欧州電池規則とは?対象製品や要件、企業の対応手順を解説
2026/10/21サステナビリティ
欧州電池規則(EU Battery Regulation)は、EU市場に上市または使用開始される原則すべてのカテゴリーの電池を対象とし、持続可能性、安全性、表示・情報提供、廃電池管理などを定める包括的な規則です。具体的な要求事項は、電池カテゴリー、容量、用途、含有材料、製造形態などによって異なります。対応が遅れた場合には、対象製品のEU市場への上市に影響する可能性があります。
本記事では、規制の全体像と対象となる製品区分、段階的に適用されるスケジュール、そして企業が取るべき具体的な対応手順を整理します。
本記事では、規制の全体像と対象となる製品区分、段階的に適用されるスケジュール、そして企業が取るべき具体的な対応手順を整理します。
欧州電池規則の概要

欧州電池規則は、EU市場における電池の持続可能性と安全性を担保するための新たな法的枠組みです。従来の指令から規則への格上げにより、加盟国全体で統一されたより厳格な基準が適用されます。
| 観点 | 欧州電池規則のポイント |
|---|---|
| 適用範囲 | EU市場に投入されるすべての電池(組み込み型を含む) |
| 目的 | 電池のライフサイクル全体を通じた循環型経済の構築 |
| 法的拘束力 | 各国の国内法制化を待たずに直接適用される「規則」へと厳格化 |
EU市場の全電池に適用される
本規則は、EU市場に上市される電池を幅広く対象としており、軍事・国防用途や宇宙向け機器に組み込まれる電池など一部の例外を除くすべての電池が適用対象となります。単体で販売される電池だけでなく、自動車や電子機器、産業機械などに組み込まれた状態で輸入・販売される電池も規制の網にかかります。EU域外で製造された製品であっても、最終的にEU市場で流通する以上は同様の基準を満たさなければなりません。
参考:Regulation-2023/1542-EN-BatteriesRegulation-EUR-Lex
循環型経済の実現を後押しする
この規則の背景にあるのは、持続可能な社会への移行というEUの強い意志です。原材料の採掘から設計、製造、使用、そして廃棄後のリサイクルに至るまで、電池のライフサイクル全体を管理することで、環境負荷の低減を目指しています。貴重な資源の域内循環を促進し、第三国への資源依存度を下げる狙いも含まれています。
従来の電池指令より規則を厳格化
2006年に制定された従来の「欧州電池指令」と比較して、今回の「規則(Regulation)」は法的な拘束力が強まっています。指令(Directive)が各加盟国の国内法への落とし込みを必要としたのに対し、規則はEU全域で直接かつ一律に適用されます。各国の法解釈による差異がなくなり、企業はより迅速で正確な対応が必要でしょう。
規制の厳格化を受けて、自社製品にどの要件がいつから適用されるのかを早めに整理したいとお考えの企業も多いのではないでしょうか。インターテック・サーティフィケーションでは、欧州電池規則への対応サービスとして、CEマーキングの適合性評価、カーボンフットプリントの算定・検証、再生材料含有量の検証、バッテリーパスポートへの対応、サプライチェーンのデューデリジェンスをご案内しています。下記より詳細をご確認ください。
対象となる5つの電池カテゴリー
規制の対象は広く、用途や特性に応じて5つのカテゴリーに分類され、それぞれに異なる要求事項が設定されています。
| カテゴリー | 主な用途・特徴 |
|---|---|
| 携帯型電池 | スマートフォン、ノートPC、家電製品などに使用される密閉型電池 |
| LMT用電池 | 電動自転車、電動キックボードなど軽量輸送機器の動力源 |
