FSC®認証とは?仕組みやメリットと取得方法を解説
2025/08/01OTHER
近年、企業の環境活動や社会貢献への関心が高まる中で、「FSC®認証」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。環境に配慮した製品を選ぶ消費者が増えるにつれて、企業にとってFSC®認証への対応は、もはや無視できない要素となりつつあります。
しかし、「FSC®認証とは具体的に何なのか」「自社で取得するメリットは何か」といった疑問をお持ちの担当者様も多いかもしれません。
この記事では、FSC®認証の基本的な定義から、認証の種類、企業が取得するメリット・デメリット、取得までの具体的な流れまで、網羅的に解説します。
FSC®認証とは?持続可能な森林を守る国際的な仕組み
FSC®認証は、単なる環境マークではありません。その背景には、地球規模の森林問題と、未来に豊かな森林資源を受け継いでいくための強い意志があります。まずは、FSC®認証がどのような制度なのか、その基本から理解を深めましょう。
森林破壊の現状とFSC®認証が生まれた背景
私たちの生活は、紙や木材、きのこ、豊かな水など、森林から得られる多くの恵みによって支えられています。しかし、その貴重な森林は、違法な伐採や無計画な農地転換などによって、今もなお世界中で失われ続けています。
このような状況を背景に、「木材を使いながら森を守る」という考え方から生まれたのがFSC(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)です。不買運動のように木材利用を全面的に否定するのではなく、適切に管理されている森林とそうでない森林を明確に区別し、消費者が前者を選択して購入できる仕組みを作るために、1994年に設立されました。
FSC®認証の基本的な定義
FSC®認証とは、環境、社会、経済の観点から、責任ある森林管理を促進するための国際的な制度です。 独立した第三者機関が、FSCが定めた厳格な基準に沿って森林管理や加工・流通過程を審査し、認証します。
消費者は、製品に付与されたFSC®マークを見るだけで、その製品が持続可能な森林資源から作られていることを判別できます。私たちがFSC®認証製品を選ぶことは、適切な森林管理を行う林業者や事業者を支え、世界の森林保全に貢献する行動に繋がるのです。
観点 | 概要 |
環境 | 生物多様性の保全、水資源や土壌、生態系の維持に配慮した森林管理を評価します。 |
社会 | 先住民族や地域社会の権利、労働者の権利を尊重した森林管理を求めます。 |
経済 | 適切な森林管理が経済的にも継続可能であるような仕組みを目指します。 |
FSC®認証の根幹をなす2種類の認証
FSC®認証製品が私たちの手元に届くまでには、「森林の管理」と「加工・流通」という2つの大きな流れがあります。FSC®認証は、このサプライチェーン全体をカバーするために、2種類の認証で構成されています。
認証の種類 | 対象 | 役割 |
FM認証 | 森林(林業者、森林所有者など) | 森林が適切に管理されていることを証明します。 |
CoC認証 | 加工・流通業者(メーカー、印刷会社など) | 認証材が非認証材と混ざらないように管理されていることを証明します。 |
森林そのものを審査する「FM認証」
FM認証(Forest Management Certification)は、「森林管理の認証」です。森林が、FSCの定める「10の原則と70の基準」に基づいて、環境保全の点から適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な形で管理されているかを審査・認証します。
この認証は、林業者や森林所有者、森林組合などが対象となります。FM認証を受けた森林から産出された木材だけが、「FSC®認証材」としてサプライチェーンの次のステップに進むことができます。
加工・流通過程を管理する「CoC認証」
CoC認証(Chain of Custody Certification)は、「加工・流通過程の管理の認証」です。FM認証を受けた森林から産出された木材や紙製品が、加工され、最終製品として消費者の元に届くまでのすべての過程を対象とします。
製材所、メーカー、印刷会社、卸売業者などがこの認証の対象です。CoC認証は、認証材が非認証材や不適格な原材料と混ざることなく、適切に管理されていることを証明する役割を担います。つまり、FM認証とCoC認証の鎖(チェーン)が途切れず繋がっていることではじめて、最終製品にFSCマークを付けることができるのです。
FSC®認証マークの種類とそれぞれの意味
店頭でFSC®マークの付いた製品を見た際に、マークの下に「100%」「ミックス」「リサイクル」といった表記があることに気づくかもしれません。これらは、製品に含まれる原材料の種類を示しており、それぞれに異なる意味があります。
ラベルの種類 | 原材料の内容 |
FSC 100% | FM認証林の原材料が100% |
FSC ミックス | FM認証林の原材料、管理木材、回収原材料の混合 |
FSC リサイクル | 回収原材料が100% |

FSC 100%:認証林からの原料を100%使用
「FSC 100%」ラベルは、その製品に使われている木材や紙の原料が、すべてFSCのFM認証を受けた森林から産出されたものであることを示します。 これは、最も厳格な基準をクリアした製品の証です。
FSC ミックス:認証材や管理木材などを混合
「FSC ミックス」ラベルは、製品にFSC®認証材、FSCが定める基準を満たした「管理木材(Controlled Wood)」、そして回収原材料が一定の割合で含まれていることを示します。
管理木材とは、違法伐採された木材や、人権を侵害して伐採された木材ではないことなどが確認された、リスクの低い原材料のことです。このミックスラベルの仕組みにより、認証材の供給が限られる場合でも、多くの企業がFSC®認証制度に参加しやすくなっています。
FSC リサイクル:回収原材料を100%使用
「FSC リサイクル」ラベルは、製品が使用済みの木材や紙などの回収原材料を100%使用して作られていることを示します。 新たな森林資源を使わずに製品が作られているため、森林保全への貢献度が高いラベルと言えます。
企業がFSC®認証を取得する4つのメリット
FSC®認証の取得は、環境貢献だけでなく、企業経営においても多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介します。

