連載(59) 環境側面(3)-紙・ゴミ・電気(その1 紙)-

2018/07/16Intertek News(61号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 「紙・ゴミ・電気」と言えば、ISO14001の世界では活動が停滞している組織を揶揄して、その陳腐な取組みテーマを示すことが多いようです。実際、「裏紙を再利用する」「廃棄物を削減する」「無駄な電気を消す」だけでは行き詰まってしまうでしょう。今回、敢えてこのテーマを取り上げたのは「紙・ゴミ・電気」の分野は大きな変動期にあり、これらへの取組みが重要になってきているからです。

1. 紙使用の低減

 社内の通達や連絡事項の電子メール化は当然のこと、会議資料や報告書の類も電子ファイルで作成し、PCやタブレットで読み取ることで、印刷用紙を削減することが進んでいます。これにより印刷コストが削減され、電子ファイルで保管することになり、オフィスの整理・整頓が進むと共に、次のようなメリットが見込まれます。

  • ・スマホ等の通信手段の活用と合わせ、出張先や訪問先からの報告・連絡・相談が可能となります。また、意思決定者はいつでもどこからでも書類を閲覧できるので意思決定が早くなり、担当者は次なる行動を早めることができます。
  • ・供給者や顧客の理解を得て、注文書や仕様書、試験成績書、送り状を電子化することにより、社内管理システムにデータを取り込み、注文・製造・検査・配送までの一貫管理が可能になります。また、伝達ミスや書類間の転記ミスをなくすことができます。

 一方、ペーパーレス化によるデメリットも考慮する必要があります。

  • ・画面の大きさにより見易さが左右されるので、簡潔な文章表現が必要です。
  • ・セキュリティーの確保が重要になります。
  • ・IT能力の向上が必要になります。

 今後、ペーパーレス化は社会全体で進んでいくことが予想されますので、必要な対策は早めに対応し、慣れることが重要と思います。
2. サプライチェーン管理の重要性

 紙の使用で注意すべきことは、その原料の一部が東南アジア、南米、オーストラリアの熱帯林に依存していること、その熱帯林の大規模な破壊が未だに止まらないことです。熱帯林は全地球の酸素供給量の半分を受け持っていること、多様な動植物を育んでいる点で、地球生命の維持装置と言うこともできるでしょう。
欧州や米国では木材の輸入に厳しい規制をかけているため、違法に伐採された木材は、丸太・建材・家具材・パルプとして専ら、中国・日本・ベトナムに流れていると言われています。
 原料の木材やパルプが適切な計画の下で伐採されたものであることを確認する必要があります。そのためには、第三者が検証した森林経営で得た木材であり、かつ、全輸送工程のトレーサビリティーが確保されていることの認証を取得することが重要です。認証のない紙製品は、例え、それが機械の取り扱い説明書であっても、機械自体の輸出が困難になる可能性があります。また、官公庁の公的な印刷物に認証のある紙の使用が要求されることもあります。
 認証マークは様々あるようですが、世界で通用するマークはFSC®とPEFCの二つです。FSC®マークについてはインターテック・サーティフィケーションにて取り扱っておりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

次回は「紙・ゴミ・電気」の第2弾として「ゴミ(廃棄物)」の動向を概説します。