GX-ETS(排出量取引制度)とは?本格稼働後に企業が取るべき対応策

2026/10/16サステナビリティ

GX-ETS(排出量取引制度)は、GX推進法に基づき、CO2の直接排出量が一定規模以上の事業者に排出枠を割り当て、毎年度、排出実績量と同量の排出枠を期限までに保有することを義務付ける制度です。2023〜2025年度の試行を経て、2026年度から本格稼働しました。制度開始初年度の2026年度は特例スケジュールが適用され、同年度中に行う年度平均排出量の届出と移行計画の提出には、登録確認機関による確認は求められていません。ただし、2026年度の排出実績量は後年度の確認・報告対象となるため、制度マニュアルに沿った計測・算定体制の整備と、登録確認機関との早期の契約・日程調整が推奨されています。本記事では、制度の基本的な仕組み、GXフューチャー・リーグとの違い、登録確認機関による確認に向けた準備を解説します。

 

GX-ETS(排出量取引)とは?


GX-ETS排出量取引とは
GX-ETSは、日本のカーボンニュートラル実現に向けた中核的な政策の一つとして設計された制度です。
観点 要点
制度の目的 排出枠の割当てと取引を通じた、排出削減に向けた先行投資の促進
スケジュール 2023〜2025年度に試行、2026年度から本格稼働


割り当てた排出枠の取引で削減を促す

GX-ETSは、政府が一定の基準の下で制度対象者に排出枠を割り当て、毎年度、排出実績量と同量の排出枠を期限までに保有することを求める仕組みです。排出実績量に対して保有する排出枠に余剰が生じた場合は、制度に従って他の事業者へ移転できます。一方、排出枠が不足する場合は、排出枠取引市場等で不足分を調達する必要があります。排出枠取引による経済的インセンティブと、保有義務を履行しない場合の未償却相当負担金等を組み合わせることで、排出削減に向けた投資を促す制度です。


2026年度から本格稼働している

2023年度から2025年度までの第1フェーズは、GXリーグにおける自主的な試行として実施されました。2026年度から始まった第2フェーズでは、CO2の直接排出量の前年度までの直近3年度平均が10万t-CO2以上の事業者が制度対象となり、排出枠の保有義務等が適用されます。なお、制度開始初年度の2026年度は特例スケジュールが適用され、2026年度中に提出する年度平均排出量の届出と移行計画には登録確認機関による確認は不要です。一方、2026年度の排出実績量は後年度の確認・報告対象となるため、対象事業者は2026年度中から必要なデータと証憑を整備することが重要です。

 

GXフューチャー・リーグとの位置づけの違い


GX-ETSとGXフューチャー・リーグは混同されがちですが、根拠となる仕組みも役割も異なります。
用語 役割と位置づけ
GXフューチャー・リーグ 2026年4月にGXリーグから刷新された、GX需要の創出とルールづくりに取り組む企業の枠組み
GX-ETS GX推進法に基づき、2026年度から直接排出量10万トン以上の事業者に参加を義務付ける排出量取引制度


GX需要の創出に取り組む協働の場を指す

GXフューチャー・リーグは、2026年4月に、それまでのGXリーグを刷新して発足した枠組みです。会員企業には、2030年度の排出量目標の提出や毎年度の排出実績の報告に加え、GX製品・サービスの需要創出やサプライヤーとの協業などに関する取り組み(コミットメント)の提出が求められます。旧GXリーグで求められていた排出実績の第三者検証は不要とされ、まず目標を立てて取り組みを始めることが重視されています。ワーキング・グループを通じたルールづくりの場でもあるため、企業は自社の課題を政策に反映させる場としても活用できます。


法律に基づく義務的な取引制度を指す

GX-ETSは、GXフューチャー・リーグの中の仕組みではなく、GX推進法に基づく国の制度です。旧GXリーグでは、参画企業が自主的に設定した削減目標をもとに第1フェーズの試行が行われましたが、2026年度からは、CO2の直接排出量の前年度までの直近3年度平均が10万t-CO2以上の事業者を対象とする義務的な制度となりました。GXフューチャー・リーグがGX需要の創出やルール形成に取り組む企業の枠組みであるのに対し、GX-ETSは制度対象者に排出枠の保有等を求める法定制度です。
GX-ETSでは、排出目標量及び排出実績量を届け出、又は報告する前に、登録確認機関による確認を受けることが必要です。インターテック・サーティフィケーション株式会社は、経済産業省の登録を受けたGX-ETSの登録確認機関として、制度に基づく確認サービスを提供しています。また、ISO 14064シリーズに基づくGHG排出量の妥当性確認・検証にも対応しています。

