GRS認証とは?基準やメリット、RCS認証との違いをわかりやすく解説

2025/08/05OTHER

近年、ファッションや日用品など、様々な製品で「サステナブル」「リサイクル」といった言葉を目にする機会が増えました。その中で、製品が正しくリサイクルされた原料から作られていることを示す国際的な認証基準が「GRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)」です。この記事では、GRS認証の基本的な知識から、その目的、認証基準、そして類似した認証との違いまでを分かりやすく解説します。企業のサステナビリティ担当者の方から、環境に配慮した製品を選びたいと考えている消費者の方まで、ぜひご一読ください。

GRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)とは?

GRS(Global Recycled Standard)とは、製品に含まれるリサイクル材の含有量を証明し、その製造工程が環境的・社会的に配慮されていることを保証する国際的な認証プログラムです。信頼性の高い第三者機関が審査を行うことで、消費者は安心してリサイクル製品を手に取ることができます。

リサイクル製品の信頼性を保証する国際的な認証基準

GRS認証は、米国の非営利団体であるテキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)が運営しています。 この認証の最大の特徴は、単にリサイクル原料を使っているというだけでなく、その原料がどこから来て、どのように加工され、最終製品になるまでの一連の流れ(サプライチェーン)全体を追跡・管理している点にあります。さらに、工場で働く人々の人権や労働環境、環境負荷の低減、使用される化学物質の管理といった厳しい基準が設けられており、総合的に「責任ある製品」であることを証明します。

GRS認証が注目される社会的背景

現代社会は、資源の枯渇や廃棄物による環境汚染といった大きな課題に直面しています。特にファッション業界などで問題視される大量生産・大量廃棄からの脱却を目指し、資源を循環させるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行が世界的に急務とされています。このような背景から、リサイクル製品の需要は高まっていますが、同時に「本当にリサイクル素材が使われているのか」「環境に配慮した方法で作られているのか」といった消費者の疑問や不安も生まれています。GRS認証は、こうした疑念に応え、透明性と信頼性を提供することで、リサイクル製品市場の健全な成長を促進する重要な役割を担っています。

GRS認証の目的と企業が取得するメリット

GRS認証は、環境と社会に対する明確な目的を持って策定されています。企業がこの認証を取得することは、コストや手間がかかる一方で、それを上回る多くのメリットをもたらします。

GRS認証が目指す3つの目的

Textile Exchangeは、GRSの目的を以下のように定義しています。
1. 複数のアプリケーションにわたるリサイクル定義の整合性を図ること
2. リサイクル材の使用を追跡し、トレースすること
3. 消費者が十分な情報に基づいて意思決定できるツールを提供すること
これらは、リサイクル製品に関する表示の信頼性を高め、業界全体でリサイクルの利用を促進し、最終的に環境負荷を削減することを目指すものです。

GRS認証のメリット1:信頼性の向上

GRS認証を取得する第一のメリットは、対外的な信頼性の向上です。国際的な基準を満たしていることの証明は、環境意識の高い消費者や取引先からの信頼獲得に直結し、企業や製品のブランド価値を高めます。

GRS認証のメリット2:サプライチェーンの透明化

GRS認証を取得する第ニのメリットは、サプライチェーンの透明化です。認証取得の過程で、原材料の調達から製品化までの全工程を厳しく管理する必要があるため、自社のサプライチェーンにおける潜在的なリスク(人権、環境など)を把握し、改善するきっかけになります。

GRS認証のメリット3:新たなビジネスチャンスの創出

GRS認証を取得する第三のメリットは、新たなビジネスチャンスの創出です。世界的にサステナビリティへの要求が高まる中、GRS認証はグローバル市場へのパスポートとなり、新たな販路拡大やビジネスパートナーシップにつながる可能性があります。

GRS認証の対象と具体的な基準

GRS認証は、非常に広範な製品を対象としており、その基準は多岐にわたります。ここでは、どのような製品が対象となり、いかなる基準をクリアする必要があるのかを具体的に見ていきます。

GRS認証の対象となる製品とは?

GRS認証は、もともと繊維製品を主な対象として開発されましたが、現在では紙、プラスチック、金属など、様々なリサイクル原料を用いた製品に適用が可能です。認証を受けるためには、製品に20%以上のリサイクル原料が含まれている必要があります。ただし、最終製品にGRSロゴを付けて販売するためには、リサイクル原料の含有率が50%以上でなければなりません。

基準1:リサイクル材料の含有率

審査の最初のステップは、製品に使用されているリサイクル材料が、プレコンシューマー材料(製造工程で発生する廃棄物)かポストコンシューマー材料(消費者が使用した後の廃棄物)かを明確にし、その含有率を正確に証明することです。この証明が、認証の根幹となります。

基準2:サプライチェーンの管理(CoC認証)

GRS認証では、リサイクル原料が最終製品になるまでの全ての工程(収集、紡績、縫製、加工など)が認証の対象となります。これをCoC(Chain of Custody:加工流通過程管理)認証と呼びます。認証された原料が、途中で未認証の原料と混合されたり、すり替えられたりすることなく、適切に管理されていることを保証する仕組みです。