| 始動用電池 | 自動車のエンジン始動や照明、点火に使用される電池 |
| EV用電池 | 電気自動車、ハイブリッド車の走行用動力源となる電池 |
| 産業用電池 | 再生可能エネルギーの蓄電システムやデータセンターのバックアップ電源 |
携帯型や産業用など5区分に分類
対象製品は、携帯型電池、LMT(Light Means of Transport:軽量輸送機器)用電池、始動用電池、EV用電池、産業用電池の5つに分類されます。LMT用電池は今回の規則で新設されたカテゴリーであり、急増する電動モビリティに対応しています。自社製品がどのカテゴリーに属するかによって、カーボンフットプリントの申告義務やバッテリーパスポートの適用時期が変わるため、正確な分類が対応の第一歩です。
電池区分別に確認すべき要求事項

企業は、製品の設計から廃棄までの各段階で、多岐にわたる新しい要件を満たす必要があります。環境負荷の可視化とサプライチェーンの透明性確保が主な柱です。
| 要求事項 | 具体的な効果 |
|---|---|
| CFPの算定・申告 | ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量の可視化と上限値の遵守 |
| 再生材料の使用 | コバルト、鉛、リチウム、ニッケルなどのリサイクル材の一定割合使用 |
| デューデリジェンス | サプライチェーンにおける環境・社会的リスクの評価と緩和措置 |
| バッテリーパスポート | 製品情報を電子化し、QRコード等で関係者に開示する仕組み |
| 取り外し・交換の容易化 | エンドユーザーや独立した事業者が容易に電池を交換できる設計要件 |
排出量の算定と申告を義務化する
EV用、LMT用、および容量2kWhを超える産業用充電式電池について、カーボンフットプリント(CFP)の算定と申告が義務付けられます。原材料の調達から製造、リサイクルに至るまでの温室効果ガス排出量を算出し、将来的には定められた上限値(ライフサイクル全体での排出量の閾値)を下回ることが求められます。自社工場だけでなく、サプライヤーを含めた一次データの収集体制構築が急務です。
再生材料の使用割合を規定する
電池の製造において、回収された廃棄物から抽出されたコバルト、鉛、リチウム、ニッケルの一定割合以上の使用が義務化されます。この要件は段階的に引き上げられる計画であり、目標達成にはリサイクル事業者との連携強化や、再生材料を安定して調達できるサプライチェーンの再構築が必要です。
供給網のリスク評価と管理を行う
バッテリー・デューデリジェンス義務は、電池をEU市場に上市または使用開始する一定規模以上の経済事業者に適用されます。2026年8月13日時点の統合版では、直近会計年度の前年度の純売上高が4,000万ユーロ未満であり、かつ連結グループでも同基準を超えない経済事業者は適用除外とされています。対象となる経済事業者は、コバルト、天然黒鉛、リチウム、ニッケルの調達・加工・取引に関連する社会・環境リスクを特定・評価し、予防・軽減等を行う必要があります。DD方針はNotified Body(通知機関)による第三者検証と定期監査の対象で、適用開始日は2027年8月18日です。
パスポートで製品情報を管理する
EV用電池、LMT用電池、および容量2kWhを超える産業用電池には、2027年2月18日からバッテリーパスポートが求められます。バッテリーパスポートは、製造者情報、材料組成、CFP、責任ある調達、再生材含有率などのモデル情報に加え、アクセス権限に応じて性能・耐久性や健康状態(SoH)等の個体情報を電子的に管理する仕組みです。第13条第6項のQRコードから固有識別子にリンクし、情報の正確性、完全性、最新性を経済事業者が確保します。
