MSC認証(海のエコラベル)とは?仕組みやメリット、商品の探し方を解説!

2025/08/08OTHER

近年、スーパーの鮮魚コーナーや水産加工品で、青い魚のマークが付いた「海のエコラベル」を見かける機会が増えてきました。これはMSC認証と呼ばれる、海の資源と環境を守るための国際的な認証制度です。しかし、このマークが具体的に何を意味し、なぜ重要なのかを詳しく知っている方はまだ多くないかもしれません。

この記事では、「MSCとは何か?」という基本的な問いに答え、その背景にある海の課題、認証の信頼性を支える仕組み、そして私たちの消費行動が未来の海にどう繋がるのかを分かりやすく解説します。

MSC認証とは?未来の海を守る「海のエコラベル」

MSC認証は、持続可能な漁業を世界に広めるための重要な取り組みです。その中心的な役割を担うMSC(海洋管理協議会)と、認証の証である「海のエコラベル」について解説します。

MSC(海洋管理協議会)の基本的な役割

MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)とは、減少しつつある世界の水産資源を回復させ、将来の世代まで残していくことを目指す国際的な非営利団体です。 1997年に設立され、科学的根拠に基づいた厳格な基準を用いて、環境に配慮した漁業を認証しています。 MSCのミッションは、認証制度と「海のエコラベル」を通じて持続可能な漁業の取り組みを評価し、消費者がサステナブルな水産物を選びやすくすることです。これにより、水産物市場全体が持続可能な方向へ転換していくことを促しています。

「海のエコラベル」が示す意味

MSC「海のエコラベル」は、その水産物がMSCの厳格な基準を満たした漁業で獲られた天然のものであることを示す証です。 この青いラベルが付いた製品を選ぶことは、消費者が水産資源や海洋環境の保全に貢献する意思表示となります。ラベルが付いている製品は、漁獲から加工、流通、販売に至るすべての過程で、認証された水産物が非認証の原料と混ざることなく、適切に管理された流通経路を通じて提供されています。MSCが定めた基準に則っていることが確認された製品のみ、ラベル表示されるので、私たちは安心してサステナブルなシーフードを選ぶことができます。

なぜ今MSC認証が必要とされるのか?

私たちが日々口にする魚介類は、無限の資源ではありません。今、世界の海は深刻な課題に直面しており、MSC認証のような取り組みがこれまで以上に重要になっています。

世界の海の現状と過剰漁獲の問題

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、世界の水産資源の約3分の1以上が、持続可能なレベルを超えて獲られている「過剰漁獲」の状態にあります。 これは、魚が自然に繁殖して数を回復するスピードを、人間の漁獲量が上回っていることを意味します。このままでは、将来、食卓から馴染みの魚が消えてしまうかもしれません。過剰漁獲は、海洋生態系のバランスを崩し、漁業に生計を立てる世界中の人々の生活をも脅かす深刻な問題です。

気候変動が海洋資源に与える影響

過剰漁獲に加えて、気候変動も海洋環境に大きな影響を及ぼしています。海水温の上昇は、魚の生息域を変化させることがあります。例えば、北東大西洋では、海水温の上昇に伴いサバの群れが北上するといった現象が報告されています。 このような変化は、特定の魚種に依存する漁業や生態系に予測不能な影響を与えかねません。持続可能な漁業とは、こうした環境の変化にも適応できる管理体制を築くことも含んでいます。

MSC認証の信頼性を支える3つの原則

MSC認証の信頼性は、科学的データに基づいて設定された3つの基本原則によって支えられています。認証を希望する漁業は、独立した第三者審査機関によって、これらの原則をすべて満たしているか厳しく評価されます。

原則1:資源の持続可能性

この原則は、漁業が対象とする水産資源が持続可能なレベルにあることを求めています。 つまり、過剰な漁獲を行わず、資源が枯渇する心配がない状態を維持することです。もし資源が減少している場合は、回復を可能にする管理計画のもとで漁業が行われている必要があります。将来にわたってその魚を食べ続けられるよう、資源量を適切に管理することが目的です。

