ISCC認証とは?取得のメリットや種類、プロセスをわかりやすく解説!

2025/08/06OTHER

近年、企業のサステナビリティへの取り組みがますます重要視される中、「ISCC認証」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。これは、製品の原料が持続可能な方法で調達・製造されたことを証明する国際的な認証制度です。取引先から取得を求められたり、環境経営の一環として検討したりする企業担当者の方も多いでしょう。

この記事では、ISCC認証とは何かという基本的な知識から、その種類、取得するメリット、具体的なプロセス、さらには日本企業の事例までを網羅的に解説します。この記事を読めば、ISCC認証の全体像を理解し、自社での取り組みを検討する第一歩を踏み出せます。

ISCC認証とは?

ISCC認証は、企業のサステナビリティ活動において重要な役割を果たす国際的な認証制度です。その基本的な概念と、認証が保証する内容について解説します。

持続可能性を証明する国際的な認証制度

ISCC認証(International Sustainability and Carbon Certification:国際持続可能カーボン認証)とは、サプライチェーン全体で、持続可能な原材料が使用されていることを証明する国際的な認証制度です。 バイオマス原料やリサイクル原料などが、環境的・社会的な基準を満たしていることを第三者機関が認証します。

認証を取得した製品にはISCC認証マークを表示できるため、消費者は環境に配慮した製品を選びやすくなり、企業は自社の取り組みを具体的に示すことができます。

ISCC認証が保証する3つの要素

ISCC認証は、主に以下の3つの要素を保証することで、サプライチェーンの信頼性を高めています。

保証される内容 概要
原材料生産のサステナビリティ 原材料が、環境や社会に配慮した持続可能な方法で生産されていることを保証します。
サプライチェーンのトレーサビリティ 原材料の調達から最終製品に至るまで、サプライチェーン全体で追跡可能であることを保証します。
GHG排出削減量の検証 サプライチェーンにおける温室効果ガス(GHG)の排出削減量が、基準を満たしていることを検証します(認証種別による)。

認証取得に求められる6つの要件

  1. 炭素が豊富なエリアの保護:森林や湿地など、炭素貯蔵量が多い土地を開拓して原材料を生産していないことを求めます。
  2. 環境保護への配慮:生物多様性が豊かなエリアを保護し、土地、水、大気への悪影響を最小限に抑える方法で栽培・管理されていることを求めます。
  3. 安全な作業環境の確保:労働者の安全と健康を守るための適切な措置が講じられていることを求めます。
  4. 人権・労働者の権利の尊重:強制労働や児童労働などを禁止し、労働者の権利が守られていることを求めます。
  5. 法令遵守:事業を行う国や地域の関連法規、国際条約を遵守していることを求めます。
  6. 優れた管理慣行の実践:持続可能な管理体制が構築され、継続的に改善されていることを求めます。

ISCC認証の主な種類と違い

ISCC認証には、対象となる市場や原材料に応じて、主に「ISCC EU」「ISCC PLUS」「ISCC CORSIA」の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社のビジネスに合った認証を選択することが重要です。

 
認証名 主な対象市場 主な対象原料 特徴
ISCC EU EU域内のバイオ燃料市場 農業・森林バイオマス、廃棄物・残渣 EUのRED IIに準拠し、GHG排出量報告が義務付けられている。
ISCC PLUS 食品、飼料、化学品、エネルギーなど(EU域外も含む) バイオマス、サーキュラー原料(リサイクル原料など) 幅広い製品・市場に対応可能。GHG排出量報告は任意。
ISCC CORSIA 国際航空業界(SAF) 農業・森林バイオマス、廃棄物・残渣など 持続可能な航空燃料(SAF)の認証に特化している。

ISCC EU:EUのバイオ燃料市場向け

ISCC EUは、欧州連合(EU)の再生可能エネルギー指令(RED II)に基づいて運用される認証制度です。 主にEU域内で輸送用燃料として使用されるバイオ燃料を対象としており、持続可能性要件や温室効果ガス排出量の削減率に関して厳格な基準が定められています。

