連載(57) 環境側面(2)-ライフサイクルの視点を考慮する-
2018/01/15Intertek News(59号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
1. ライフサイクルアセスメントとは
ライフサイクルとは原材料取得から生産、配送、使用を経て使用後の処分に至る製品の一生を表す概念で、ライフサイクル全体を通してのインプット・アウトプットの特定及びそれらの環境影響評価をライフサイクルアセスメント(LCA)と言います。
地球環境の視点からは、例えば製造会社の場合、自社が受け持つ製造活動の環境負荷だけを考えていれば良いのではなく、ライフサイクルの上流にある原材料採取から下流側にある製品の配送や製品の使用、さらには使用後の処分に至る全ての段階での環境負荷を調査して、ライフサイクル全体で環境負荷を低減することが求められています。
2. ISO14001が求めていること
LCAの方法についてはISO14040及びそのシリーズ規格によりLCA実施の手順が示されています。当然ながら、製品構成部品の数や、注目する環境負荷の種類(例えば、CO2排出量、NOx・PM排出量、水資源使用量、金属・木材資源の使用量、海産物使用量等)により評価対象が広がり、LCAの実施は煩雑で困難な作業を伴います。そのため、「ライフサイクル思考(LCT)」という広い意味の用語も使われています。これには、「環境配慮設計」や「カーボンフットプリント」を含むようです。
ISO14001では「ライフサイクルの視点」という語を用い、詳細なLCAを要求するのではなく、組織が管理できる、又は影響を及ぼすことができるライフサイクルの各段階で、注意深く考えることを求めています。「注意深く」とは、関連するライフサイクルの段階に存在する森林破壊等の重大な環境問題を見逃さないようにということです。
3. ライフサイクルの視点で配慮すべきこと
製造会社が配慮すべき事項を例示してみます。
- ⑴製品の設計段階で以下の事項が配慮されていること。
- ・製品の配送時の輸送効率を上げるための製品のサイズ最小化、積載効率を上げるための形状最適化。
- ・製品使用時の使用エネルギーが少ないこと。耐久性が高いこと。
- ・製品使用後の解体容易化、リサイクル処分容易化。
- ・製品に有害物質を含まないこと。
- ⑵原材料の購買段階で確認すべきこと。
- ・採取場(鉱山、森林、漁場)が適切(合法、認証されている)であること。
- ・採取場から自社へのトレーサビリティーが明確であること。
- ⑶化学物質含有情報が明確に示されていること。
- ・原材料に含有する化学物質情報が明確であること。
- ・製品に含有する化学物質の情報が使用段階及び使用後処理の段階に伝達されていること。
- ⑷環境負荷が少なくなる最適使用条件が伝達されていること。
- ⑸使用状況データが製造者にフィードバックされること。
このようなライフサイクルを通しての管理が要求されるようになった背景としてCSR(社会的責任)の広がりがあります。特にライフサイクルの上流で起こる森林破壊や鉱物採掘残渣による汚染を防ぐこと、ライフサイクルの最終段階で行われるリサイクル活動を支援するという社会的要求によるものです。また、リサイクルに焦点が当てられていることは、資源の枯渇が益々深刻になってきていること意味しているのではないでしょうか。
次回は「環境側面」の第3弾として「紙、ごみ、電気」について概説します。