連載(62) 環境側面(3)-紙・ゴミ・電気(その4 電気)-

2019/04/12Intertek News(64号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

1. 省エネ活動と電気

 電力は身近なエネルギー源であり、各企業では古くから省エネ活動の代表格として事務所や工場の電力削減への取組みが行われてきました。その活動は「空調の温度管理」や「照明のLED化」「省エネ設備への更新」等多岐に渡り、大きな成果を上げてきました。福島の原発事故を契機に全国54基の原発が停止に追い込まれた際に、2年半もの間をさしたる混乱なしに乗り切ることができたことは省エネ活動の成果があってのことです。

2. 福島の原発事故の影響/再生可能エネルギーへの転換

 福島の原発事故は全世界に衝撃を与え、ドイツを始め、中国、インド、米国の再生可能エネルギー(以後「再エネ」と略す)の開発・展開を促しました。2014年に英国ロンドンに設立された再エネ100%をめざす企業連合(「RE100」)が2019年3月時点で166社に達しました。「再エネ」とは太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスによるエネルギーで、世界中で急速に伸びており、その発電量は原子力発電の2.5倍に達しています。再エネがこれほど急速に発展した主因は技術の飛躍的な向上です。特に中国において顕著で、kWh当たりの発電コスト「3円以下」を実現しています。(付表1) 当然のことながら、世界シェアも60~70%と言われています。
 また、2017年12月のCOP23(国連気候変動枠組条約第23回締約国会議)の開催時に結成された「脱石炭火力連合」は、発足時の27からCOP24では80の国・地域に拡大しました。石炭は炭素の塊ですので、燃焼生成物は100%二酸化炭素で、メタンが主成分のLNG(天然ガス)のほぼ倍量の二酸化炭素を排出します。(付表2) 再エネ100%は約束できないが、二酸化炭素排出量の多い石炭火力のゼロを目指すことに80の国・地域が賛同したということです。日本は賛同しませんでした。

3. 日本の国策/石灰火力

 京都議定書下で一度は停止していた石炭火力の建設計画は、福島の原発事故後に復活し、50基もの計画が乱立し、すでに8基が操業を開始しています。7基が地域住民の反対にあって中止が表明されましたが、35基の計画がなお存在しています。これら50基の石炭火力は、2050年ごろはまだまだ現役であることを考えると、日本が世界に約束した「2050年までに温室効果ガス80%削減」の本気度が疑われても仕方がないと思われます。
 また、金融機関は石炭火力発電所への投資を「リスク」と評価し、資金の引き上げも現実に起きているようです。

4. 電気は「削減」から「賢く使う」へ

 電気自動車やIoTの増加で電気の役割はますます重要になり、決してなくなるものではありません。やみくもに削減するのではなく、「賢く使用する」ことが重要です。そのためには、電力会社の「二酸化炭素排出係数」を調べて二酸化炭素排出ゼロないし排出量の少ない電力を選択すること、空地や屋根のスペースが余っているなら、太陽光発電の設置を検討するなどで自社に帰属する二酸化炭素排出を削減することが可能です。

 次回は、2018年12月に開催されたCOP24の概要を説明します。