連載(60) 環境側面(3)-紙・ゴミ・電気(その2 ゴミ)-
2018/10/15Intertek News(62号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
ゴミ、即ち「廃棄物」が環境に与える主なケースとして以下の「リスク・機会」を想定し、それらに対する取り組みを考えてみます。
- ①廃棄物処理の不法投棄による環境汚染や環境破壊
- ②廃棄物の焼却処理で発生する大気汚染
- ③廃棄物の再資源化による資源の保護
1. 不法投棄に対する取り組み
法は下記のことを要求しています。
- ⑴都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処分業者であることを確認し、契約書を交わすこと。
- ⑵管理票(マニフェスト)を発行し、廃棄物処理フローの段階毎の実施完了を示す伝票の返還管理をすること。
- ⑶委託先の処分業者が委託廃棄物を適切に処分していることを実地確認すること。これは、廃棄物処理法上は「努力義務」ですが、条例で義務付けている自治体もあります。また「排出者責任原則」に基づいて自主的に追跡確認している組織も少なくないと思います。
これらの努力で不法投棄は重量ベースで20年前の15分の1程度に減少しています。
2. 焼却処理による大気汚染を防止する取り組み
問題になったのはダイオキシンで、欧米の廃棄物処理の主流が「埋め立て」であるのに対し、日本は焼却が主流だったために日本を覆う大気中のダイオキシン濃度が際立って高かった時期があります。ベトナム戦争で使用された枯葉剤に含まれていたダイオキシンと奇形との関係が取りざたされたことが、その後のダイオキシン対策に影響したように思います。
「ダイオキシン類対策特別措置法」の制定や「廃棄物処理法」の改正でダイオキシンの耐容一日摂取量基準や大気・水系への排出基準、焼却炉の構造基準が制定され、世界に類を見ない完璧なダイオキシン対策を備えた巨大な焼却炉が次々に建設されました。しかし、近年、焼却廃棄物の量が減少しているため、連続運転の維持に苦労しているか、取りやめている焼却炉が多いと聞いています。燃焼温度の維持が重要であるなら、連続運転可能な量を確保する広域収集システムの改善や産廃処理と一般廃棄物処理の共同運用に向けた改善が必要でしょう。そして何よりも、有機系廃棄物の堆肥化等で、再資源化することが重要と思います。
3. 再生資源化を進める取り組み
企業や一般家庭は廃棄物を分別することにより、再生資源(資源ごみ)の増加に努めてきました。その結果、2016年の一般廃棄物の再資源化率は20.3%であることが発表されています。(平成30年環境白書)
20年前の再資源化率は13%程度であったので、改善されてきたと言えるでしょう。しかしながら、世界の人口が今世紀末に90~100億人に達すること、環境を破壊することなく、これまでのコストで入手することを考慮すると、入手可能な資源はほとんどないことに気づきます。再資源化率を飛躍的に上げる必要があるでしょう。そんな状況下で日本の再資源化ビジネスに影響を与えるかもしれない動きがありました。
- ⑴ 中国が廃棄物の輸入を規制すること
2017年8月に発表され、日本から輸出していた使用済みプラスチック、破砕PETボトル、電気製品由来ダスト、未選別古紙、廃繊維、廃金属等年間数百万トンに及ぶ廃棄物が行き場を失って国内にあふれ出した模様です。再生資源化事業の一角が中国依存であったことが露呈したわけですが、この際、日本国内での再生資源利用事業の確立を期待したいところです。 - ⑵ 欧州発のサーキュレートエコノミー宣言
2015年12月にEU委員会が発表したもので、既に英国規格が指針として発行されています。製品供給量を絞り、ライフサイクルの各ステージでリサイクルを実施し、シェアリング・リースを含む経済システムを構築することが狙いで、法規制、品質規格、技術革新に影響が及ぶとしています。
次回は「サーキュラーエコノミー」の全容を説明します。