連載(56) 環境側面(1)

2017/10/16Intertek News(58号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 環境側面とは「環境に影響を与える活動・サービス・製品の要素」であり、これらに取り組み、或いはこれらを管理することが利害関係者から求められています。ISO14001は管理すべき事項を以下のように示しています。

・持続可能な資源の利用
・環境汚染の予防
・気候変動の緩和と適応
・生物多様性と生態系の保護

1. 持続可能な資源の利用

 資源は世界の人口70億人を支えるのに十分でなく、とりわけ金属資源、森林資源、水資源が危機的な状況にあります。
 鉄、アルミ、マグネシウムを除いて殆どの金属は品位が低く、採掘時に膨大な廃棄岩石が、また選鉱時には大量の汚泥が排出され、そのまま放置・放流されて大規模な環境破壊を引き起こしています。また、木材やパルプ用に違法な伐採や、パーム油工場や牧草地への転換のために、貴重な酸素供給源である熱帯雨林の消失が続いています。さらに、水資源については、地下水を農業用の水源としている地域が多いため慢性的な不足状態にあります。比較的水に恵まれている日本は食料の輸入が多いために食料生産に必要な水需要が少ないだけで、食料自給率を大幅に上げる余裕はありません。

2. 汚染の予防
 様々な種類の汚染物質又は廃棄物の意図しない発生・排出は回避すること、又は定常的な発生排出を管理することを「汚染の予防」と言います。これには代替材料、代替エネルギーの利用、再利用、回収、再生が含まれます。
 最近は、電力購入先を自由に選ぶことが可能になり、CO2排出係数の小さい電力や自然エネルギーだけの電力を購入することが可能になりました。
3. 気候変動の緩和と適応
 気候変動について、今年の夏は猛暑と豪雨が猛威を奮いました。気温上昇がまだ0.6℃程度なのに、2℃迄上がったらどのような状態になるか、想像できません。
 一刻も猶予できない状況にあり、異次元のドラスティックなCO2の排出抑制策が必要です。CO2の排出を抑制しても気温の上昇による悪影響は避けられないことから、環境省は2015年7月に以下のような緊急に対応すべき分野を発表しました。
  • ・水稲、果樹の生育時期変動
  • ・無降水日数の増加及び渇水増
  • ・植生分布、野生鳥獣分布の変化
  • ・大雨、突風、大型台風増への対応
  • ・熱中症、感染症への対応
  • ・生産活動、レジャーへの影響
  • ・物流、鉄道、港湾、空港、道路、水道インフラ等の補強対応
4. 生物多様性と生態系の保護

 私たちは、酸素供給や穏やかな気候、食物、建設資材等の供給を生態系サービスから受けて、健康に生き、豊かな文化を享受してきました。しかし、その生態系が徐々に破壊されてきています、これ以上の破壊が進まないように私たちがやるべきことはないでしょうか。以下のことを考えてみましょう。

  • ・認証を受けた森林や漁場、生産者の顔がわかる確かな原材料と輸送トレーサビリティーの確保。地産地消。
  • ・敷地内、作業所内の動植物調査と保護、一時疎開
  • ・海外、遠隔地からの受け入れ荷物の検査(外来生物の侵入阻止)
  • ・外来生物の駆除

 さて、次のステップでは、上記の4つの取組み分野について、ライフサイクルアセスメントを考慮して、直接影響・間接影響を問わず、広く環境側面を洗い出すわけですが、ここからは次回お話しします。