 

制度対応で得られる3つのメリット


制度対応で得られる3つのメリット
GX-ETSへの対応を通じ、企業は排出量データや移行計画を体系的に整理することになります。こうした取組は、脱炭素対応についてステークホルダーへ説明する際の基礎情報となり得ます。ただし、企業評価、取引条件、資金調達条件への影響は、各社の削減実績、計画の内容、情報開示及び金融機関等の判断によって異なります。
制度対応のメリット 具体的な効果
説明基盤の整備 排出量データと移行計画を体系的に整理し、対外説明に活用できる
余剰枠移転の可能性 余剰排出枠が生じた場合、制度に従って他の事業者へ移転できる
金融機関等との対話 移行計画を脱炭素戦略の説明資料として活用できる可能性がある


市場からの環境評価を高める

GX-ETSの対象事業者は、移行計画を作成して国に提出します。排出量データ、削減目標及び取組内容を体系的に整理することは、脱炭素対応をステークホルダーへ説明する際の基礎となります。ただし、これらの情報開示が企業評価や取引条件の向上に直結するとは限らず、評価は開示内容や実際の削減実績等によって異なります。


余剰の排出枠を売却し収益化する

排出実績量に対して保有する排出枠に余剰が生じた場合は、制度に従って他の事業者へ移転できます。ただし、余剰枠の発生量、取引価格、売却可能性及び売却損益は、将来の制度運用や市場環境等に左右されます。


有利な条件で資金調達を行う

GX-ETS対応に伴って作成・提出する移行計画は、企業の中長期的な脱炭素戦略を金融機関等へ説明する際の資料となり得ます。ただし、トランジションファイナンスへの適格性や融資条件は、資金使途、企業全体の戦略、目標の信頼性、ガバナンス等を踏まえて金融機関等が判断するため、GX-ETSへの対応だけで有利な資金調達が保証されるものではありません。
 

 

制度対応で考慮すべきデメリット


メリットの一方で、制度に対応するうえでの実務面の負担や財務リスクも存在します。
懸念されるデメリット 企業に与える影響
業務負荷の増加 排出量の精緻な算定や実績報告に向けた社内体制の整備が必要
コスト発生リスク 排出枠が不足した場合に市場から調達する費用がかかる


算定や報告の業務負荷が増える

温室効果ガスの排出量をルールに従って正確に算定し、定期的に報告するためには、専門知識とマンパワーが必要です。各拠点からのデータ収集プロセスを標準化し、算定ミスを防ぐためのシステム導入や担当者の育成が重要です。これまで環境データの管理体制が整っていなかった企業にとっては、初期の立ち上げ負担が重くなるケースも珍しくありません。


排出枠の不足分に調達費用が発生する

排出削減が計画通りに進まず、割り当てられた排出枠を実排出量が上回った場合、期限(対象年度の翌年度1月31日)までに排出実績量と同量の排出枠を保有する義務があるため、不足分は排出枠取引市場等で自己負担により調達する必要があります。なお、適格カーボン・クレジット(J-クレジット・JCM)で充当できるのは各年度の実排出量の10%が上限とされており、不足分を償却できなかった場合は「不足量×上限価格×1.1」の未償却相当負担金の納付が求められます。クレジットの市場価格は需要と供給によって変動するため、将来的に価格が高騰したタイミングで不足分を補填することになれば、予期せぬ財務的ダメージを受けるリスクが伴うでしょう。
 

 

第1・第2フェーズの違いは?