原則2:漁業が生態系に与える影響

持続可能な漁業は、対象の魚だけを獲れば良いというわけではありません。この原則では、漁業が海洋生態系全体に与える影響を最小限に抑えることを求めています。 これには、ウミガメや海鳥、他の魚種などの意図しない混獲を減らす努力や、海底環境といった生息域へのダメージを抑える配慮が含まれます。生態系の構造や多様性を維持し、海の豊かさを全体として守るための重要な原則です。

原則3:漁業の管理システム

この原則は、漁業が効果的に管理されているかを評価します。 国内外の関連法規や国際的な合意を遵守していることはもちろん、長期的な持続可能性を確保するための強固な管理体制が求められます。将来起こりうる環境の変化などにも対応できる、明確で実効性のあるルールに基づいた漁業運営が不可欠です。

MSC認証の仕組みとプロセス

MSC認証製品が私たちの手元に届くまでには、「漁業認証」と「CoC認証」という2つの重要な認証プロセスが存在します。これにより、製品の信頼性とトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されます。

漁業に対する「漁業認証」

「漁業認証」は、MSCの3つの原則に基づき、水産資源を獲る漁業そのものを審査・認証するものです。この審査はMSCではなく、独立した第三者の審査機関が担当し、そのプロセスには他の科学者やNGOなども参加できるため、公平性と透明性が保たれています。 認証を取得するまでに数年を要することもあり、取得後も毎年監査を受け、5年ごとに更新審査が行われるなど、継続的な改善が求められる厳格なものです。

流通・加工・販売を管理する「CoC認証」

「CoC認証(Chain of Custody:管理の連鎖の認証)」は、認証された漁業で獲られた水産物が、消費者の手に届くまでのすべての流通過程(加工、流通、販売)を対象とする認証です。 この認証により、MSC認証製品が非認証の製品と混ざることなく、適切に分別管理されていることが保証されます。 水産加工業者、卸売業者、小売店、レストランなどがこの認証を取得することで、初めて製品にMSC「海のエコラベル」を付けて販売することが可能になります。

MSC認証とASC認証の違いは?

サステナブル・シーフードの認証ラベルには、MSCの他に「ASC認証」というものもあります。どちらも水産物の持続可能性を示す重要なラベルですが、その対象が異なります。

 認証制度   対象   主な目的
 MSC認証  天然の水産物  海洋資源の持続可能性と環境への配慮を確保する
 ASC認証  養殖の水産物  環境への負荷を減らし、地域社会に配慮した責任ある養殖業を推進する

対象となる水産物の違い

2つの認証の最も大きな違いは、MSC認証が天然の水産物を対象としているのに対し、ASC認証(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)は養殖された水産物を対象としている点です。 MSCは海や川、湖で自然に育った魚介類を獲る「漁業」を、ASCは人間が管理する環境で育てる「養殖業」をそれぞれ評価・認証します。

どちらを選ぶべきかの判断基準

消費者としては、天然魚か養殖魚かに応じて、それぞれに対応するラベルが付いているかを確認することが大切です。MSCとASCは、どちらが優れているというものではなく、天然と養殖、それぞれの持続可能性を支える車の両輪のような存在です。私たちが商品を選ぶ際は、どちらのラベルが付いていても、それは環境や社会に配慮された製品であるという信頼の証となります。

MSC認証がもたらすメリットとは?

MSC認証は、海や魚だけでなく、私たち消費者や、漁業・水産業に関わる事業者にとっても多くのメリットをもたらします。

消費者にとってのメリット

私たち消費者にとって最大のメリットは、MSC「海のエコラベル」を目印にすることで、専門的な知識がなくても、持続可能な社会に貢献する製品を簡単に見分け、安心して選べることです。 自分の買い物が未来の海の豊かさを守る一助となることを実感でき、食の選択に新たな価値と満足感をもたらします。

事業者にとってのメリット

漁業者にとっては、MSC認証を取得することが、自らの漁業が適切に管理されていることの証明となり、国際的な市場へのアクセス向上や企業価値の向上に繋がります。小売店やレストランなどの流通業者にとっては、環境意識の高い消費者のニーズに応えることができ、企業の社会的責任(CSR)への取り組みをアピールする機会にもなります。

海洋環境にとってのメリット

MSC認証の普及は、過剰漁獲を抑制し、破壊的な漁法を減らすことに直接的に貢献します。 これにより、水産資源の回復が促され、海洋生態系全体の健全性が保たれます。認証取得を目指す漁業が増えることで、世界中の漁業がより持続可能なものへと転換していく動きが加速し、地球全体の海の豊かさを守ることに繋がります。

