連載(58) COP23/始まった脱炭素社会へのイノベーション
2018/04/16Intertek News(60号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
COP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)が2017年11月6-17日にドイツのボンで開催されました。参加者の報告を通してこれまでの経緯を含めて解説します。
1. COP21、COP22
2015年のCOP21では条約に加盟する全ての国(196カ国とEU)が2020年からの地球温暖化対策の新たな枠組条約に調印しました。
その中で、
- -気温上昇を2℃よりも十分低く、1.5℃未満も努力する
- -そのために温室効果ガスの排出について、実質ゼロを目指す
- -途上国を含む全ての国が自主目標を提出し、5年毎に更新する
-
こと等を取り決めました。(パリ協定)
その1年後のCOP22ではパリ協定の意志が確認され、更に市民社会、民間部門、金融機関、都市等の非国家組織の協力・参加の呼びかけが正式に行われました。
2. COP23
政府関係者による交渉と非国家組織によるイベントが並行して進められました。
- 1)パリ協定を運用するルールブックの枠組みが決まりました。 長期計画策定、進捗状況確認、5年毎の約束(目標)提出・更新、2年毎の温室効果ガス排出量報告・審査等の確認のルールを、2018年12月のCOP24で採択するため、精力的に対話を継続することになりました。
- 2)米国が2017年6月に離脱表明しましたが、ルール上2020年11月迄脱退できないため、再参加含みで活動を続ける意向です。
- 3)温暖化の影響を強く受ける途上国にとって、「適応資金」や2020年迄の「先進国の努力」は懸念材料であり、この議論に多くの時間を要しました。今後も米国の基金不払い宣言絡みで問題が続くかもしれません。
- 4)非国家組織(市民社会、民間企業、金融機関、都市)による活動として、政府関係者への説得活動や自組織の活動アピール等が精力的に行われました。COP23参加者から以下の情報が伝えられています。
- -日本が石炭火力を国内・国外に広めていることに対する懸念と技術大国日本が自然エネルギーに関する技術イノベーションの埒外にいることに対する失望が広がっていること。また、投資家グループが日本企業と話したが変化が見られないため、投資を撤退せざるを得ないと発言していること。
- -RE100(自然エネルギー100%を目指す組織)の登録組織が100件を超え、年内に200件を超す見込みであること。EV100(自社品の輸送にEV使用100%を目指す組織)が発足したこと。
- -C40(世界大都市気候先導グループ)の25都市が2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)を目指すこと、など。
更に、各国のブースでは自然エネルギーに関する商談を進めるビジネスマンで活況を呈していたとのことです。
今や、全世界は益々悪化する地球環境に対して人類史上なかった団結で対処しようとしています。この流れは大きなイノベーションをもたらし、資金の流れを変えつつあるのに、日本はそのチャンスを見逃しているように思います。地球温暖化の阻止という大義に個人として、組織として関わることこそ明日への展望を開くことになるのではないでしょうか。
今回は予定を変更して「COP23」を取り上げましたので、次回は今号にて予定していました「環境側面」の第3弾、「紙、ごみ、電気」について概説します。