連載(87) 持続可能な開発目標(SDGs)の行方
2025/07/18Intertek News(89号)
環境主任審査員 郷古 宣昭 Nobuaki Goko
国連が2024年6月に公表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告2024」によると、日本の目標達成度の順位は167ヵ国中18位で、17項目の目標中で「ジェンダーの平等」「気候変動対策」など5つの目標が最低ランクと判定されました。
世界全体のSDGsの達成度は17目標の下に設定された169のターゲットで予定通り進んでいるのは17%にすぎず、2030年目標の達成に遠く及びません。
国連未来サミット
2024年9月22・23日、国連本部でSDGs等の国際公約の進捗遅れの回復と新たな課題対応を目的に、各国の首脳による「国連未来サミット」が開催され、5章56行動からなる「未来のための協定」と2つの付属文書が採択されました。
⑴未来のための協定
- ①持続可能な開発(SDGs)のための資金調達と目標実施 [行動1~12]
2030年目標を再確認して加速する。特に、貧困・飢餓の撲滅、ジェンダーの平等、気候変動への対処、資源の再利用、開発途上国の資金不足を解消する。2030年以降の持続可能な開発の進め方も検討する。 - ②国際平和と安全[行動13~27]
平和で公正な社会の構築・維持の努力を倍にして紛争の根本原因に対処し、平和な未来、核兵器のない世界をめざす。武力紛争下の市民を保護する。 - ③科学・技術・イノベーション(STI)、デジタル協力[行動28~33]
STIやデジタル協力を人権の享有やジェンダーの平等と女性と女児の生活改善に活用する。 - ④若者及び将来世代[行動34~37]
若者の人権を保護・尊重・社会的包摂を促進する。国際レベルで若者の自発的参加を強化する。 - ⑤グローバル・ガバナンスの変革[行動38~56]
安全保障理事会をより代表的で包摂的、高い透明性、効率的であるように改善する。途上国支援や気候変動対策のための国際金融設計を改善強化する。
すべての行動を実施する際には人権やジェンダー、持続可能な開発に留意する。
⑵ 付属文書1 「将来世代に関する宣言」
現在世代の決定・行動・不作為が将来世代に影響することを認識し、将来世代のニーズと利益を守る責任を持って長期計画を行う。前向きな変革の担い手を養成する。
⑶ 付属文書2「グローバル・デジタル・コンパクト」
途上国支援のためのデジタル格差の解消、安全なデジタル空間の管理育成、AIの国際的な管理が必要。国連にAIに関する「独立国際科学パネル」を設置する。
サミット後の今後の展開
- ⑴2019年9月のSDGsサミットでもSDGsの進捗の遅れを取り戻すための特別行動が提起されましたが、状況は益々厳しくなっています。しかし、今回は綿密な現状分析と130ヵ国以上の首脳の審議を経て採択された「未来のための協定」があります。これを着実に実行することで目標達成は可能と信じます。
- ⑵日本が提案した「ウェルビーイング」については、現行の2030年目標完全達成後のSDGs運営指標の一つとして検討することになりました。