ISCC PLUS:より幅広い市場と原料が対象

ISCC PLUSは、EUのRED IIで規制されていない市場を対象とする、より自由度の高い認証制度です。 食品、飼料、化学品、プラスチック製品など幅広い分野で利用でき、バイオマス原料に加えて、プラスチック廃棄物などのサーキュラー(循環型)原料も対象となります。 日本で取得されているISCC認証の多くはこのISCC PLUSです。

ISCC CORSIA:航空業界の脱炭素化を促進

ISCC CORSIAは、国際民間航空機関(ICAO)が定める「CORSIA(国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)」に対応するための認証制度です。 持続可能な航空燃料(SAF)が、CORSIAの基準を満たしていることを証明するために利用されます。これにより、航空業界の二酸化炭素排出量削減に貢献します。

ISCC認証を取得するメリット

ISCC認証を取得することは、企業に多くのメリットをもたらします。環境への貢献はもちろん、事業成長にも繋がる重要な要素となります。

サステナブルな製品であることの証明

ISCC認証は、国際的に認められた第三者機関による厳格な審査を経て与えられます。 そのため、この認証を取得することで、自社の製品が持続可能な資源を使い、責任ある方法で生産されたことを客観的に証明できます。 これにより、環境意識の高い消費者や取引先からの信頼を獲得することにつながります。

環境経営(ESG経営)のアピールによるブランド価値向上

ISCC認証の取得は、企業が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視する「ESG経営」を実践していることの具体的な証拠となります。 温室効果ガス削減への貢献やサプライチェーンの透明性確保といった取り組みを、説得力をもってステークホルダー(投資家、顧客、従業員など)にアピールでき、企業のブランド価値向上に大きく貢献します。

国際市場でのビジネスチャンス拡大

環境規制が厳しい欧米市場をはじめ、国際的な取引において、ISCC認証のようなサステナビリティ認証を条件とする企業が増えています。 認証を取得していることで、こうした市場へのアクセスが容易になり、新たなビジネスチャンスの獲得や、サプライチェーンへの参画が期待できます。

ISCC認証とマスバランス方式の関係

ISCC認証、特にISCC PLUSを理解する上で欠かせないのが「マスバランス方式」という考え方です。これは、持続可能な製品を効率的に製造・供給するための重要な仕組みです。

マスバランス方式とは?

マスバランス方式とは、製造プロセスにおいて、特性の異なる原料(例:バイオマス由来原料と石油由来原料)が混合される場合に、投入したバイオマス由来原料の量に応じて、生産された製品の一部にその特性を割り当てる手法です。

例えば、バイオマス原料を30トン、石油由来原料を70トン投入して100トンのプラスチックを製造した場合、完成した製品の中から30トン分を「バイオマスプラスチック」として販売することが可能になります。物理的には全ての製品にバイオマス原料と石油由来原料が混ざっていますが、帳簿上で特性を管理・割り当てます。

マスバランス方式のメリットと課題

マスバランス方式の最大のメリットは、既存の製造設備をそのまま活用できる点にあります。持続可能な原料と従来の原料を物理的に完全に分けて管理する(IP方式)には大規模な設備投資が必要ですが、マスバランス方式ではその必要がなく、比較的低コストで持続可能な製品の供給を始めることができます。

一方で、消費者からは製品の実際の原料構成が分かりにくいという課題も指摘されています。そのため、企業はマスバランス方式を採用していることを透明性をもって情報開示し、消費者の理解を得ていくことが重要です。

ISCC認証の取得プロセス

ISCC認証を取得するには、定められた手順に沿って準備を進め、第三者認証機関による審査を受ける必要があります。ここでは、一般的な取得プロセスと、費用・期間の目安について解説します。

