連載(54) COP22/脱化石燃料への大転換

2017/04/17Intertek News(56号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 COP22(国連気候変動枠組条約第22回締約国会議)が2016年11月7-12日に開催されました。これに先立ち、11月4日には「パリ協定」 (本誌Vol.52 連載(50) 参照)が協定締結から1年足らずという異例の早さで発効しました。このためCOP22は、パリ協定第1回締約国会議(CMA-1)も兼ねることになりました。
1. パリ協定に触発された国際協定
  • 1)国際航空機のCO2排出規制
    2020年以降の新設計航空機及び2023年以降に引き渡される製造中の航空機に適用されるCO2排出規制が決まりました。
  • 2)モントリオール議定書の改正
    これまで規制されていないHFC(ハイドロフロロカーボン)を段階的に削減することになりました。(先進国は2019年から削減を始め、2036年には85%削減)
2. COP22で決まったこと
  • 1)パリで培われた政治的意志が確認され、「マラケシュ行動宣言(付表)」に反映されました。政府以外の様々な団体に参加と協力を求めました。
  • 2)パリ協定の実施規則の交渉計画と当面の作業工程を決定しました。実施規則そのものはCOP24で採択されます。
  • 3)2020年からのパリ協定の本格始動に向けて各国はGHG(温室効果ガス)の削減目標を提出しますが、これに伴ってより高い目標値に引き上げる「促進的対話」を始めます。
  • 4)途上国に技術・資金を援助して途上国のGHG削減の寄与分を自国の目標達成に利用することが一定の国際ルールに従うことを前提に認められました。
3. 非政府組織の活躍

 企業、自治体、投資家、NPOが多数のイベント・プレゼンテ―ションを催し、脱炭素化へのうねりを広げました。以下はその一例です。

  • 1)「RE100」グループ
    使用エネルギーを化石燃料から100%再生エネルギーに転換することを目指す企業グループの拡大(アップル、グーグル、GM、HP、コカ・コーラ等80社)
  • 2)「世界大都市気候先導グループ」
    気候変動対策に関する知識共有を図り、部門別に20のネットワークを構築。参加86都市、関係人口は6億人。
  • 3)「ESG責任投資グループ」
    世界の主要金融機関は、化石燃料資産は「座礁資産」(負の資産)であり、今やリスク要因であるとして石油精製会社からの資金引き揚げを通告。
4. 歴史的転換を迎えた地球の温暖化

 196ヵ国もの国とEUが次世代の人々のために、自らを制する目標を立てて、実行するために手を結んだのがCOP21のパリ協定であり、そこで生まれた勢いを維持し、脱化石燃料へ動き出したのがCOP22です。この大転換を可能にする背景には再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電のコストが化石燃料の発電コストより低くなることが確実になったこと、これまでの「先進国対途上国」の対立がなくなり、中国やブラジル、インド等が主導する「南南協力体制」が生まれたことがあります。この大きなうねりはもはやトランプ大統領でも止められないと関係者は見ています。

 このような転換期に何をすべきか次の機会に改めて考えてみましょう。