草案の要素」として今回の決定文書の附属書として添付されました。要素とは「緩和(排出削減)」「適応」「技術開発と移転」「能力開発」「資金」「損失と被害」です。
2015年12月のCOP21(パリ)で締結する新しい国際条約に含まれる要素について議論されましたが合意に至りませんでした。しかしながら、これは「交渉テキスト草案の要素」として今回の決定文書の附属書として添付されました。要素とは「緩和(排出削減)」「適応」「技術開発と移転」「能力開発」「資金」「損失と被害」です。
次回は今回説明を省略した「要素」についてその論点を解説します。