カーボンフットプリント(CFP)とは?企業の取組事例や算定方法を解説!
2025/07/31OTHER
近年、企業の環境問題への取り組みが重要視される中で、「カーボンフットプリント」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、商品やサービスのライフサイクルでどれだけの温室効果ガスを排出するかを「見える化」する仕組みです。この記事では、カーボンフットプリントの基本的な意味から、企業が取り組むメリット、具体的な算定方法、先進的な企業の事例まで、分かりやすく解説していきます。脱炭素社会の実現に向けた重要な指標であるカーボンフットプリントについて、理解を深めていきましょう。
カーボンフットプリント(CFP)とは?
カーボンフットプリント(CFP)は、英語の「Carbon Footprint of Products」の頭文字を取った略称で、直訳すると「炭素の足跡」を意味します。 製品やサービスが、そのライフサイクル全体を通じて排出する温室効果ガスの総量を、二酸化炭素(CO2)の量に換算して表示する仕組みです。
「カーボンフットプリント」が示すもの
「カーボンフットプリント」とは、製品が生まれてからその役目を終えるまでの全工程、つまり原材料の調達から製造、輸送、使用、そして最終的な廃棄やリサイクルに至るまでの一連の流れで、どれだけの環境負荷があったかを追跡することを意味します。 この一連の流れをライフサイクルと呼びます。
ライフサイクルステージ | 具体的な活動の例 |
原材料調達 | 鉱物資源の採掘、農産物の栽培、部品の製造 |
製造 | 製品の加工、組立、工場の稼働 |
流通・販売 | 製品の輸送、倉庫での保管、店舗での販売 |
使用・維持管理 | 製品のエネルギー消費、メンテナンス |
廃棄・リサイクル | 製品の廃棄処理、再利用のための処理 |
このように、目に見えにくい各段階でのCO2排出量を定量的に算出し、ラベルなどを通じて消費者に分かりやすく伝えることが、カーボンフットプリントの大きな特徴です。
なぜ今、注目されているのか?
カーボンフットプリントが世界的に注目される背景には、深刻化する気候変動問題と、それに対する国際的な危機感の高まりがあります。2015年に採択された「パリ協定」を契機に、世界各国で脱炭素化への動きが加速しました。日本でも、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げています。
この目標達成のためには、社会全体でCO2排出量を削減する必要があり、企業の役割は非常に重要です。投資家が企業の将来性を判断する上で環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視する「ESG投資」が拡大していることも、企業がカーボンフットプリントへの対応を急ぐ大きな要因となっています。
LCA(ライフサイクルアセスメント)との違い
カーボンフットプリントとよく似た言葉に、LCA(ライフサイクルアセスメント)があります。LCAは、製品のライフサイクル全体における環境への影響を評価する手法のことです。
LCAが地球温暖化だけでなく、オゾン層の破壊、酸性化、資源の枯渇など、さまざまな環境問題を評価対象とするのに対し、カーボンフットプリントは、その中でも特に地球温暖化の原因となる温室効果ガスに焦点を当てて評価する点に違いがあります。 つまり、カーボンフットプリントは、LCAという大きな枠組みの中の一つのアプローチと位置づけることができます。
企業がカーボンフットプリント(CFP)に取り組むメリット
企業がカーボンフットプリントの算定・公開に取り組むことは、単なる環境貢献活動に留まらず、経営戦略上も多くのメリットをもたらします。

企業価値と競争力の向上
カーボンフットプリントへの取り組みを積極的に情報開示することは、企業の透明性や信頼性を高める上で非常に有効です。環境問題への意識が高い投資家や金融機関からの評価向上につながり、ESG投資を呼び込むきっかけにもなります。また、環境配慮型製品を求める顧客ニーズに応えることで、ブランドイメージの向上や、競合他社との差別化を図ることができ、市場における競争力を高めることにつながります。
サプライチェーン全体での排出量削減
カーボンフットプリントを算定する過程で、自社の事業活動だけでなく、原材料の調達先から製品の廃棄に至るまで、サプライチェーン全体のどこで多くのCO2が排出されているのかを特定できます。 この「排出量の見える化」により、非効率なプロセスや改善すべき点を具体的に把握し、取引先と協力しながら、より効果的な排出量削減策を講じることが可能になります。
消費者や利害関係者への効果的なアピール
算定されたカーボンフットプリントの情報を製品ラベルやウェブサイトなどで公開することで、環境意識の高い消費者が製品を選択する際の重要な判断材料となります。 消費者は、よりCO2排出量の少ない製品を積極的に選ぶという行動を通じて、企業の環境への取り組みを応援することができます。このような消費者とのコミュニケーションは、企業のファンを増やし、長期的な売上向上にも貢献する可能性があります。また、高い環境意識の取り組みによって、企業価値の向上、取引の維持や増加につながる可能性があります。
カーボンフットプリント(CFP)の算定方法
カーボンフットプリントの算定は、国際的な規格であるISO 14067などに準拠して行われます。算定には専門的な知識が必要ですが、ここでは基本的な流れを解説します。
算定の基本的な流れ
算定は、大きく分けて以下の4つのステップで進められます。これは、ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法をベースとしており、各ステップを反復しながら精度を高めていくのが特徴です。
ステップ | 内容 |
1. 目的と算定範囲の設定 | なぜ算定するのか、製品ライフサイクルのどこからどこまでを対象とするかを定義します。 |