GX-ETSは、試行の第1フェーズを経て、2026年度から義務的な制度へ移行しています。
段階 実施期間と主な特徴
第1フェーズ 2023〜2025年度。自主的な目標設定と試行的な取引が中心
第2フェーズ 2026年度〜。一定規模以上の事業者を対象とする法定制度。排出目標量・排出実績量は登録確認機関の確認対象。ただし2026年度提出分には初年度特例あり


第1フェーズは自主的な目標設定で進んだ

第1フェーズ(2023年度から2025年度)では、企業が自社の実情に合わせて自主的な削減目標を設定し、取り組みをスタートする試行期間に位置づけられていました。この期間は、企業が排出量算定のノウハウを蓄積し、市場での取引に慣れるための準備期間としての側面が強く、比較的柔軟な運用が行われていました。


第2フェーズで規律が強まった

2026年度に始まった第2フェーズでは、排出目標量や排出実績量を報告する際に、登録確認機関による確認を受けることが義務付けられ、データの信頼性に対する要求水準が一段と高まっています。また、目標設定の考え方や達成状況のモニタリングに関するルールも厳格化され、2026年度から適用が始まっています。排出枠を売買する取引市場は2027年度秋頃の開設が予定されており、本格的な排出量取引市場としての機能が整備されていくでしょう。

 

今後企業が取るべき対応ステップ


今後企業が取るべき対応ステップ
本格稼働を受け、企業は計画的に対応を進める体制づくりが求められます。
対応ステップ 実施すべき具体策
排出量の算定 GX-ETSの対象となるCO2直接排出量(Scope 1相当)の把握
削減計画の策定 設備投資や再エネ導入を織り込んだ現実的な道筋の設計
排出枠・クレジット方針 排出枠の調達と、制度上認められる適格クレジットの活用を区別して検討


自社の排出量を正確に算定する

制度対応の第一歩は、自社の事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1およびスコープ2)を漏れなく正確に算定することです。各拠点でのエネルギー使用量データを一元管理する仕組みを構築し、算定基準に準拠した数値を算出する体制を整えます。算定結果がすべての取引のベースとなるため、この段階での正確性確保が極めて重要です。


実態に合う削減計画を策定する

現状の排出量を把握した後は、中長期的な視点で現実的な削減計画を立てるプロセスへと移行します。省エネ機器への更新、再生可能エネルギーの導入、生産プロセスの見直しなど、具体的な施策とそれに伴う投資額をシミュレーションし、達成可能な目標値を設定する作業が必要です。計画が実態とかけ離れていると、排出枠の不足や想定外の調達コストにつながるため、自社の実力に見合った綿密な計画策定が求められます。


不足時にクレジットで補填する

排出実績量に対して排出枠が不足する可能性がある場合は、排出枠取引市場等での排出枠の調達を検討する必要があります。また、制度上認められる範囲では、J-クレジット又はJCMクレジットの無効化量を排出実績量の算定に反映できます。2026年度から2030年度までのクレジット利用上限は各年度の実排出量の10%です。排出枠の調達と適格クレジットの活用は制度上の扱いが異なるため、分けて管理することが重要です。2031年度以降の取扱いは、今後の制度決定を確認する必要があります。
 

 

算定データに外部検証は有効か?


GX-ETSでは、排出目標量及び排出実績量について、登録確認機関による確認を受けた上で届出又は報告を行います。対象事業者は、制度マニュアルに沿って算定し、確認に必要なデータと証憑を準備する必要があります。
外部検証の意義 もたらされる具体的な効果
確認準備 制度マニュアルに基づく算定と証憑の整備
法定確認 排出目標量・排出実績量について登録確認機関の確認を受ける


算定結果の信頼性を担保する

GX-ETSの排出実績量は、経済産業省の「排出量算定・報告マニュアル」に従って算定します。温対法に基づくSHK制度と共通するデータや考え方もありますが、対象範囲や排出区分等にはGX-ETS独自の取扱いがあるため、SHK制度の報告値をそのまま用いるのではなく、GX-ETSのマニュアルとの整合性を確認する必要があります。確認に備えて、組織境界、排出源、活動量、単位発熱量・排出係数、計量器、原始証憑から報告値までのトレーサビリティを整理します。