企業のブランド価値と信頼性が向上する
FSC®認証は、世界で最も信頼性の高い森林認証制度の一つとして国際的に広く認知されています。認証を取得し、FSC®マークの付いた製品を提供することは、企業が環境問題や社会問題に真摯に取り組んでいる姿勢を具体的に示すことに繋がります。これにより、環境意識の高い消費者や取引先からの信頼を獲得し、企業全体のブランドイメージ向上に貢献します。
市場における競争力が強化される
近年、国内外の多くの企業が、調達方針の中でFSC®認証製品の利用を優先する動きを強めています。認証を取得することで、こうした企業との新たな取引機会が生まれたり、既存の取引関係を強化したりすることが可能になります。特にグローバルな市場においては、FSC®認証が取引の必須条件となるケースも増えており、企業の競争力を維持・強化する上で重要な要素となります。
SDGs(持続可能な開発目標)へ貢献できる
FSC®認証は、SDGsの17の目標のうち、特に目標15「陸の豊かさも守ろう」に直接的に貢献します。 それだけでなく、貧困、ジェンダー平等、クリーンな水、働きがい、気候変動対策など、合計14の目標と40のターゲットに貢献するとされています。FSC®認証に取り組むことは、企業がSDGs達成に向けた具体的なアクションを起こしていることを社内外に示す有効な手段となります。
サプライチェーンのリスク管理に繋がる
FSC®認証は、原材料が違法伐採されたものではないことを証明する、信頼性の高いトレーサビリティシステムです。認証を取得し、サプライチェーン全体でCoC認証を繋げることにより、コンプライアンス違反や人権問題といったリスクのある木材・紙製品が自社の製品に混入することを防ぎます。これは、企業のレピュテーションリスクを低減し、持続可能な調達体制を構築する上で大きなメリットとなります。
FSC®認証を取得する際のデメリットや注意点
多くのメリットがある一方で、FSC®認証の取得と維持には、コストや手間といった側面も存在します。導入を検討する際には、これらの点も理解しておくことが重要です。

認証取得と維持にコストがかかる
FSC®認証を取得するためには、第三者認証機関による審査を受ける必要があり、審査費用が発生します。また、認証は一度取得すれば終わりではなく、5年間の有効期間中は毎年、維持のための年次監査があり、その都度費用がかかります。これらのコストは、企業の規模や認証の範囲によって異なります。
取得に向けた体制構築と管理の手間が必要
CoC認証を取得する場合、認証材と非認証材を明確に区別して管理するための社内体制を構築する必要があります。具体的には、管理マニュアルの作成、担当者の設置、従業員への教育、仕入れから製造、出荷までの各工程での記録管理などが求められます。これらの管理体制を構築し、継続的に運用していくためには、相応の手間とリソースが必要となります。
FSC®認証の取得にかかる費用
認証にかかる費用は、主に認証機関に支払う審査費用です。費用は、企業の規模(従業員数、木材・紙製品の年間売上高)、事業所の数、管理の複雑さなどによって大きく変動します。
あくまで一般的な目安ですが、小規模な事業者であれば数十万円から、規模が大きくなると百万円以上になる場合もあります。正確な費用については、複数の認証機関に見積もりを依頼して比較検討することをおすすめします。
費用項目 | 概要 | 目安 |
初回審査費用 | 認証取得時に最初に行われる審査の費用です。 | 数十万円〜数百万円 |
年次監査費用 | 認証維持のために毎年行われる監査の費用です。 | 数十万円 |
その他 | コンサルティングを依頼する場合の費用や、社内体制構築のための人件費など。 | - |
国内外でのFSC®認証製品の導入事例
FSC®認証は、すでに私たちの身の回りの多くの製品で活用されています。ここでは、具体的な導入事例を2つ紹介します。
事例1:大手飲食店の紙ストロー
すかいらーくグループでは、プラスチックごみの削減を目指す取り組みの一環として、全国の店舗でFSC®認証を受けた紙製ストローを導入しています。 このように、多くの人が利用する飲食店がFSC®認証製品を採用することは、認証の認知度向上に大きく貢献するとともに、企業の環境に対する姿勢を明確に示す好事例と言えます。
事例2:大学施設の建材としての活用
立命館アジア太平洋大学の教学棟「グリーンコモンズ」は、国内の大学施設として初めてFSCプロジェクト認証を取得しました。 建物の構造材の多くにFSC®認証を受けた木材が使用されており、大学が理念として掲げる持続可能な社会の実現を具現化しています。これは、建材という大規模な木材利用においても、FSC®認証が活用されていることを示す象徴的な事例です。
まとめ:FSC®認証は企業価値と環境貢献を両立する一手
FSC®認証は、責任ある森林管理を世界中に広げるための重要な仕組みです。その取得は、コストや手間がかかる一方で、企業の信頼性や競争力を高め、SDGsへの貢献にも繋がるなど、計り知れない価値をもたらします。 本記事で解説した内容を参考に、FSC®認証への理解を深め、ぜひ貴社の持続可能な事業活動にお役立てください。
持続可能な森林資源の利用を証明したい企業様には、インターテック・ジャパンのFSC® CoC認証サービスをお勧めいたします。認証取得により、FSCラベルの使用が可能となり、環境意識の高い顧客からの信頼獲得につながります。また、管理体制の構築を通じて業務プロセスの効率化も実現できます。紙卸や印刷会社などでの豊富な実績を持つ専門チームが、認証取得まで丁寧にサポートします。
ご興味がございましたら、 お問い合わせフォーム より、お気軽にお問合せください。
また詳細は、 FSC® CoC 認証【森林認証】 をご参照ください。