基準3:社会的な要求事項

GRS認証は、製品だけでなく、それを作る「人」にも配慮を求めます。ILO(国際労働機関)の条約に基づき、強制労働や児童労働の禁止、差別の撤廃、衛生的で安全な労働環境の確保、公正な賃金の支払いなど、労働者の権利を守るための厳しい社会的基準が定められています。

基準4:環境に関する要求事項

製造過程における環境負荷を最小限に抑えることも、GRSの重要な基準です。エネルギーや水の使用量を記録し、削減目標を立てること、排水の質を管理すること、廃棄物を削減・分別することなど、環境パフォーマンスを継続的に改善するためのシステムを構築・維持する必要があります。

基準5:化学物質に関する要求事項

製品の安全性と環境への影響を考慮し、使用が禁止・制限される化学物質のリストが定められています。発がん性物質や環境ホルモンなど、人の健康や環境に有害な影響を及ぼす可能性のある化学薬品の使用は厳しく管理され、GRS製品の製造工程では使用できません。

GRS認証とRCS認証の違いとは?

リサイクルに関する認証には、GRSの他に「RCS(Recycled Claim Standard)」という基準もあります。この2つは運営団体が同じであるため混同されがちですが、目的と基準の厳しさに明確な違いがあります。

2つの認証の共通点と目的の違い

GRSとRCSは、どちらもリサイクル原料の含有量と、サプライチェーンにおけるCoC(加工流通過程管理)を認証するという点では共通しています。つまり、製品に表示された通りのリサイクル原料が、表示された量だけ確実に使用されていることを保証するものです。 しかし、RCSがCoCの認証に特化しているのに対し、GRSはそれに加えて、前述した「社会的側面」「環境的側面」「化学物質管理」という、より広範で厳しい要求事項を含んでいます。

基準の厳しさとロゴ表示の要件の違い

したがって、GRSはRCSの上位規格と位置づけることができます。社会的・環境的要件を満たす必要がない分、RCSの方が認証取得のハードルは低いと言えます。 ロゴ表示の要件にも違いがあります。

認証 リサイクル含有率 (ロゴ使用) 主な認証範囲
GRS 50%以上 CoC、社会、環境、化学物質
RCS 5%以上 CoCのみ

どちらの認証を目指すかは、企業が何を重視し、社会に対して何を訴求したいかによって選択が異なります。

GRS認証を取得するためのプロセス

GRS認証を取得するには、認定された第三者認証機関による審査を受ける必要があります。プロセスは複雑ですが、大まかな流れは以下の通りです。

手順1:認証機関への申請と見積もり

まず、Textile Exchangeが認定している認証機関(日本国内にも複数あります)に連絡を取り、申請書を提出します。申請内容に基づき、認証機関が審査の範囲や内容を決定し、見積もりを提示します。

手順2:実地監査の準備と実施

契約後、認証機関の監査員が実際に工場などを訪問し、実地監査を行います。監査では、書類の確認、従業員へのインタビュー、現場の視察などを通して、GRSの各基準(サプライチェーン管理、社会、環境、化学物質)を遵守しているかが厳しくチェックされます。

手順3:認証の可否判断と認証書の発行

監査で指摘事項があった場合は、是正計画を提出し、改善措置を講じる必要があります。全ての基準を満たしていると判断されると、認証が承認され、有効期間が1年間の認証書が発行されます。認証を維持するためには、毎年更新審査を受ける必要があります。

私たちがGRS認証製品を選ぶことの意義

GRS認証は、企業だけの問題ではありません。私たち消費者がGRS認証製品を積極的に選ぶことにも、大きな意味があります。

消費者として責任ある選択をする

GRSのロゴが付いた製品を選ぶことは、その製品が環境や社会に対して責任ある方法で作られたことの証明です。私たちの購買行動一つひとつが、地球環境の保護や、生産者の人権尊重につながる「投票」となります。製品の背景にあるストーリーを理解し、責任ある選択をすることが、持続可能な社会を実現する第一歩です。

企業のサステナブルな取り組みを応援する

企業がコストと労力をかけてGRS認証を取得しても、それが消費者に評価され、製品の購入に繋がらなければ、取り組みを継続することは困難です。私たちがGRS認証製品を選ぶことは、真摯にサステナビリティに取り組む企業を応援するメッセージとなります。それが市場全体の意識を高め、より多くの企業がサステナブルな製品開発へとシフトする原動力となるのです。

まとめ

GRS認証は、リサイクル製品の信頼性を保証し、環境負荷の削減と社会的な責任を促進する国際的な基準です。この認証を正しく理解し、企業は責任ある製品づくりを、消費者は責任ある製品選びを実践することが、持続可能な未来を築くために不可欠です。この記事が、GRS認証への理解を深める一助となれば幸いです。

持続可能な繊維製品の製造・販売をお考えの企業様には、インターテック・サーティフィケーションの専門的なGRS認証サービスをご活用ください。GRS認証の取得により、リサイクル材料の含有率証明だけでなく、社会・環境・化学面での適合性も実証できます。グローバル市場での競争力向上と消費者からの信頼獲得に直結する重要な認証です。経験豊富な審査員がサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

ご興味がございましたら、 お問い合わせフォーム より、お気軽にお問合せください。
また詳細は、 テキスタイルエクスチェンジ認証(GRS認証・RCS認証・OCS認証)/GOTS認証 をご参照ください。