連載(7) 法的要求事項及びその他の要求事項

2005/07/15Intertek News(9号)

環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko

 前回は特別編として「ISO14001改定のポイント」を話しましたが、今回から再びISO14001要素の解説に戻り、「法的要求事項及びその他の要求事項」についてお話します。

「法的」とは法律とそれに伴う政令や規則、地方条例を意味します。「その他」とは公的機関との合意、規制以外の指針、業界団体の要求事項、地域社会又はNGOとの合意、組織又は親組織のコミットメント、さらに自発的な行動規範や環境ラベル等も含みます。「要求事項」とはそれらが組織に要求する具体的な事項を意味します。

 ISO14001では法的要求事項と組織が合意するその他の要求事項(以後「法規制等」と略す)は以下のように取り扱われます。
  • ● 環境方針の中で――法規制の順守を約束する。
  • ● 計画の段階或いは初期調査の中で――法規制等を特定し、評価する。
  • ● マネジメントシステムのあらゆる(構築、実施、維持)段階で――法規制の順守を考慮する。
  • ● 点検事項として――法規制等の順守状況を定期的にチェックする。
  • ● マネジメント会議で――前期法規制順守を確認した記録を再度確認する。法規制等の動向や関連情報を確認する。

 法規制等の順守が環境方針で示される約束の一つであることは、これがEMSを構築し、運用する目的の一つであることを意味するものです。法規制等の特定とは、組織に適用される法規制等の名称を列挙するだけで不十分です。たとえば、産業廃棄物の廃棄排出業者は廃掃法に基づいて行う、処理業者との契約やマニュフェストの発行、その戻りの管理、排出量の把握と報告など漏れなく拾い上げることが必要です。漏れなく特定することで法規制等を順守が可能となるからです。要求事項はリストに登録され、それぞれの要求事項がどの部門のどの設備、或いはどの活動要素に適用されるか関係付けます。これにより要求事項を実行する担当者と責任者を明確にすることが出来ます。
 ところで、法規制の中には事業者の責任として努力目標的なもの、精神論的な事項が少なくありません。これらの要求事項をどのように適用するかは組織の裁量に任されていると考えてよいでしょう。

 次に法規制情報の最新化ですが、この要求は環境法規のように目まぐるしく変化する昨今では特に重要であり、特定した法規の改定や関連規則の制定をインターネット等でフォローする必要があります。これらはEMSを維持するための前提であり、マネジメントレビュー会議の入力情報の一つでもあります。
 さらに、法規制等の順守状況は定期的に確認される必要があります。これは担当者が法規制を順守していることを「他の誰か」が定期的に確認するという意味です。「他の誰か」とは内部監査員でもよいし、部門責任者や管理責任者であってもよく、いずれにしても手順として確立していること、確認した記録を残すこと、さらにその記録がマネジメントレビューに提出され、確認されることが求められております。

 このようにして法規制はISO14001の中で自発的に順守されることが求められており、同時にこれが組織の社会的責任を果たす重要な要件といってもよいでしょう。

 次回は「コミュニケーション」について解説します。