制度要件への適合性を確認する

GX-ETSでは、排出枠の基礎となる排出目標量及び保有義務量の基礎となる排出実績量について、登録確認機関による確認を受けた上で届出又は報告を行います。ただし、制度開始初年度の2026年度中に提出する年度平均排出量の届出と移行計画には確認は不要です。2026年度の排出実績量は後年度の確認・報告対象となるため、対象事業者は2026年度中から算定体制、責任分担、証憑の保存方法及び確認日程を整備することが重要です。
第三者による確認を初めて受ける場合は、依頼から報告書の受け取りまでの流れを先に把握しておくと、社内の準備を逆算しやすくなります。インターテック・サーティフィケーションでは、お問い合わせからお見積り・ご契約、計画策定と書類確認、確認の実施、報告書・声明書の発行までの標準的な流れを公開しています。書類確認・リモート確認・現地確認を組み合わせて効率的に進める点も特徴ですので、詳しくは下記ページをご確認ください。

 

外部検証・審査機関を選ぶ3つの確認点


GX-ETSの法定確認を依頼する場合は、経済産業省が公表する登録確認機関一覧への掲載を確認します。あわせて、確認方法、対象分野の力量、独立性、日程及び必要資料を比較することが重要です。
確認点 見るべきポイント
制度上の登録 経済産業省の登録確認機関一覧に掲載されているか
確認方法・業務範囲 確認対象に適用する方法、範囲、必要資料及び日程が明確か
関連業務との調整 ISO認証審査等とは目的・基準・成果物が異なることを前提に、日程や資料を調整できるか


制度上の登録・認定の有無を確認する

GX-ETSの法令上の確認を依頼する場合は、経済産業省が公表する登録確認機関一覧に依頼先が掲載されていることを確認します。登録確認機関の登録要件には、所定の認定又は確認・保証業務の経験等が定められています。ISO 14065等に基づく認定の有無は、確認機関の力量を比較する際の参考情報となりますが、経済産業大臣による登録とは区別して確認する必要があります。


国際規格に沿った検証手順かを確認する

登録確認機関は、経済産業省の確認業務マニュアル及び自らが届け出た確認方法に基づいて確認業務を実施します。適用される方法には、ISO 14064-3:2019、ISSA 5000、ISRS 4400に基づく方法等があり、排出実績量、排出目標量など確認対象の種類に応じて異なります。見積り段階で、対象組織、排出源、事業所数、適用する確認方法、必要資料、現地確認の要否及び日程を整理することが重要です。


既存のISO認証と一体で運用できるかを確認する

ISO 14001等の環境マネジメントシステムを運用している企業では、エネルギー使用量の管理、法令順守評価、内部監査、マネジメントレビュー等の既存プロセスが、GX-ETS対応に必要なデータ管理体制の検討材料となる場合があります。ただし、ISO 14001認証審査とGX-ETSの確認業務は、目的、適用基準、確認範囲及び成果物が異なります。同一機関へ依頼する場合であっても、実施体制、独立性、日程、提出資料及び業務範囲について個別に確認する必要があります。

 

まとめ


GX-ETSへの対応では、制度の対象となるCO2直接排出量をマニュアルに従って算定し、排出目標量及び排出実績量の届出・報告に必要なデータと証憑を整備することが重要です。2026年度は初年度特例により、年度平均排出量の届出と移行計画には登録確認機関による確認は不要ですが、2026年度の排出実績量は後年度の確認・報告対象となります。そのため、2026年度中から登録確認機関との契約、確認日程、責任分担及び証憑管理を準備することが望まれます。
GX-ETSの算定・報告には、組織境界、排出源、活動量、排出係数、計量器、原始証憑から報告値までのトレーサビリティなど、複数の論点があります。SHK制度と共通するデータがある一方、GX-ETS独自の取扱いもあるため、最新の制度マニュアルに基づいて差異を確認し、継続的に管理できる社内体制を構築する必要があります。
インターテック・サーティフィケーション株式会社は、GX-ETSの登録確認機関として、制度に基づく排出目標量及び排出実績量の確認を行います。また、ISO 14064シリーズに基づくGHG排出量の妥当性確認・検証や、東京都・埼玉県の制度に基づく検証にも対応しています。GX-ETSの確認と任意のGHG妥当性確認・検証は目的、基準及び成果物が異なるため、お問い合わせ時に対象制度、確認対象、対象年度及び希望時期をお知らせください。