取り外しや交換を容易に設計する
携帯型電池を組み込んだ製品は、エンドユーザーが容易に電池を取り外し、交換できるように設計されていなければなりません(水回りで使用する機器や専門医療機器など一部の製品は、独立した専門業者のみが取り外し・交換できる設計とすることが認められています)。一方、LMT用電池を組み込んだ製品は、電池パック内の個々の電池セルも含め、独立した専門業者が容易に取り外し、交換できるように設計されていなければなりません。製品寿命を延ばし廃棄物を減らすための措置であり、特殊な工具を必要とせず、一般的な工具で交換できる構造への見直しが求められます。
適用開始はいつ?施行の全体像
欧州電池規則は一度にすべての要件が適用されるわけではなく、準備期間を設けて段階的に施行されます。
| 施行時期 | 主な要件の開始 |
|---|---|
| 2024年2月 | 規則の原則適用開始 |
| 2025年2月以降 | 委任法令の採択を待って、EV用電池からカーボンフットプリント申告を順次義務化 |
| 2027年2月 | バッテリーパスポートの導入開始 |
2024年2月より段階的に適用される
2023年7月の官報公示を経て、欧州電池規則は2024年2月18日より適用が開始されました。有害物質の含有制限などは適用開始日である2024年2月18日から適用され、鉛に関する制限(附属書I)は2024年8月18日から適用されています。各要求事項にはそれぞれ異なる移行期間が設定されており、企業は自社製品に関連する条項の施行時期を正確に把握し、逆算して準備を進める必要があります。
排出量宣言は委任法令の確定を待って適用される
CFP宣言の適用開始日は、電池カテゴリーごとの基準日と、CFP算定・検証方法および申告様式を定める委任法・実施法の発効後の所定期間を比較し、いずれか遅い日となります。EV用電池は2025年2月18日または関連法令の発効から12か月後、外部蓄電型を除く充電式産業用電池は2026年2月18日または関連法令の発効から18か月後、LMT用電池は2028年8月18日または関連法令の発効から18か月後、外部蓄電型の充電式産業用電池は2030年8月18日または関連法令の発効から18か月後のうち、それぞれ遅い日です。関連する二次法令の採択・発効状況を継続的に確認する必要があります。
2027年以降に電子パスポートを導入
バッテリーパスポートの要件は、2027年2月18日からの適用が予定されています。製品ごとの固有データを安全に管理・共有するためのITシステムの構築や、業界標準のデータフォーマットへの対応など、技術的・実務的なハードルは低くありません。
第三者機関の関与が必要になる要件
欧州電池規則の要求事項は、すべてを社内の体制整備で満たせるわけではありません。外部機関による検証や評価を経なければ適合を証明できない要件が含まれており、この部分を見落としたまま社内プロジェクトを進めると、技術文書を作り込んだ後に評価スキームの前提が違っていた、機関の受入枠が確保できず出荷計画に間に合わない、といった手戻りにつながるおそれがあります。
CFP・再生材・DDではNotified Bodyの関与が必要
カーボンフットプリントの算定値やデューデリジェンス方針の運用状況は、社内で数値を出し、手順書を整えただけでは適合の証跡になりません。独立した第三者による検証結果と組み合わせて初めて、当局や取引先に対して有効な証明として機能します。社内で作成した資料がそのまま提出物になるのか、それとも検証を挟む必要があるのかを要件ごとに確認しておかないと、書類を作り込んだ後に評価工程がまるごと積み残る事態になります。
【関連記事】カーボンフットプリント(CFP)とは?企業の取組事例や算定方法を解説!
