連載(55) SDGsへの企業行動指針
2017/07/17Intertek News(57号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
ESG(環境・社会・ガバナンス)課題として示されたグローバル目標SDGs(持続可能な開発目標)への企業取組み指針である「SDGコンパス」について解説します。
1. SDGsとは(復習)
企業の事業活動の目的については、リーマンショックを機に短期的な「利益追求」から中長期的な視点での「価値創造」に変わりました。「価値創造」とは、企業活動により社会に幸福をもたらすこと、及び/又は現存する環境や社会問題への解決に寄与することです。
国連は「国連責任投資原則」を発表し、機関投資家に対し、投資先にESG(環境、社会、ガバナンス)課題の実践を要請することを要求し、同意のサインを求めました。2014年には日本においても、金融庁により日本版スチュワードシップ・コードが策定され、ESGへの取組みの重要性が認識されるようになりました。
一方、国連は低開発国向けのMDG(ミレニアム開発)の成果を背景に対象を全世界に広げ、2030年の達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)として17項目の目標と169のターゲット(個別目標)を設定しました。この中には「地球環境の破滅的状況からの回避」「貧困の撲滅と格差の是正」「すべての人々の水と衛生の利用」「持続可能な経済の発展と働きがいのある雇用」等の今日的な問題も含んでいます。
2. SDGsコンパス
「SDGsコンパス」が環境省のホームページに発行されていて、次のような企業の取組みの5つのステップが示されています。
・優先課題を決定する
・ベースライン(基準年等)を決定し、目標を設定する
・SDGsへの企業のコミットメントを公表する
・バリューチェーン等をパートナーシップに取り込み、実行する
特に注目することは、STEP.2のバリューチェーン全体を通して現在及び将来の正及び負の影響を評価し、優先的に取り組む課題を決定すること、及びSTEP.5の活動成果を利害関係者に報告することです。
「バリューチェーン」とは「原材料の採掘からサプライヤー、調達・物流、操業、販売・配送、製品使用、製品廃棄に至る関係者の全体」であり、「正及び負の影響を評価する」とは環境の分野では「ライフサイクルの視点で環境側面及びその影響を評価する」と同じ意味になります。「利害関係者への報告」は情報開示や国際的に認知された報告様式に関連して説明を要する部分ですが、またの機会にします。
以上の一連の流れはISO14001での取り組みと同じであることに気づきます。もっと言えば、EMSの運用はSDGsに取り組む企業が増えていることからSDGs運用の中で行われるようになるかもしれません。
次回は急速に変わりつつある「環境側面」について考えてみます。