気候変動を配慮したマネジメントシステム規格の追補について
気候変動を配慮したマネジメントシステム規格の改正について(追補版発行)
2024年2月23日ISOマネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」を追加する追補改正が行われました。ISO 14001などの環境マネジメントシステムを認証している組織だけでなく、ISO 9001などを含む30以上の規格が対象となっており、2025年より正式運用が要求されています。
以下解説と関連情報についてご紹介いたします。
◆ 気候変動を配慮することになった背景
2015年国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では気温上昇を抑制することを目標といたしました。ISO(国際標準化機構)は、この目標を達成することを支援するために気候変動調査の結果に沿って規格へ反映することを決定しました。
気候変動をマネジメントシステムに組み入れるために、IAF(国際認定フォーラム)とISOは、マネジメントシステム規格(MSS: Management System Standards)の追補について共同声明を発表し、マネジメントシステムの組織の状況において考慮すべき事項として気候変動の重要性を強調する2つの新しい記述を導入いたしました。
2つの新しい記述
4.1 組織及びその状況の理解
追補) 組織は気候変動が関連する課題であるかどうかを決定しなければならない。(仮訳文)
The organization shall determine whether climate change is a relevant issue.
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
追補) 注記:関係する利害関係者は気候変動に関連する要求事項をもつことができる。(仮訳文)
NOTE Relevant interested parties can have requirements related to climate change.
ISO 9001:2015 ISO 14001:2015 ISO 45001:2018 ISO/IEC 27001:2022 をはじめ、多くの既存のマネジメントシステム規格に追加され、2024年2月23日現在、開発及び改訂中のすべての現行及び新規のマネジメントシステム規格に含まれることになりました。すでに発行されている規格に優先的に追補されます。
この追補版発行は、気候変動を組織の状況に関連する課題の一つとして明確に考慮することを導入していただくためのものです。この改正は、環境問題への取り組みの重要性の高まりを反映し、マネジメントシステムの認証基準を世界的な持続可能性の目標と整合させるために実施されました。

◆ なぜ今、気候変動は、重要な問題なのか?
1. 環境の持続可能性:
環境の持続可能性を促進する上で、組織が果たす役割は明白です。マネジメントシステム規格に気候変動への配慮を反映することは、責任ある持続可能な業務慣行を推進するというコミットメントを強調するものとなります。この取り組みは、組織活動のあらゆるレベルの積極的な環境の持続可能性を含めることを目的としています。
2. 環境上の緊急事態への適応:
気候変動を組織の重要課題として認識するには、強固な適応戦略の策定が必須となります。これらの戦略は、気候変動に起因する緊急事態を乗り越え、製品とサービスの品質を維持し、従業員の福利を守るために不可欠です。
3. 法規制の遵守:
気候変動をマネジメントシステム基準に反映することは、常に改訂される環境関連法規を反映することとなります。法規制の遵守を維持し、リスクを効果的に管理するには、これらの改訂している法規制に対する認識と適合が不可欠となります。この連携は、環境保護への取り組みを強化するのみでなく、組織が将来の規制上の期待に備えることもできます。
◆ 認証組織にとって推奨される対応
1. 気候変動が自社の業務やマネジメントシステムの目標を達成する能力にどのような影響を与えるかを評価する。
2. 気候変動の影響に対処し、影響を軽減するために、必要に応じて社内プロセスを更新する。
3. 気候変動に関する情報を定期的に監視し、そのような情報と組織の状況との関連性を評価する。
◆ 改正による運用、審査への影響
IAFとUKAS(認定機関)(=インターテックの上位機関)は、2025年の審査において、気候変動の影響がマネジメントシステム運用に関連するにもかかわらず運用していない客観的証拠が確認された場合(概要)、軽微な不適合を提起することを要求しております。
認証組織はマネジメントシステムに取り込み運用開始することを推奨いたします。
◆ 追補版要求事項(気候変動 を含んだ2つの新しい記述)審査開始について
インターテックでは2024年8月1日から新たに作成する審査計画書対象の審査から開始しております。弊社のお客様におかれましては、リーダー審査員から連絡の際にはどうぞよろしくお願いいたします。
気候変動関連FAQ
これまで弊社にいただいたご質問をまとめましたのでご参照ください。
気候変動追補関連-Q&A
Q&A_Intertek News抜粋
※Intertek News掲載分より抜粋(Vol.86~88)
気候変動セミナー情報
気候変動関連セミナーをオンデマンドにて開催しております。
本セミナーは、追補改正による運用、審査への影響を説明し、気候変動をマネジメントシステムに組み入れるためのコースです。昨年実施した気候変動セミナー参加者の声を反映し、より充実した内容になっております。オンデマンド研修のため、何度でも視聴でき、資料のダウンロードも可能、時間と場所を選ばず学べます。
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参照:気候変動関連記事(Intertek Newsより)
お客様向け広報誌「Intertek News」掲載の以下関連記事もご参照ください。
・Vol 87(2025年1月発行)
特集記事「気候変動への対応で持続可能な企業を目指す」
・Vol 86(2024年10月発行)
「社会全体での気候変動課題への対応に向けて ~認証組織と利害関係者に求められる積極的な運用参加~」
・Vol 85(2024年7月発行)
Information:気候変動を配慮したマネジメントシステム規格の改正について(追補版発行)
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