『ゆらぐ時代と、つなぐ力』(3)
  仕組みを『回す力』- 内部監査とマネジメントレビューがつなぐ実効性

2026/07/10Intertek News(93号)ゆらぐ時代と、つなぐ力

品質・環境・労働安全衛生マネジメントシステム主任審査員/IRCA認定 品質・環境・労働安全衛生マネジメントシステム主任講師   船井 勲 Isao Funai

仕組みは「運用されてこそ機能します」

 前回および前々回では、不確実な時代における企業経営の前提変化を踏まえ、気候変動やヒューマンエラー、AI依存といったリスクへの対応について述べてきました。本稿では、その仕組みが実際に機能しているかを、内部監査およびマネジメントレビューを通じてどのように検証し、変化への対応力を高めるかに焦点を当てます。制度として整備された仕組みも、実運用で機能しなければ有効性は担保されません。検証と継続的改善により実効性を確保することが不可欠です。

内部監査を「評価」から「学習」へ転換する意義

 内部監査は、適合性確認にとどまらず、仕組みが意図どおり機能し、有効性を維持しているかを評価する活動です。非常時対応手順も、現場で理解・訓練され、想定外に対応できてこそ意味があります。特にAI活用や業務の高度化に伴い、形式と実態の乖離が生じやすく、内部監査はその可視化機能を担います。
 有効な内部監査は、不適合の指摘に終始せず、対話を通じて改善の端緒を抽出します。ヒューマンエラーについても、手順、教育、業務負荷など背景要因に踏み込むことで、個別事象を組織課題へと昇華させることが可能となります。監査を「評価」から「組織学習」へ転換することが求められます。

Check・Act が機能不全に陥る要因

 多くの組織で、「Plan・Do は実施されるが、Check・Act が十分に機能していない」状況が見られます。その要因として、監査やレビューが形式的報告にとどまり根本原因分析が不十分であること、改善が日常業務に埋没し優先度が低下することが挙げられます。加えて、改善責任の所在が不明確な点も停滞要因です。

不適合・是正処置を阻む心理的障壁と、その打開の方向性

 Check および Act の中核である不適合や是正処置には心理的障壁が伴います。現場担当者にとって不適合は顛末的事象として認識されやすく、評価や責任追及と結び付けて認識されることで、無意識のうちに報告を控えたり、表面的な対応にとどめたりする傾向が生じがちです。このような状況では、真の原因に踏み込めず、再発防止の機会を失うことになります。
 本来、不適合は組織学習の重要な情報資源です。再発防止には、現場の事実や率直な意見を吸い上げるボトムアップ型の仕組みと、それを許容する風土が不可欠です。問題の共有と改善が適切に評価される環境整備が、Check・Act 機能の前提となります。

マネジメントレビューと経営判断が PDCA を回す

 これらの情報はマネジメントレビューに集約され、経営判断へと接続されます。気候変動リスクへの対応、AI活用の統制、人材育成などは現場情報に基づき判断される必要があります。本プロセスが機能すれば、兆候段階での是正が可能となり、重大リスクの未然防止につながります。
 ISOの本質は、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回し続けることにあります。不確実性の高い時代においては、変化を的確に捉え、柔軟に修正し続ける力こそが、組織の持続可能性を支える基盤となります。