2. インベントリ分析 | 設定した範囲内で、投入される資源やエネルギー、排出される環境負荷物質の量をデータとして収集・整理します。 |
3. 影響評価 | インベントリ分析で集めたデータを基に、地球温暖化への影響度(CO2換算排出量)を計算します。 |
4. 解釈 | 影響評価の結果を分析し、結論を導き出すとともに、改善点などを検討します。 |
算定範囲の設定(ライフサイクルステージ)
算定の第一歩は、どこまでの範囲を対象とするかを決めることです。例えば、「原材料調達から生産工場出荷まで」とするのか、「消費者が使用し、廃棄するまで」を含めるのかによって、算定結果は大きく変わります。自社の目的や、製品の特性に応じて適切な範囲を設定することが重要です。
排出量の計算とデータの収集
排出量の計算は、基本的に「活動量 × 排出原単位」という式で求められます。
・活動量:事業活動の規模を示すデータ(例:電力使用量、燃料消費量、輸送距離など)
・排出原単位:活動量あたりの温室効果ガス排出量を示す係数(例:電力1kWhあたりのCO2排出量など)
これらのデータをライフサイクルの各段階で収集し、積み上げていくことで、製品全体のカーボンフットプリントが算定されます。データの収集には、自社での実測値のほか、業界団体が公表しているデータベースや文献などを活用します。
カーボンフットプリント(CFP)の課題と今後の動向
多くのメリットがある一方で、カーボンフットプリントの普及にはいくつかの課題も存在します。

算定における主な課題
最大の課題は、算定に多大な手間とコストがかかる点です。特に、サプライチェーンが複雑に絡み合う製品の場合、上流の取引先から正確なデータを収集することが困難なケースも少なくありません。また、算定ルールの解釈や使用するデータベースによって結果にばらつきが生じる可能性もあり、算定結果の信頼性や比較可能性をいかに担保するかが重要となります。
国内外の制度や規制の動向
世界的に脱炭素化の流れが加速する中、カーボンフットプリントに関する制度化や規制の動きが活発化しています。欧州では、電池や電子機器などを対象に、カーボンフットプリント情報の開示を義務付ける「デジタル製品パスポート」の導入が検討されています。
日本でも、経済産業省が中心となり、算定ルールの標準化やガイドラインの策定を進めています。 今後、特定の製品分野でカーボンフートプリントの表示が義務化される可能性も考えられ、企業にとっては早期の対応が求められます。
【業界別】カーボンフットプリント(CFP)の企業取組事例
国内でも、多くの先進的な企業がカーボンフットプリントの算定と情報公開に取り組んでいます。ここでは、その一部を業界別にご紹介します。
製造業:富士通株式会社の事例
富士通は、一部のサーバー製品においてカーボンフットプリントを算定し、ウェブサイトで公開しています。製品の開発段階から省エネ設計を徹底し、ライフサイクル全体での環境負荷低減に取り組んでおり、その成果を定量的なデータとして示すことで、グリーン調達を重視する法人顧客のニーズに応えています。
小売業:イオン株式会社の事例
イオンは、プライベートブランド「トップバリュー」の一部商品で、カーボンフットプリントの認証マークを表示しています。 2009年には、経済産業省の試行事業に初めて参加し、ツナ缶やポテトチップスなどの商品で表示を実現しました。 消費者にとって身近な商品でCO2排出量を「見える化」することで、環境配慮型消費の普及に貢献しています。
サービス業:日本航空株式会社(JAL)の事例
日本航空(JAL)は、航空輸送サービスにおけるCO2排出量の算定・可視化に取り組んでいます。顧客が航空券を予約する際に、搭乗するフライトのCO2排出量を確認できるサービスを提供しています。また、持続可能な航空燃料(SAF)の活用など、運航におけるCO2削減の取り組みも積極的に進めています。
個人でできるカーボンフットプリント削減への貢献
カーボンフットプリントの削減は、企業の努力だけで実現できるものではありません。私たち一人ひとりの消費行動も重要な役割を担っています。
環境に配慮した製品の選択
スーパーや家電量販店で商品を選ぶ際に、カーボンフットプリントの表示や、エコマークなどの環境ラベルがついた製品を意識して選ぶことは、最も手軽にできる貢献の一つです。一つ一つの選択は小さくても、多くの人が実践することで、社会全体を動かす大きな力となります。
取り組みやすい行動 | 具体例 |
地産地消 | 輸送にかかるエネルギーが少ない地元の産品を購入する。 |
旬の食材を選ぶ | 栽培に必要なエネルギーが少ない旬の野菜や果物を食べる。 |
省エネ製品を選ぶ | エネルギー消費効率の高い家電製品に買い替える。 |
長く使えるものを選ぶ | 使い捨てではなく、修理しながら長く使える製品を選ぶ。 |
ライフスタイルの見直し
日常生活の中で、エネルギーの使い方を見直すこともCO2削減に繋がります。例えば、移動手段を車から公共交通機関や自転車に変える、冷暖房の設定温度を適切に管理する、食品ロスを減らすといった行動が挙げられます。自身の生活の中でどれだけのCO2を排出しているかに関心を持つことが、行動を変える第一歩となります。
まとめ
本記事では、カーボンフットプリントの基本的な概念から、そのメリット、算定方法、国内外の動向、そして私たち個人ができる貢献に至るまで、幅広く解説しました。カーボンフットプリントは、企業と消費者が一体となって脱炭素社会を目指すための重要なコミュニケーションツールです。この仕組みへの理解を深め、自社の事業活動や日々の生活に活かしていくことが、持続可能な未来を築く上で不可欠と言えるでしょう。
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また詳細は、 GHG排出量検証/CFP(カーボンフットプリント)/LCA(ライフサイクルアセスメント)検証 をご参照ください。