私たちにできること:MSC認証商品の探し方

MSC認証を支持し、海の未来を守るための行動は、日々の買い物から始めることができます。意識して探してみると、MSC認証商品は意外と身近な場所で見つかります。

MSC認証ラベルが付いた商品例

MSC認証ラベルが付いた商品は、鮮魚だけでなく、缶詰、冷凍食品、お惣菜、ペットフードなど多岐にわたります。例えば、タラコや明太子、鮭フレーク、サバの缶詰、白身魚のフライ、カニカマなど、日常的によく利用する製品にも認証商品が増えています。 パッケージに付いている青い「海のエコラベル」が目印です。

取り扱い企業と購入できる場所

日本では、イオン、生活協同組合(コープ)、セブン&アイ・ホールディングスといった大手小売企業が、プライベートブランド商品を含め、MSC認証製品の取り扱いを積極的に進めています。 これらのスーパーマーケットの鮮魚コーナーや加工品売場で、MSC認証製品を見つけることができます。また、一部のレストランでもMSC認証の魚介類を使ったメニューが提供されています。

MSC認証とSDGsの関連性

MSC認証の取り組みは、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に海洋資源に関する目標の達成に大きく貢献します。

目標14「海の豊かさを守ろう」への貢献

SDGsの目標14は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを掲げています。 MSC認証は、まさにこの目標を具現化する取り組みです。過剰漁獲をなくし、違法な漁業を撲滅し、海洋生態系を保護するという目標14の具体的なターゲット達成に向けて、MSC認証制度は世界中で重要な役割を果たしています。私たちがMSC認証製品を選ぶことは、この国際的な目標達成に向けた個人レベルでの貢献となります。

目標2「飢餓をゼロに」、目標8「働きがいも経済成長も」への貢献

MSC認証漁業は、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」や目標8「働きがいも経済成長も」にも貢献しています。水産物は世界の約30億人にとって重要なタンパク源であり、MSC認証は水産資源の持続可能な利用を通じて、長期的な食糧供給の安定化を支えています。さらに、認証取得によって漁業者は新たな市場への参入や製品価値の向上を実現し、地域経済の活性化にもつながっています。南アフリカのヘイク漁業では、MSC認証が最大12,000人の雇用を支えるなど、経済的な効果も報告されています。私たちがMSC認証製品を選ぶことは、こうした国際的な目標達成に向けた日々の選択としての貢献になります。

目標12「つくる責任つかう責任」への貢献

MSC「海のエコラベル」が付いた製品を選ぶことで、適切に管理された持続可能な漁業を応援できます。認証水産物の需要が高まれば、小売業者の仕入れが増え、より多くの漁業が改善され、認証取得につながる好循環が生まれます。消費者の選択が漁業の未来を左右し、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の達成にも貢献できます。日々の買い物が、海の環境保全と資源の持続可能な利用に直結する重要な行動となります。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」への貢献

MSCのような信頼性の高い認証制度は、企業や政府がSDGsを達成するための重要な手段です。科学的根拠に基づいた漁業管理の原則や進捗管理手法の策定において、企業、NGO、政府が協働し、利害関係者間の前向きな連携を促進します。このような協力は、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも貢献します。2017年にはMSC主導の枠組みで、世界の大手企業27社が持続可能な水産物の調達を公約し、国際的にも高く評価されています。

まとめ:MSC認証を理解し、サステナブルな選択を

MSC認証は、単なる商品ラベルではなく、危機に瀕する海の環境と資源を守り、未来へと引き継ぐための世界的な仕組みです。その背景には過剰漁獲という深刻な問題があり、MSCの厳格な3つの原則と2段階の認証プロセスが、ラベルの信頼性を支えています。

この記事を通じてMSC認証への理解を深め、次に買い物をする際には、ぜひ青い「海のエコラベル」を探してみてください。私たち一人ひとりの小さな選択が、漁業者や企業を動かし、世界の海を持続可能なものへと変えていく大きな力になります。

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また詳細は、 MSC CoC 認証【海洋管理協議会認証】 をご参照ください。