連載(50) COP21/パリ協定
2016/04/15Intertek News(52号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
COP21(気候変動枠組条約締約国会議第21回会合)は2015年12月12日の夜、2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組「パリ協定」を採択して終了しました。条約に加盟する全ての国(196カ国・地域)が温暖化阻止に踏み出した歴史的な出来事です。この協定の概要は以下の通りです。
1. 長期目標の制定
また、21世紀後半には温室効果ガスの排出を森林・海洋吸収分とバランスさせる実質ゼロ(気候中立)を目指す。
[2℃未満]はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の科学的知見を踏まえCOP16(2010年のカンクン)で合意されたものであり、21世紀後半の[ゼロ目標]は今回新たに加えられたものです。[1.5℃の努力目標]は実現可能かどうかは別として、既に温暖化の被害に苦しむ島嶼国(とうしょこく)・脆弱国の悲痛な叫びを無視できなかったために加筆されたものと思われます。[温室効果ガスの実質ゼロ]は低炭素社会に向かう世界のビジョンを明確にしたものであり、各国のエネルギー政策の基礎となるべきものです。
2. 各国の温室効果ガス削減目標
この目標を「作成」し、国連に「提出」し、これを「保持し続ける」こと、これに必要な「国内措置を実施する」ことの4項目が義務付けられた。
また、5年ごとに提出する新しい目標は古い目標より強化することが明記されている。
現在提示されている多量排出国の目標を付表に示したがこれらが達成できても2℃未満は達成できないことが明らかなことから、5年ごとの見直しで更なる上乗せを求めています。自主目標の考え方は全ての国の参加を促すための前提条件であり、協定からの安易な離脱は許さず、データの透明化と定期的な検証により厳しく評価されることになります。
3. 資金援助、損失と被害
ただし、先進国以外の国も資金援助に参加する。
1000億ドルの数字は残ったものの先進国側の体力の低下から「合意」に至らず法的拘束力のない「決定」に格下げになりました。COP20で提起された温暖化による島嶼国・脆弱国の損失・被害の補償問題に関して、彼らの要求した「気候変動難民対策機構」の設立は見送りとなりました。
4. 二国間クレジット
日本が精力的に進めてきた分野であり、今後は国連のルール下で進めることとなります。
5. 発効要件
米国議会が批准するかどうかも予断を許さない状況であり、米国の批准が協定の発効を左右することになります。
次回は企業の経営に影響を与える可能性のある「ESG(環境・社会的責任・ガバナンス)投資」の動きを紹介します。