手順1:認証機関の選定と契約

まず、ISCCから承認を受けた認証機関の中から、自社の事業内容や地域に合った機関を選定し、契約を締結します。 認証機関によって、得意な分野や審査費用、対応言語などが異なるため、複数の機関を比較検討することが重要です。

手順2:システムユーザー登録と審査申請

次に、ISCCの公式ウェブサイトでシステムユーザーとして登録し、登録番号を取得します。その後、契約した認証機関に対して正式に審査を申請します。 この段階で、自社のサプライチェーンに関する情報などを提出する必要があります。

手順3:監査の実施(内部・実地)

認証機関による監査は、主に書類審査と実地監査で構成されます。まず、自社でISCCの要求事項に基づいた管理体制が構築できているかを内部で確認します。その後、認証機関の監査員が事業所を訪問し、原材料の管理状況や製造プロセス、記録などが基準を満たしているかを実際に確認します。

手順4:認証書の発行と公開

実地監査で要求事項を満たしていると判断されると、認証書が発行されます。 発行された認証書はISCCのウェブサイトで公開され、これにより自社がISCC認証取得事業者であることが公式に証明されます。 認証取得後も、有効性を維持するために年次での定期監査が必要です。

認証取得にかかる費用と期間の目安

認証取得にかかる費用は、主にISCCへのライセンス費用と、認証機関に支払う監査費用から構成されます。企業の規模や拠点数、認証製品の量などによって大きく変動しますが、数十万円から数百万円程度が一般的です。

期間についても、企業の準備状況や認証機関のスケジュールによって異なりますが、一般的には申請から認証書発行まで数ヶ月から半年程度を見込むと良いでしょう。

日本におけるISCC認証の取得企業事例

日本でも、化学メーカーを中心に多くの企業がISCC認証、特にISCC PLUS認証を取得し、サステナビリティへの取り組みを加速させています。

三井化学株式会社の事例

三井化学株式会社は、バイオマス由来原料やリサイクル原料から製造した化学品・プラスチックについてISCC PLUS認証を取得しています。マスバランス方式を活用し、顧客のニーズに応じてバイオマス度を割り当てた製品を供給することで、社会のカーボンニュートラル実現に貢献することを目指しています。

旭化成株式会社の事例

旭化成株式会社は、エンジニアリングプラスチックや合成ゴムなど、多岐にわたる製品群でISCC PLUS認証を取得しています。植物由来原料を活用した製品の提供を通じてサプライチェーン全体の持続可能性を高め、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを推進しています。

双日株式会社の事例

総合商社である双日株式会社は、ISCC PLUS認証およびISCC EU認証を取得しています。メタノールの製造・販売において、持続可能なバイオマス資源の利用を推進しています。商社の立場からサプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献し、企業のサステナビリティ経営を強化しています。

まとめ

本記事では、ISCC認証の基本概念から種類、取得のメリット、具体的なプロセス、企業事例までを解説しました。ISCC認証は、サプライチェーン全体で持続可能性を証明し、企業の環境経営をアピールするための強力なツールです。

自社の製品や事業に合わせて適切な認証(ISCC EU, PLUS, CORSIA)を選択し、マスバランス方式などの仕組みを理解することが重要です。認証取得は、ブランド価値の向上や新たなビジネスチャンスの創出にも繋がります。 この記事が、貴社のサステナビリティ戦略を推進する上で参考になれば幸いです。

持続可能なサプライチェーン構築をお考えの企業様には、インターテック・サーティフィケーションの専門的なISCC認証サービスをお勧めいたします。ISCC PLUS、ISCC EU、ISCC CORSIAの3つの認証に対応し、お客様の事業領域に最適なプランをご提案します。国際的な持続可能性を証明することで、競争優位性の確保と新たなビジネス機会の創出が期待できます。まずは無料お見積りからご検討ください。

ご興味がございましたら、 お問い合わせフォーム より、お気軽にお問合せください。
また詳細は、 ISCC 認証【ISCC PLUS/ISCC EU/ISCC CORSIA】 をご参照ください。