連載(61) 環境側面(3)-紙・ゴミ・電気(その3 ゴミ②:サーキュラーエコノミー)-
2019/01/15Intertek News(63号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
前回は「紙・ゴミ・電気」シリーズのゴミ(廃棄物)の説明で欧州発の「サーキュラーエコノミー(以後CEと略す)」について言及しました。今回はその内容について少し説明をします。
1. これまでの循環型社会との相違
日本では2000年には「循環型社会形成基本法」が制定されていて、循環型社会の在り方がほぼ以下の通りに固まったように思われます。
- ・原料採取から材料製造を経て製品を製造し、流通を経て消費者に渡り、使用済み製品となって処分される直線型のライフサイクルを想定
- ・「使用済み製品」の処分方法の優先順位は、廃棄抑制>再利用>再生利用>熱回収>適正処分
これに対し、一般社団法人サステイナビリティ技術設計機構 代表理事の原田幸明氏は、CEの概要を付図のように表し、ライフサイクルのすべてのステージから循環ループが幾重にも出ていることを示しています。CEでも「再利用」が優先されますが、同じ製品に再利用できない部品は別の製品で利用することも検討されます。主原材料に戻す(リサイクル)より、リフィル(詰め替え)、リファビッシュ(磨き直し)、リマニュファクチュア(再製造)が重要視され、更にはシェアリング(共有)、リペア(修理)、リース(借用)もCEに含まれます。
2. BS8001:2017の発行
英国規格協会がBS8001:2017をサーキュラーエコノミーの実践ガイドとして発行しました。以下の6つの原理を提示しています。
- ①システムシンキング:組織が活動する際にはCEループ全体にどのような影響を及ぼすか考慮する
- ②イノベーション:生産性やサービス、ビジネスモデルの設計を通して持続可能な資源管理の価値創造を革新する
- ③スチュワードシップ:組織は製品の誕生から終末まで直接的、間接的に責任を負う
- ④コラボレーション:組織は相互の価値創造のために供給者/顧客、政府、学校、市民社会、消費者と積極的に共同研究や作業を行う
- ⑤価値の最大化:組織は全ての段階で製品・成分・材料の最大価値を維持する
- ⑥透明性:組織は次の循環への展開と運用を継続する能力に影響を与える活動を行った場合は適時、正確かつ明確に、正直にそれらの情報を開示する
これらから言えることは、事業者は大量生産/大量消費を前提の企業戦略から循環使用を前提に製品価値を創造する企業戦略への転換が求められ、消費者は家具・家財を持たずに、必要時、必要なサービスを受ける価値観への切り替えが求められます。
また、BS8001:2017はCEで実行されるビジネスモデルを例示しています。人と物との関係、製造と消費の関係に大きな変革をもたらすことを示している内容です。機会があれば取り挙げたいと思います。
次回は「電気(電力)」について解説します。