ノーティファイドボディの関与が前提となる領域がある
欧州電池規則では、適用条項と適合性評価モジュールに応じて、EU加盟国から指定を受け、欧州委員会に通知されたNotified Body(通知機関)が関与する手続が定められています。Notified Bodyごとに、対応できる条項、電池カテゴリー、評価モジュール等の通知範囲が異なるため、NANDOデータベースで最新の範囲を確認する必要があります。対象条項、電池カテゴリー、評価モジュール、技術文書の準備状況を早期に整理し、対応可能なNotified Bodyへ計画を相談することが重要です。
適合性評価に備えて、設計変更、BOM、製造拠点、エネルギーミックス、調達先等の変更を記録し、算定値や適合性への影響を評価できる体制を整えることが重要です。インタ-テックグループでは、日本語窓口を通じて、電池試験、サプライチェーン監査、GHG・CFP関連サービス、および欧州電池規則に基づく適合性評価に関するご相談を承ります。正式なNotified Body評価は、独立性・公平性を確保し、その他のサービスと役割・契約・意思決定を分離して実施します。
適合性評価に備えて、設計変更、BOM、製造拠点、エネルギーミックス、調達先等の変更を記録し、算定値や適合性への影響を評価できる体制を整えることが重要です。インタ-テックグループでは、日本語窓口を通じて、電池試験、サプライチェーン監査、GHG・CFP関連サービス、および欧州電池規則に基づく適合性評価に関するご相談を承ります。正式なNotified Body評価は、独立性・公平性を確保し、その他のサービスと役割・契約・意思決定を分離して実施します。
企業はまず何から対応すべきか?

複雑な要件に対し、企業はロードマップを策定して着手する必要があります。
| 対応ステップ | 具体的なアクション |
|---|---|
| ステップ1:製品の分類 | 自社製品が5つのカテゴリーのどれに該当するかを特定する |
| ステップ2:排出量算定 | サプライチェーン全体を巻き込んだデータ収集とCFP算定プロセスの確立 |
| ステップ3:適合性評価 | 適用要件と評価モジュールを特定し、対応範囲を有するNotified Bodyへ相談して技術文書・適合性評価を準備 |
自社製品の該当区分を特定する
最初のアクションは、自社が製造・輸出する製品(電池そのもの、あるいは電池を内蔵した機器)が、規則で定義される5つのカテゴリーのどれに該当するかを正確に判断することです。カテゴリーが確定して初めて、いつまでに、どの要件を満たすべきかのタイムラインが明確になります。
サプライチェーンの排出量を測る
カーボンフットプリントの算定は、自社内だけでなくサプライヤーからのデータ収集が必要です。算出ルールの解釈や、二次データの活用範囲など専門的な判断が求められるため、早期にプロジェクトチームを立ち上げ、算定ツールやコンサルタントの活用を視野に入れながら体制を整えることが推奨されます。
専門機関による適合評価を受ける
適合性評価は、技術文書の作成、試験、事前検証、審査という複数の工程で構成され、着手から完了までにまとまった期間を要します。相談先を選ぶ際は、電池規則に対応したノーティファイドボディとしての指定を受けているか、規制解釈のギャップ分析から試験、適合性評価までを一貫して依頼できるか、日本国内の窓口と欧州の評価拠点が連携しているかを確認しておくと、工程間の引き継ぎロスを抑えられるでしょう。
まとめ
欧州電池規則への対応は、製品のカテゴリー特定から始まり、カーボンフットプリントの算定やデューデリジェンスの実施、バッテリーパスポートの導入準備など、多岐にわたるプロセスを段階的な期限内にクリアする作業です。サプライチェーン全体を巻き込んだ排出量データの収集や、複雑な算定ルールの適用、第三者機関による適合性評価など、実務的なハードルは高く、社内のリソースだけで対応を完結させるには相応の時間がかかります。
特に、今後順次義務化される要件に向けて、専門知識を持たないまま手探りで準備を進めると、EU市場からの排除という経営リスクに直結するケースも珍しくありません。自社の対応状況の遅れや、サプライヤーとのデータ連携などに課題を感じている場合は、法規制の解釈から具体的な算定実務までをカバーできる外部専門家への早期の相談が現実的な選択肢となるでしょう。
インターテックグループでは、日本語窓口を通じて、電池試験、サプライチェーン監査、GHG・CFP関連サービス、欧州電池規則に基づく適合性評価に関するご相談を承ります。正式なNotified Body評価については、独立性および公平性を確保し、その他の支援サービスと役割・契約・意思決定を分離して実施します。具体的な対応範囲と提供主体は、対象製品およびご相談内容を確認した上でご案内します。
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