連載(47) COP21合意に向けて/作業部会の奮闘

2015/07/15Intertek News(49号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

「交渉テキスト」の取りまとめ

 2015年12月のCOP21(気候変動枠組条約締約国会議第21回会合)では2020年以降の新しい国際枠組みの合意が予定されています。その合意の下書きとなる「交渉テキスト」の取りまとめが2015年2月8日~13日にジュネーブで行われました。会議はこれ迄の各国の対立点については論点を整理するに留めたため、異例の順調さでまとまりました。交渉テキストに記載される「要素」は以下の通りです。

[緩和]
温室効果ガスの排出削減のこと。
[適応]
気候変動の悪影響に備えることで、例えば以下のような対策です。
水資源(水利用の効率化、雨水利用の普及、貯水池整備)、食料(植付け・収穫時期変更、土壌の保水性改善、品種改良)、洪水・沿岸浸食(防潮堤嵩上げ、都市排水能力向上、植林)、生態系保護(緑地ネットワークによる生物移動空間確保、砂浜保全)、健康(熱中症予防、感染症予防)
[技術の開発と移転]
「緩和」と「適応」に取り組む途上国への技術支援。日本政府はCOP19開催中にイベントスペースを設置して積極的に情報を発信して12か国と二国間クレジットの署名を得ましたが、二国間クレジットをどう取扱うかはまだ決まっていません。
[キャパシティービルディング]
途上国に対する人材育成や研修支援。
[資金]
上記の途上国支援のために先進国が拠出する資金。2010年に1000億ドルを約束しているが、あまりに高額なためにどのように集めるか未定です。
[損失と被害]
気候変動に適応可能な範囲を超えて発生した途上国の損失・被害に対して先進国が救済・補填すること。COP19で基本合意しているが、具体的な運用方法は未定です。
未解決の難題
(1) 「共通だが差異のある責任」の原則
 京都議定書では温室効果ガスの削減義務を負わなかった途上国が、今度の枠組では削減義務を負うことになりますが、これに関して「差異のある責任」の明示を求めている途上国と、京都議定書時代の先進国/途上国の二分化は無意味であるとする先進国では資金支援義務を巡って対立しています。

(2) 気温上昇2℃目標に足らぬ削減量
 現在、主要国から出ている目標(付表参照)では気温上昇2℃目標に必要な削減量の半分程度しか満たしていません。COP21までに各国が削減量を大幅に上げる見込みも乏しいため、合意書自体に「削減量引き上げメカニズム」を盛り込む案も出ています。
長期的な国際合意を目指して

 各国が約束する目標は2025年もしくは2030年に達成することを前提として議論されていますが、その次の目標を決める「改訂の仕組」を盛り込み、PDCAサイクルをして長期的に運用することが提案されています。また、各国の目標は自主的に決定することから、目標達成に対する法的拘束力をどの程度持たせるか予断はできません。

 COP21(2015年12月)迄間があるので、次回は資源に関する話題を提供します。